片山慎三監督「さがす」

随分前にブログに書いた「岬の兄妹」と同じ、片山慎三監督の「さがす」を観た。

少し前に観たのですが、時間かかっちゃいました。

舞台は大阪の下町。
佐藤二郎演じる、父・原田智は「指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで。」と、娘の楓に話し、翌日に姿を消した。楓は父親の行方を探し、父親が勤める日雇いの現場に辿り着くが、「原田智」と名乗っているのは父親ではなく、指名手配中の連続殺人犯と同じ顔の男。楓と楓の父、連続殺人犯の男、様々な人生が交差した理由が少しずつ分かっていく物語。

原田智役・佐藤次郎、楓役・伊藤蒼、連続殺人犯役・清水尋也。

実際にあった事件をいくつか混ぜたような、暗くて重い映画だった。

ただの事件に巻き込まれるだけじゃなくて、いわゆる、安楽死とか尊厳死などについて考えさせられるシーンもあって、残酷すぎる現実を目の当たりにする。

岬の兄妹を観た時と似たような後味だと感じた。悪い意味じゃない。

岬の兄妹は現代社会の暗部に焦点を当てているというか、「みんなが平等に生きていく」ことの難しさを考えさせられる。

さがすは、家族の強さとか愛(歪んだものも、そうでないものも)とか、「自由に生死の選択をすること」の是非を問うようなテーマ。

「病気で苦しいから死んで楽になりたい人」と「楽にしてやりたいから手をかけてしまう人」。

自殺幇助はれっきとした犯罪だが、当事者でもない第三者がその行為に対して簡単に発言できるようなものではないと思う。

自分だったらどうなるだろうか。
と、考えたら本当に苦しかったです。
医療が発達して平均寿命が延びている現代、こういった話は全くの他人事じゃないような気がして、さらに苦しい。

同じようなことを岬の兄妹の感想文でも書きましたが、「法」では悪だったとしても、誰かにとっては望まれていることだったりすることもある。すべての犯罪の背景が悪というわけではなくて、ある種の愛とか絆だったりすることもあるようで。
人間と人間は単純な感情を持ち合わせながら複雑に絡み合っているのかもな~と思ったりしました。

こういうテーマに嫌悪感を抱く人以外は、じっくり鑑賞できるんではないでしょうか。
(ところどころ痛いし、微グロ、アダルトビデオマニアの謎爺さんが出てきたりはします。)

作中、時系列が行ったり来たりするんですが、特に違和感なくみることができる。現在と過去を行ったり来たりする作品って、スムーズで分かりやすくないと何気にストレスになるので頭弱くてもわかる演出で安心です。

全体的にずっしり重め、でも所々シュールというか、すこしクスッとしてしまうシーンがちりばめられている。片山監督の演出と、関西弁というのが相まってなんだろうか。
ちょっと拍子抜けするようなセリフとか表情が観られるのがユーモアあふれてて、「ああ、おじさんってこういうこと言う言う」って思えて自然なリアル感があってよかった。

コミカルでない佐藤次郎、たくましい伊藤蒼、サイコ感あふれる清水尋也。
役者さんもみんな超絶演技派ぞろい、話の展開も面白い、考えさせられるテーマということで、終始とても引き込まれました。

あと、THE下町、って感じの西成の街並みもよかった。西成で暮らしたことないのに、なんか懐かしく感じるのが不思議。
下町、と呼ばれる地域で暮らしたことがないので、しれっと憧れがあったりする。暮らしの香りが充満してても、狭くても、良い。
来世か、そのまた来世くらいで、下町生まれの少年になってみたいな。(その頃には「下町」という概念がないくらいかもしれないが)

さがす、はネットフリックスでもアマプラでも観ることができるので気になる方は是非。

他の方も書かれてると思いますが、ラストシーンがかなりグッときました。
どこまでも、果てしなく、家族の愛。

個人的に好きなシーンというか印象に残っているシーンは、果林島でのシーンで、死体が入っていると思われていたクーラーボックスから大量のビールが出てきたところです。
観た人にしか伝わらないと思いますが、無性に胸が痛かったです。


少し前に友人と「言の葉の庭」を観ました。
昨日の夜は「閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー」という映画を観ました。
閉鎖病棟は、重かったですね。面白かったです。少々胸クソ展開はありますが、人の優しさに触れられました。

昨日から「怪物」と「渇水」が公開されましたね。
どちらも興味津々、仕事が落ち着いたら観に行こう。
東リべ限界オタクなので、そちらもしぶとく観に行く。

少し前にブログ書いた「死刑にいたる病」も、来週からネットフリックスで配信開始ですよ。面白いので是非。

皆さんの住んでる地域は台風大丈夫ですか?
自然はナメたらあかんですよ。

それでは皆様、ゆっくりおねむりくださいませ。

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