改札に魔女

今日も父は車でわたしをむかえにきてくれる。
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福山駅に降りた。改札に3人全員いた。車を駅近くに止めてきたらしい。
最初に父を見つける。一方、父は人をみつけるのが相変わらず苦手。まだ目が合わない、横を向いている。母は妹と何やら話している。
最初に家族を見つけるのは、いつもわたしだ。

改札の向こうに家族を久しぶりに見た。
父は、少しおじいさんになっていた。頭は相変わらず薄い・・・が白髪が増えたし、お腹がスッキリしている。
しかし、母はどうだろうか。変わらない。わたしの記憶では、小学生の頃から姿が変わらないのだ。太った、お父さんが太らせてくる。と常に父に文句を言っているが服の下の様子などパッっと見分からない。たぶん、母は魔女だ。恐ろしい魔女だ。母の呪文は強力だ。

「わたしの言う通りにしないからこうなるのよ。」
今でも、小さいころに言われたその呪文が解けない。

子どもながらにわたしは、自身が器用でもなく、頭もよくないことを理解していた。母ができることがわたしにはできないからだ。
けれどもこれが悔しい。やりたいのにできないからやらせてもらえないのだ。そして無理矢理、意固地になって、母の声に耳を傾けずやると大体失敗する。
「だから言ったのに。わたしの言った通り。」

魔女は未来まで言い当ててしまう。わたしは手も足も出ない。
今考えると子どもだから仕方がないと思うのだけれども、まだまだわたしには見えない世界を母は見えている気がしてならない。

「あ」
妹がわたしに気づいた。

妹とは言っても、同い年だ。顔はぼぼ一緒。2卵生の双子である。
彼女とは、パンデミックが始まって少しだけ一緒に暮らしていた。


つづく

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