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バルト旅 ―リトアニア②


2月19日

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 ヴィリニュス2日目。今日もたらふく朝ごはんを食べてから街歩きへ。基本的に嫌いな食べ物がないので、興味がないもの以外を順番に皿に盛っていると気付けばほぼ全種類になっている。美味しいものはいくらでも入る胃をしているので、とりすぎて残す心配は皆無。欲張りはやめたいけど、旅先は例外だ。旅先で食べない・買わない・行かない後悔はしたくない。

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 町のあちこちで目にするのが、リトアニアの国旗の三色。黄緑赤という、洗練されていなくてどこか土くさい印象を持つ配色が、伝統を大切にする古風なリトアニアの文化を感じさせる。(後に大学でリトアニア語の授業をとり、リトアニア語がとても古風な言語だと知った。)

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午前中は、ホテルの受付のお兄さんに教えてもらった、観光客向けに市内を一周するバスに乗って、少し遠いところにある教会(中の彫刻が美しいことで有名)と、丘の上にあるゲディミナス塔にケーブルカーで登った。14世紀、リトアニア大公ゲディミナス公の命によって建築が始まったゲディミナス城の木造の要塞は、後に火災に遭ってレンガで再建されるも、19世紀にロシア軍の攻撃を受け大部分が破壊されてしまったそう。現存するのが監視塔として使用されていたゲディミナス塔と城壁の一部で、八角形のゴシック建築が特徴だ。教会にしても塔にしてもびっくりするほど人が少なく、観光地感が薄くて居心地が良かった。

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crustumというカフェで昼食。郷土料理のkibinai(キビナイ)にサンドイッチ、キッシュ、チョコレートケーキ、そしてたっぷりのエスプレッソ。日本では一年に数えるほども喫茶店に行かない分、旅行での外食がさらに新鮮で楽しい。ショーケース内のパンやスイーツを見ているだけでも幸せになる。グラノーラを一口大に固めたごろごろクッキーのようなものをおやつに買って帰る。

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街歩き再開。たまたま通りかかったお店に入ると、なんと楽譜屋さんだった。お店には2人ぐらいのスタッフがいて、お客さんはいない。オーナーらしき大柄なおじいさんが英語ですらすらと案内してくれた。キリル文字で色々書かれたベートーベンのヴァイオリンコンチェルトや、ヴィリニュスの民謡と思われる歌の楽譜などをいくつか買う。東欧の作曲家の楽譜が豊富だった。
楽譜屋さんを後にして、郵便局で自宅に葉書を出す。旅行で必ずやること。帰ってから届いた葉書を読むのが楽しい。

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一旦ホテルに戻って足を休め、今度はKGB博物館へ。「それなりの覚悟をもって訪れるように」とガイドブックにあり、遠慮する母を置いて私一人で行った。博物館の内容よりも緊張したのが、受付で謎のお姉さんに引き留められ、彼女が所属しているらしい団体について真剣な面持ちで説明されたこと。展示を見るにあたってどんな覚悟が必要かを説明しているのかと最初は思ったが、どうやら全く関係が無いようだった。
1階から3階は資料の展示や映像があり、地下には政治犯が収容されていた独房がそのまま残されていた。薄暗く寒々しい空間に加え、周りの人が話す言葉がまったく聞き取れない状況で、血が付いた軍服やボロボロの所持品を見るのは中々恐ろしかったが、訪れて良かった。

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待ちに待った夕食。旧市街の建物の2階にあるアトリエのような雰囲気のレストランで、私たちの他にはお洒落なおじさん2人組とアジア系の女性3人組がいた。料理は感動的なおいしさ。生ハムとチーズを贅沢に使ったシンプルなサラダ、トマトの美味しい酸味にバジルのソースがアクセントのスープ、カリっと香ばしい海老がのったリゾット、ハーブの香りで香ばしくグリルされた鶏肉。オリーブの豊かな香りが全開のフォカッチャとシードルも美味しく、あっという間の時間だった。旅が始まってまだ2日目だけれど、食べるものすべてが大正解で本当に美味しい。美食の街とは聞いていなかった分その驚きと感動が凄まじく、それだけでリトアニアが大好きになった。

ヴィリニュスは今日でおしまい。明日の朝、ラトヴィアの首都リガに向けてバスで出発する。リトアニアを離れる寂しさと、次なる目的地への期待とともに眠りにつく。


2月20日

 ヴィリニュス3日目。最後のホテルの朝食をかみしめる。名残惜しくいつまでもパンを食べ続ける。

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チェックアウトを済ませ、バスに乗ってヴィリニュス中央駅へ。

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共産圏を感じさせるペナペナでおんぼろのこのバスに、遂に乗ることができた。ずっしり重そうなコート(外套という言葉の方がしっくりくる)にマフラーをしっかり巻き、一言も話さず厳しめの表情でバスに揺られる人々を見ながら、改めてリトアニアという全く初めて訪れた国での2日間を振り返る。

すぐ北にある国、ラトヴィアはどんなところだろう。これから高速バスで約4時間の移動だ。

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