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ヴェイパーフライ(厚底シューズ)と股関節周囲の故障について

2019年7月。

陸上長距離界に革命的なシューズが現れた。

「ヴェイパーフライネクスト%」だ。

発売から1年以上経った今でも、その人気は収まることはなく、

2020年3月に発売され、人類初のフルマラソン2時間切りを達成した、

「アルファフライネクスト%」よりかも、圧倒的な人気を得ている。

そんな「ヴェイパーフライネクスト%」通称「ヴェイパー」だが、

発売当初、このシューズを履いた多くのランナーが股関節周りに痛みを訴えていた。

先日、青山学院のキャプテンでありエースでもあった選手が、仙骨の疲労骨折で走れなかったという話を聞いて、

やはり厚底シューズ(ヴェイパーフライ)は股関節周辺に高確率で悪影響を及ぼすのではないか?と感じて興味を持って色々調べたり、自分なりに考えてみました。

今でこそ供給が安定し、2020年の箱根駅伝での記録ラッシュを境に、多くの人にシューズの実力が認められ、

市民ランナーでも練習用とレース用と2足購入する人も多くなり、ヴェイパーに慣れるという言葉はあまり聞かなくなったが、

発売当初は、とにかく慣れが必要だと言われているシューズであった。


ここからは自分なりに考えた話なので、全てが正しいとは思いません。

また、ご意見等あれば是非皆様のご意見もお聞きしたいと思っております。


ヴェイパーフライによる股関節周囲の故障の1番の原因​


ヴェイパーフライはとにかく蹴らなくて進むというシューズです。

後述するアルファフライというシューズよりも蹴らずに脚を前へ置くだけで爆発的なスピードで走ることができます。

しかし、蹴らずに進むためには何かカラクリがあると私はずっと思っていました。

それが今回、ヴェイパーフライを履いて股関節周辺を故障する原因とマッチしたのです。



そのカラクリとは...

「接地の強制」です。

ヴェイパーは転がりで推進力を生むようなしくみになっていると考えています。

ただ真っ直ぐ着地すれば転がるのではなく、

外側から接地→母趾球(親指の付け根の腹の部分)→母趾の先(親指の先)=フォアフット

このような順序で足部の体重移動が行われてシューズが転がります。

マラソン日本記録保持者の大迫傑選手のフォームと、下手な足底の体重移動を表した絵をご参照ください。

足裏で表した図

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実際のヴェイパーフライで表した図

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外側で接地するには、足部の回外という運動が必要です。

足部の回外は、アンダープロネーションとも言われ、ランニング界でよく耳にする、

オーバープロネーション(足部の回内)の逆の動きになります。

続いて足部の回外から始まるヴェイパーフライでの接地が、どのように股関節周囲に影響を及ぼすか解説していこうと思います。

今回は、坐骨神経痛(梨状筋症候群)に沿った例で書いていきたいと思います。

坐骨神経痛(梨状筋症候群)に似たような症例は他にも中殿筋腱炎や大転子滑液包炎や坐骨結節部の疲労骨折等があります。           基本的には坐骨神経痛と同じような原因で発生する場合が多いです。             ただ鑑別(どこを痛めているか判断すること)が難しいので、画像診断等に頼る場合があります。 ご自身で殿部周囲の痛みが出た場合は、これは坐骨神経痛だと決めつけず、まずは医師からの診断を受けて治療を受けたり、自身でケアすることをオススメします。


まずは梨状筋について説明です。

梨状筋は股関節を外旋と言い、爪先が外に開いたり(ガニ股の形)、膝の曲がり角度によっては内旋と言って、膝がX脚の形になるように働きます。通常筋肉は、肘や肩をを曲げて力こぶを作る上腕二頭筋のように、1つの動きしかしません。しかし、梨状筋には「筋の逆転作用」というものがあり、膝の角度によって異なる動きをする筋肉なのです。

梨状筋症候群は、梨状筋の延長によって坐骨神経痛をもたらす場合が多いと言われています。

「梨状筋」の形状を良く頭の中に入れてください。

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この「梨状筋」が、初期の接地の初期段階では、足部が回外(外側接地)となるため、

1つ上の膝関節も外旋(外側に捻れる)して、さらに股関節も外旋(外側に捻れる)します。

となると、梨状筋は収縮(縮む)します。

そこから今度は、体重移動により足部が回内(内側に倒れる)いわゆるオーバープロネーションをします。

足部の回内により、今度は1つ上の膝関節は内旋(内側に捻れる)して、

股関節も内旋(内側に捻れる)します。

この少ない接地時間での外旋(外側に捻れる)と内旋(内側に捻れる)

ストレスとなって、「梨状筋」へダメージを与え続け、

結果的に「坐骨神経痛(梨状筋症候群)」へ発展させてしまうのではないかと思います。

以上のことから、「足部の回外と回内の差」「股関節の外旋と内旋の差」を生んでしまう。

結果的に坐骨神経痛や大転子症候群などに陥ってしまうのではないか?

と私は考えています。


アルファフライも同じ??

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NIKE社にはもう一つアルファフライネクスト%と呼ばれる、厚底スーパーシューズが存在します。

正直アルファフライは自分自身それほど履いていないので、シューズの特徴がイマイチわかっていません。

ただ、股関節へのダメージはヴェイパーフライよりかは軽減されていると感じます。

こちらのアルファフライはそこまで外側での接地は矯正されません。

なぜならアルファフライは、人類史上初めて、フルマラソンで2時間を切ったキプチョゲ選手専用に作られたシューズです。

なのでシューズの形状はキプチョゲ選手のランニングフォームを十分に生かすような設計がされているはずです。

キプチョゲ選手の接地は、フラットに近いです。

アルファフライの1番の武器は、前足部寄りにある2つのエアポッドと呼ばれる、特殊なクッション材のようなものです。

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ここを地面とダイレクトに設置して反発と推進をもらいにいくシューズであるため、

ヴェイパーフライに比べて、真っ直ぐ接地しないといけないと考えます。

よってヴェイパーフライよりかは股関節周囲の故障リスクは低いのかな?とも感じます。

実際周りのランナーでもアルファフライを履いて故障したという方は少ないです。

しかし、このシューズはヴェイパーフライ以上に、安定性に欠けるシューズです。

恩恵をもらうための接地ポイントは黒い部分の前足部のみ、

そして何より分厚いズームXと呼ばれるクッション材がとにかく柔らかいのです。

よって接地の際にかなりぐらつきが起きます。

もしかするとアルファフライは従来のように股関節ではなく、下肢の方に故障リスクを招く可能性のあるシューズかと考えています。


対処法


自分もヴェイパーフライを履いてすぐ、坐骨神経痛に悩まされました。

中殿筋、小殿筋トレーニングや体幹トレーニングなど、さまざま行いましたが、

結論は...

とにかく履いて慣れるしかない!

と思います。

慣れれば、ある程度勝手に身体がどのような使い方をすれば良いのかということが分かってきます。

私もひどい扁平足で、足部は歩行でさえも思い切りオーバープロネーションします。

正直ヴェイパーフライを履くのに1番向いていないアライメントをしていると思います。

それでもハーフマラソンくらいの距離を走っても故障することはなくなりました。

とにかく履いて沢山走って慣れれば良いとは思います。

ただし、完全ヴェイパーフライを履いた時は自分の走り方ではなくなるため、確実に身体には悪影響を及ぼしていると感じます。

今は10km程度までの中距離レースしか走りませんが、

もし自分がフルマラソンを走るのであれば、アルファフライ、もしくは他のシューズを選ぶと思います。


NIKEを筆頭に、これからランニングシューズはどんどん進化していくと考えられます。

もちろんタイムを削るために、高機能のシューズを履くことは大切です。

しかし同時に、新たなシューズに対応する人間の身体はついていくことができないと思います。

選手はもちろん、監督、トレーナーもシューズを理解して練習やトレーニングを計画していかなければならないと感じています。

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