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【短歌連作】 離宮


離宮

ひらかれて光を受けるみづありて身体はかすか動きを止める

離宮より海を眺めて意識とは遠くの場所を目指しゆくもの

山ゆりの真白は伯母が好きだつた花のひとつと思ひ出しをり

傷痕のやうにも咲いて山ゆりは美しかりき暑さのなかに

白衣着るひとのやうにも山ゆりは佇みてゐてpiece of small voices

希死念慮さういふものでもないけれどわたしのなかの森のさざめき

安寿と厨子王めでたしと終はらず山ゆり咲いて、離宮に咲いて

守らねばならずの安寿 足枷は家でせうか社会でせうか

ふたたびはあらはれずとも斑紋の影うつくしくページに揺れる

胸元に汗浮かびつつ凝視する あの花はまだ息をしてゐて



未來2023.12号より。今号、欄頭だったので嬉しかった。この連作はしっかり詠めた。

安寿と厨子王の話は知っていますか?

子どもの頃、絵本で読んで、悲しくて。
安寿のことを、考えました。

sisterhood

歌は、歌としてあるのだけど、詠んでのち、絵本のなかの安寿をずっと気にかけていたのかもしれない、と
思いました。

誰もが生きやすいこと。
どの国の子どもたちも健やかな生活を。

遠く近く、私たち。