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アスリートが価値創出する際に心がけたい3つのポイントと効果的なアプローチ

アスリートが高めるべき3つのVALUEについて言語化を試みてから、まもなく2年半(!)が経過します。

この記事では、競技力を意味するPlayer VALUEが最優先事項であることは大前提として、知名度や発信力、集客力等の市場価値を意味するMarket VALUE、選手の文脈的価値を意味するStory VALUEの3つをコアバリューとして定義しました。

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しかし2年半前の自分はアスリートの価値向上に実際に関わった経験が希薄だった為、アスリートのコアバリュー定義にトライしたは良いものの、具体的にどのようなアプローチが必要とされているのか、つまりHOWの部分が欠けていました。有り難くもアスリートの皆さんと一緒に試行錯誤させてもらった2年半を経て、アスリートと伴走する際に意識しているアプローチをまとめてみました。

今回noteに書いたアスリートのペルソナは、ある程度の市場規模がある競技でトップを目指しているアスリートです。多様化し続けるアスリートの在り方に、唯一無二の正解は無いと思っているので、アプローチのひとつとして誰かの参考になれば嬉しいです。

アスリート周辺領域の盛り上がり

ここ数年、アスリートビジネス・アスリートと起業・アスリートと投資・アスリートのデュアルキャリア・アスリートとSNSといったフレーズがより一層注目を集めるようになり、アスリートの周辺領域に機会を伺うビジネスパーソンの数もグッと増えました。

「アスリートの価値を高めたい!」とこの領域に関わる人材が増えることはとても良いことで、自分自身もその市場形成の一端を担っていきたいと考えていますが、選手のコアバリューは繊細で傷つきやすい側面を持っているため、ビジネスサイドの人間のミスリーディングひとつで上述のPlayer VALUEが毀損し、選手の競技人生に悪影響を与えてしまう可能性も大いにあります。

従って、このnoteは現役アスリートの皆さんをはじめ、特にアスリートと伴走する立場にある方に読んでもらえたら嬉しく思います。

今回、あるセミナーに登壇した際に改めてアスリートの価値向上へのアプローチ方法に向き合う機会があり、意識したいポイントを「PLAYER」「CULTURE」「STORY」の3つと定義しました。

ここからは、3つポイントの意味と心がけたいアプローチについて具体的なHOWを交えながら説明していきたいと思います。

1|PLAYER

ここで表現する「PLAYER」は、アスリートが持つ競技者としての影響力のことです。競技成績や代表歴など、選手が残した結果に応じてアスリートの「PLAYER」の面積は大きくなっていきます。但し、その面積のアップサイドは競技選択の時点である程度決まっている側面もあり、メジャースポーツ世界一の選手とマイナー競技世界一の選手ではその影響力には大きな差分が生まれます。言うまでもなく、自身の価値を高めることを考える際にアスリートが最優先で取り組んでいる部分です。

2|CULTURE

カルチャーの辞書的な意味は「文化・教養」ですが、ここで言うCULTUREはもう少し広義で「ピッチ外における選手の自己表現」は全てこの範囲に含むこととします。自己表現の中身は日々のトレーニングや食事・メンタルなど、競技に関することからピッチ外における趣味や生活、文化や信念、ビジネスや社会活動など多岐に渡ります。

SNSが普及する以前の世界線では、アスリートのプライベートや生活、主義・主張を世の中へ伝える術はマスメディアに取り上げられる以外にありませんでした。最近ではSNSを駆使しながら、オフザピッチの活動や個人の主義主張を発信して認知を広げる選手が増えてきています。

3|STORY

ファンや生活者を惹きつけるアスリートの大きな魅力のひとつにその選手が紡いできたストーリーが挙げられる。試合結果のみならず、良いパフォーマンスを発揮するために積み上げてきた一貫性あるプロセスは人々に感動を与える。その選手のサクセスストーリーや挫折、怪我やスランプからの復活劇、意外なサイドストーリーを知っているファン・サポーターは、他の選手とは一味違う感情でその選手を応援することになります。

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PLAYERとCULTUREの優先順位

言うまでもないことですが、アスリートはPLAYER(=競技者)としてファンおよびステークホルダーから認知されています。したがって競技者としての側面よりもCULTURE側(=付加価値)からのアプローチが優先する形で、そのアスリートが大きな注目を集めたり稼げるようになるケースは決して多くありません。

SNSが広く普及したことでアスリートが主義主張を発信することは至極一般的になりましたが、PLAYERの側面がまだ小さい選手が、CULTURE側からのアプローチでアスリートの価値を高めようとするのは非常に難易度が高いです。

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ハンドボール日本代表キャプテンの土井レミイ杏利選手は競技者としての実力はさることながら、TikTokを起点としてマスメディアに出演するまで一躍有名人になりましたが、他のアスリートにとって再現性があるかと言うと、僕はそうは思いません。

土井選手の情報発信に対する姿勢や創意工夫など参考にできる部分は山程あれど、TikTokスターになった土井選手のアプローチは、まさに土井選手だからできたことだと思います。

また同時に、アスリートのCULTUREは意図的に作り出すものではなく、その選手が辿ってきたプロセスやSTORYの中に既に在るものです。「儲かりそうだから、需要がありそうだから」という理由でアスリートやその周辺にいる人間がCULTUREを新しく見つけ出そう、付与しようとする行為は嘘であり、それが世間に伝わることで選手のブランド全体を毀損することに繋がりかねません。

また「SNSで発信したいけど、競技以外に発信できる内容がない」と選手の皆さんから相談を受けることが多々ありますが、存在しないのではなく自己認識ができていないだけで、実際には競技に取り組む過程やその周辺で様々な「CULTURE」を手にしています。

一方で「海外アスリートに比べて、日本人アスリートにはCULTUREが弱い」と言う指摘もあります。様々なバックグラウンドや貧富の差が在る中でのし上がってきた海外アスリートは競技者としての顔に加え、自らが育った社会の代表としての顔を持ち活動しています。Black Lives MatterやLGBTQ、ラッシュフォードが取り組む子供の貧困問題など。

一方、一定以上恵まれた&均質性の高い環境で育った多くの日本人アスリートが社会性・文化性の強いメッセージを持っていないことはある種当然なのかもしれません。

効率的なアプローチとは

「アスリートは競技者以外の価値を持っている」「アスリートはソーシャルメディアを有効活用することで自身の価値を高めることができる」という自分の主張は相変わらずですが、最近ではやはりアスリートのオンザピッチのPLAYER=競技者としての側面を大きくすることこそが、その選手の価値を最速で・効率的に高めるアプローチであると、改めて感じるようになりました。

またPLAYERの側面が大きくなっていくことで、その選手が持っているCULTURE(=自己表現)の側面に自然と注目が集まるようになります。東京都1位の選手が発信するのと、日本1位の選手が発信するのと、世界1位の選手が発信するのではマスメディアの力も借りて伝わる範囲が全く違ってくるからです。

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焦ってSNSやサイドビジネスで一定以上の売上を作りにいくよりも、競技者として結果を残すことにフォーカスして年俸増や大会賞金、スポンサー契約を勝ち取る方が効率的&効果的ですし、結果的に選手の生涯年俸(LTV)を増やすことにも繋がるでしょう。

このnoteの結論として「PLAYERの側面が肥大〜牽引する形で選手のCULTUREがピックアップされ、その軌跡をSTORYとして紡ぐこと」が理想的なアプローチであると考えています。

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STORYは意識的に紡ぐものではなく軌跡として結果的に紡がれるもの。

紡ぎ方のHowはメディア露出やSNS発信、ビジネスや社会活動など様々ですが、一貫性があるメディア露出やSNS発信、0からビジネスを作ることは相当に手のかかる作業であり、アスリート活動とは全く別のスキルやリソース配分が必要になります。(僕も、佐藤さんの意見に賛成です)

そこで重要になってくるのがマネジメントやエージェントなどビジネスサイドの人間です。選手の価値を守り、高めるためにステークホルダーに対する正しい配慮と相談が重要であり、その上でマーケット視点を持ちながら世の中のニーズとアスリートのキャラクター、CULTUREを正しくマッチングさせていく必要があります。

まとめ

競技に打ち込んでいるアスリートが自らを正しく客観視し、自分の価値を最大化するために今何をすべきなのかを把握〜実行するのはかなり難易度が高いと感じています。だからこそ、その選手を深く理解して導けるコーチが必要になってくるのではないでしょうか。

僕自身がアスリートの価値を正しいアプローチで共創していける人材になれるように、またそのようなビジネスサイドの人間が増えていくきっかけになるように引き続き発信も続けていきたいと思います。


fin.

著書『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』http://urx.red/Fh0w|Revive Inc. PR manager◁電通ライブ◁電通テック◁東京学芸大学蹴球部 学連/全日本大学サッカー選抜主務|スポーツ×キャリアのNPO法人izm 代表理事|日本に40人の苗字、ゴカツデです。


いつも読んでいただきありがとうござます:)