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音楽は魔法

大学でバンドやって、仲間の下宿に溜まって、毎日麻雀しながら呑んだくれるという、非常に身につまされるモラトリウム人間たちが、それでもそれぞれ自分を見つけていくという、ある意味よくあるストーリーなのだが。
意外とぐっとくるお話です。

最後のほうで卒業間際の追い出しライブのシーンがあるのだけれど、これがとくにすばらしい。ロック文学としてもなかなかです。大槻ケンヂの「ロッキン・ホース・バレリーナ」を彷彿とさせるような。

音楽は魔法です。ステージにはマジックがあります。ダメダメの人たちも、ほんの一瞬だけ、光り輝くときがあります。モラトリウムの中にも、それぞれいろんなことがあった。やり残したことはいっぱいあるけれど、それどころか何もやれていないかも、まだ何者にもなれていないかもしれないけれど、今はこれでいい。ここからまたはじめるんだ。このポジティブさ、やさしさは、やはり同じように20代を大変に過ごしたらしい作者の、登場人物たちへの愛情なのでしょう。

「一瞬一瞬、選びとってきたものの積み重ねの上にある今。それが自分だ」というくだりがあるのだけれど、これはいい言葉だなあ。

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