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デンマーク滞在記④ 特別学校(特別支援学校)「Team V」

こたえのない学校FOX project主催「2023年 夏のデンマークの旅 インクルーシブ教育を探究する エグモント・ホイスコーレン武者修行」に参加し、見たもの聞いたこと感じたことを書いていく滞在記。ピーターセン海老原さやかさんにお話ししてもらいながら特別学校(特別支援学校ではなく特別学校とさやかさんは訳される)を見学しました。FOX projectのピーターセン海老原さやかさんのインタビューはこちらhttps://www.foxpj.org/interview/3350/


さやかさんからのデンマークの教育基本法の話。印象的だったこと。

・“保護者との協力のもと”が先頭にきている。
子どもの一大プロジェクトに関わる一人としてそれぞれが協力しようとしている関係性を表している。
・“人として全面的な発達を”。
知識技能だけではない。授業は手段であり目的ではない。
一人ひとりにあった学習を、そのための教材を。
・“democracy”
Democracyは学ぶものではなく、生活の中に根付いているものであり、経験を通して肌に身に着けていくもの。社会に参加できる人であること、自分の考えがある人であること、政治に関心がある人であること。Democracyを経験する機会をつくる、というよりも、democracyが生活の中にあるというイメージ。自分の考えがある、その上で対話ができる。何を食べたいか、どのくらい食べたいかも自分で選ぶ。

特別支援学校(Team V)について

普通学校が同じ敷地内にある。その中の特別支援学校。

校舎内の風景

どのような子が在籍しているのか

全員知的に障がいがあり、通常のクラスで週9時間以上の支援が必要な児童生徒。デンマークの学校教育法で、通常のクラスで週9時間以上の支援が必要なら特別支援教育の対象と決められている。
身体的な障がいだけならヘルパーをつけて普通学校で学んでいる。重度重複障害・心身障害児クラス、自閉症スペクトラムクラス、知的発達障害クラスに分かれている。

2013年「インクルージョン16」という3年計画が出された。「特別なニーズのある子どもたちが、分離教育ではなく必要な支援や補助器具を使い普通クラスで学ぶ」というもので、特別支援クラスがなくなった。すると学級でうまくいかず不登校になったり精神的な安全性が確保できない状況がうまれ、特別クラスを再開したのだそう。

TeamVの役割

生徒の発達・学びと心理的安全性を確保しつつ、人生に価値があると感じられるようにする。
将来を見据える+今の2つの視点を見て生徒と関わる。

子どもの学校での学びを支えるチーム体制

授業にはteacherとペタゴー(さやかさんは社会生活指導員と訳す)がいる。
”network meeting”という会議:常勤の作業療法士、心理士、理学療法士が常駐している。週1回子どもを立体的に見ることができるように話し合える時間をつくっている。それぞれその領域の専門家として専門用語・専門知識をもとに子どものことを見たてていく。
保護者との関係性については、デンマークの教育基本法の中に “保護者との協力のもと”が先頭にきている文がある。保護者は子どもの成長発達という一大プロジェクトに関わる協働パートナーの一員として捉え協働している。
保護者とのミーティングは年2回。春は主に先生側が1年間通してどんな時間にしたいかを話し、秋には保護者から最近の子どもの様子を聞く時間になることが多い。

Teacherとペタゴーの役割分担

授業・学級には教員と同じ数のペタゴーとよばれる専門職のスタッフが配置されている。ペタゴーについて「ユースワークとしての若者支援ー場をつくる・場を描く」という本の「ソーシャルペタゴジーーユースワークの概念的実践的基盤」に書かれていたので引用する。

デンマークにはペタゴーグ(pedagogue)やソーシャルペタゴーグ(socialpedagogue)という職種があり、それらが幼児から高齢者まで幅広い年齢の人々を対象都市、また保育から若者支援、児童養護、高齢者生活支援、障がい者支援など、多岐にわたる領域で活動している。

一般にペタゴジー(petagogy)という言葉は教育学や教育そのものを指したり、あた、教授学、教授法といった意味で使われることが多い。
教育(education)が学校で知識を教え能力を引き出すことを意味するのに対して、「人との関わり方、共にいるあり方」がペタゴジーである。それは単に知識を教えること、物事を知ることではなく、共にいて関係をつくり、日常の中のさまざまな機会を通じて、その人のニーズや幸福(wellbeing)に関心を持つことであり、そうした関係性を通じてその人が事故を振り返り変化するよう促したり、ニーズや幸福がかなえられるよう環境や条件を共につくっていくことがペタゴジーの意味である。

横井敏郎(2023).ソーシャルペタゴジーーユースワークの概念的実践的基盤 平塚眞樹(編) ユースワークとしての若者支援ー場をつくる・場を描く 大槻書店 pp.91-92.

Team Vでのペタゴーと教師の役割分担は、生徒の支援計画を例にすると、生徒の学習面においてはteacherが、ADLやsocialの部分はペタゴーが担当する、ようなものなのだそう。学童にもペタゴーはいるので、学校ではこれを目標にしてこんな時間を過ごしているから学童ではこんな時間を過ごしてほしい、といった役割分担がペタゴーがいるからこそできるのだそう。

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