人生相談

実家に行くたび、ラジオから流れてくる
テレフォン人生相談をきいている。
母は聞き流しているが、
私は気になって仕方がないので、
ラジオの前にイスを移動し、
聴き入っている。

いろんな人生がある。

そうかあ、と思う。
母は毎日聞き流しながら、
いろんな人がいる、ということを
思っているのだろう。
なんというか人生相談は
きいている人にも力をくれる、
と気づいた。

相談者は勇気がある。
だって、声は全国に流れてしまう。
それは、知っているひとに、
気づいてほしい、というのも
あるのだろうか。

たしか12月だったと思う。
ある男性が相談していた。
50年前に付き合った彼女のことが
頭から離れないんです、と。
妻も成人した子もいるが、
彼女のことが忘れられない。
どうしたら忘れられるか、
と言った内容。
これに対して回答者はなんと答えるのか?
身を乗り出して(気持ちは)聴く。

「あら、あなたいいじゃないの!
そんな恋はなかなかできないわよ。
だって、思ってるだけなんでしょ?
会ってもないんでしょ?
会いたいわけでもないんでしょ?
どうにかしたいわけじゃないんでしょ?
誰にも迷惑かけてないんでしょ?
(相談者は全てに、はい、と言う)
忘れる必要なんてないわよ。
ずっと彼女のことで心を
くるしくしていたらいいのよ」
と言ったことを
ポンポンポンと伝えていた。
その思い、墓場まで持って行きなさい、
とも言った気がする。
それに実際会いでもしたら、
幻想だったと気づくわよ、ということも。
男性と同年代の回答者の女性が
それはそれは歯切れ良く伝える。

男性は、忘れなくてもいいんですか?
と驚いている。
「だって、あなた忘れたくても
どうせ忘れられないわよ」と回答者。

男性は「ありがとうございます!」と
さわやかに電話を切った。

私は、奥さんかわいそうー、
とちらっと思ったけれど。
でも回答者が言うように、
確かにそれもそうだ、と思った。

みんなみんな
本当のところは分からない。

今朝、夢を見た。

もう何回、彼は登場しているだろう。
中学の時に好きだった男の子が、
忘れた頃に夢に出る。
あの頃のように、
おたがいしゃべるわけでもなく、
ちかい距離にいるのだけど、
クラスメイトでしかない状況。
好きだなあ、とだけ私は思っている。

好きだと伝えられなかったことが、
こうしていまだに夢に出続ける、
ということなのだろうか。
何とも不思議な夢で。
何とも不思議な気持ちになる。

私の初恋はあの子だった。

そんな子がいた、ということは
かけがえのないことで。
あの子が中学にいてくれて、
本当に良かったな、って思う。

人生相談の男性のように、
どうしたいわけでもない。
男性のように四六時中ではないけど、
夢からさめた後だけ、
あの子のことを考える。
どうか元気で、
暮らしていてほしい。

きっとみんな言わないけれど、
心に忘れられないひとがいるのだろう。
それはそれで。
いいもの、なのかもしれないね。