真夜中の読書 『きみの鳥はうたえる』

一昨日、なかなか寝付けなかった。朝4時前に起きてしまうと、ダメな日になるデータが蓄積されている。時計を何度も確認し、4時まで待機と思ったがダメだった。良い日だったというのに、頭がうるさすぎる。1時15分に起きた。こんなときのスマホは良くなくて。時間だけは持って行かれて、残るものがない。それで余計にむなしくなるデータも蓄積されている。だからスマホは絶対に見ないと決め、借りてきた本を読むことにした。

『きみの鳥はうたえる』
佐藤泰志/河出書房新社

小説は時々しか読まなくて、借りてきても全てを読み切ることがなかったりする。
でも3時30分に読み終えていた。

佐藤泰志さんのことを知ったのは、つい最近のこと。この前クジャクを見たから、クジャクについてもっと知りたくて、図書館にそんな本がないかと検索した。そしたら佐藤泰志さんの「孔雀」という短編小説が検索一覧にあった。佐藤泰志さんのプロフィールには「90年、自ら死を選ぶ」と書いてある。それが41歳の時で。私は今41歳で。それもあって読みたい、読まなくてはと思った。いつくか短編小説を読み、この本にたどり着く。そして映画『きみの鳥はうたえる』も昨日見た。

僕と静雄と佐知子、21歳の話。



だから、21歳の時のことを、
ひたすら思い出してしまった。



旅で出会ったひとを、おなじひとを、親友と私は好きになってしまった。「誰のことが気になる?」と親友と布団を並べ、暗闇の中話した時に同じ名前があがった。そうだと思った。でも、私は親友が大好きだったから決めていた。まったく苦ではなかった。親友とそのひとが仲良くなってほしいと思った。

旅の間、親友はそのひとがつけている指輪や時計を、つけたがった(あれは酔ったはずみか?)。そのひとは貸してあげていた。トランプをみんなでやっている時に、親友のその手が見えて私はちょっと泣きそうになった。何度も泣きそうな気持ちになる。だけど、私はそれでも親友が大好きだった。

私はそのひとの友だちと仲良くなりたいと思った。好きではないけど、仲良くなれたら楽しいなと思った。ひねくれている。親友はそのひとに、別の気になるひとについての恋愛相談をしていた。みんな、ひねくれている。

旅から帰っても私たちはみんなで遊んだ。ある時、そのひとと親友と私の三人になった。『あ、私じゃまだな』と思って「帰るね」と伝える。「三人で飲もうよ」って二人は言ってくれているのに、私は笑って帰った。いられないよ。

そうして、親友はそのひとと付き合った。

就職活動中の夏、親友と会って。
「あのね、この前ね」とにやにやしながら言うから、何を私に言いたいかが分かってしまった。とっさに私は聞けないと思って
「ちょっと待ってて、トイレ行ってくるね」
と話をさえぎってしまった。戻ってきたら親友は続きを言わなかった。多分、私の気持ちを分かっていたんだろうね。

あの時も今も、親友のことは大好き。
…なんでなんだろう。
そんなひとがいるんだなあ。



僕と静雄と佐知子。不思議だけど、なにか分かる気がしたのは、こんな思い出があったからだろうか。

僕と静雄が、とてもいいと思う。