歩み寄り

ふたりの学者

 昔、アフカルの古代都市に二人の学者がいて、憎しみ合い、互いに相手の学識について言い争っていた。一人は神々の存在を否定し、もう一人は肯定していた。
 ある日、二人は町の広場で出逢い、互いの弟子たちに囲まれて議論を始め、神々が存在するか否かを論じあった。長い論争の果て、ふたりは別れた。
 その晩、神々を信じない方の学者は神殿に赴き、祭壇の前にひれ伏し、己の片意地であったことの赦しを神々に乞うた。
 同じ頃、神々を崇めていたもう一方の学者は、その聖なる書物を焼き払っていた。彼は無神論者になっていたから。

(カリール・ジブラーン『狂い者』より)

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