見出し画像

ローランドDGの特許情報をPowerBIで整理してみました

 ローランドDGのMBOとTOBの内容が面白かったので業務内容を知るために、特許情報を簡単に調べてみました。
 私、若い頃は研究開発担当でしたので特許を書いたり、同業他社の特許を調べたりしてました。
 他社特許の調査は「かなり手間がかかって大変」「集中力が居るなー」な作業でした。
 歳を取ると最前線での仕事が無くなって(はい、窓際でした)、久しぶりに特許情報を調べてみましたが、「こんな簡単に入手できるの!?」「タダでこれだけ入手できるんだー」「PowerBI使えば整理も早いなー」と改めて感じましたので、ご紹介しようと思います。


特許情報の入手方法

小規模なら特許庁のデータベースで充分です

 特許の情報はデータベース化されています。網羅的に調査する場合、有料のデータベースを使うのが一般的です。有料のデータベースだとAI機能がついていたり、パテントマップが簡単に作れたりして多機能です。
 ただ、有料のデータベースを個人で使うのはコスト的に難しいです。
 そこで、特許庁のデータベースが役に立ちます。
 j-platpat(特許情報プラットフォーム)と言うサイトにアクセスすると特許情報の検索ができます。

 私の若いころ(20年以上前・・・)の有料データベースより高機能で使いやすいです。
 無料で、家に居ながらこんな情報が入手できるなんて、良い世の中になりました。

特許一覧もcsvでダウンロードできます

 検索だけでなく、検索結果の特許一覧情報をcsvでダウンロードできます。ユーザー登録が必要ですが、無料なので気軽に実施できました。
 この情報とPowerBIを組み合わせると比較的容易に全体像を把握できます。

特許情報の整理が結構手間です

昔は一覧を印刷したりしてました・・・

 特許情報は量が多いので、整理をするのが結構手間です。
 前述のように最近の有料データベースだとAI機能がついていたりして整理するのが簡単になっています。
 しかし、タダで整理しようとすると結構手間をかける必要があります。
 私がやっているころは、特許リストを印刷して一覧にし、目で見て確認していました。PC上で見ることもできるのですが、何故か見落としが多く、結局紙にしていました。どうも人間の認識が紙とPC画面とで違う気がしています。
 そこで、PowerBIの登場です。

CSVファイルになっているとPowerBIが便利です

 エクセルでも整理できますが、整理に熟練が必要です。
 それに比べて、PowerBIだと色々な視点からの情報整理が簡単です。

PowerBIを使った特許情報整理の例

 それでは、PowerBIを使った特許情報の整理の例をご紹介します。
 前述のj-platpatから出願人にローランド ディー.ジー.が含まれる特許を検索して一覧をcsvでダウンロードしました。
 真面目に調査する場合は抜け漏れが無いように出願人以外の情報でも粗検索したり、あいまい検索を使ったり、類似出願人検索したりしますが、ここでは大雑把な情報把握が目的なので出願人だけでcsvリストを作成しました。

ローランドDGの特許リストです

ローランドDGの特許リスト

 PowerBIで整理した、ローランドDGの特許リストです。このダッシュボードだけで以下のことがおおむねわかります。
・全体で1720件の出願があります
・出願人/権利者が複数あるので共同出願がありそうです
・出願数が2015年から急増しています

 では、2015年以降の特許だけ表示してみます。
 右側の中段にある「出願日のスライサー」を2015/01/01~2023/08/31にして期間を限定します。

出願日を2015/01/01~2023/08/31に限定

 これで以下のことがわかります。
・1111件の出願があります
・共同出願がブラザー工業、ノリタケ、岩手大学、弘前大学、浜松医科大学(表示できていませんがスクロールすると出ます)としているようです

 ステージで「審査請求前」「審査中」「特許有効」を選択して、特許が成立もしくは成立の可能性のあるものを限定してみます

さらにステージを限定

 これで587件に限定されました。
・どうもノリタケや弘前大学と共同出願した特許は却下・拒絶されたようです
 このあたりで、発明の名称をスクロールして確認してみると「プリンタ」「インクジェットプリンタ」とかの同一名称が多いことが解ります。
 これ、特許では良くあることで、内容を知るためには明細書を確認する必要があります。ここでは全体像を知るためなのでそのまま続けてみます。
 表を横棒グラフに変更しました。

表を横棒グラフに変更

 インクジェットプリンタが159件と多く、プリンタ、印刷装置と続いていきます。
 変わったところだと「三次元造形装置」「カッティング装置」「人口歯作成装置」あたりが目につきます。
 では、カッティング装置に関係する特許がいつ頃出願されているか見てみます。
 横棒グラフの名称でカッティングが入っている棒をクリックして選択してみました(適当です、本来は同義語等の処理が必要です・・・)。

カッティングに関するものを抜粋(適当です)

 2018年あたりが出願が多く、最近は少ないみたいです。
 なにか、ブームがあったのかもしれません。

 こんな感じで全体像を把握していきます。
 個別の技術に関しては明細書本文を確認する必要がありますので、明細書もダウンロードする必要があります。最近だと明細書を生成AIに放り込んで要約を作らせたりすることが流行っているようです。

PowerBIの情報を利用して、他社との共同出願を確認してみました

 ローランドDGの特許を見ようと思ったのは、ブラザー工業とのTOB、MBO合戦がきっかけでした。
・ローランドDGはどんな技術(特許)を持っているのだろう?
・ブラザー工業は共同開発していたと言っているけど、どうなの?
・他と共同開発している例はあるのかな?
 こんなことが、特許出願情報から分かることがあります。

ブラザー工業との共同出願

 出願人/権利者に「ブラザー工業株式会社」がありましたので、選択してみました。ここでは、新しくダッシュボードを作って特許の「ステージ」「出願番号」「発明の名称」「登録番号」「出願日」のテーブルが見れるようにしています。

ブラザー工業と共同出願した特許

 特願2022-099808、「印刷装置、及び、フラッシング情報取得方法」と言う特許を出願していて、まだ審査請求前のようです。
 特許を共同出願しているので、ブラザー工業と共同開発していたことは事実のようです。

他のプリンタヘッドメーカーとの共同出願は?

 ローランドDGのTOBに対する意見書で、「ブラザー工業にTOBされるとプリンタヘッドのベンダーAからヘッドを供給されなくなるリスクがある」とありました。
 そこで、共同出願しているプリンタヘッドメーカーがあるか探しました。
 インクジェットプリンタで有名なセイコーエプソンがありましたので、選択してみました。

セイコーエプソンとの共同出願

 6件の共同出願がありました。ただし、2002年以前の古い特許で、すべて特許が消滅しています。
 他の共同出願も確認してみましたが、プリンタヘッドメーカーとの共同出願は無いようです。

他の企業や大学との共同出願

 どうも、最近一番深い付き合いをしているプリンタヘッドメーカーはブラザー工業のようです。妙ですよね・・・。
 このあたりについては別記事で書きましたので、この程度にしておきます。

まとめ

 特許庁のデータベースから入手したデータとPowerBIを使って特許情報の整理をしてみました。
 その会社の概要を知るには充分な整理ができたと感じています。
 逆に言うと、一般人でもこの程度の情報が入手できて整理できる時代になっていると言うことだと思います。
 特許庁からは明細書のテキストデータも入手できますので、さらに深い解析も可能です。例えば、ローランドDGが出しているインクジェットプリンタ関係の特許明細からテキストマイニングして共起ネットワーク図を作ったりすれば彼らが持っているインクジェットプリンタ技術の概要が理解できますし、最近流行りの生成AIを使って要約を作ったりすることもできるはずです。
 ちょっと怖い世の中になって来たと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?