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デンマーク滞在記② エグモントホイスコーレン2/2 ~授業風景やエグモントを語る人の言葉~

こたえのない学校FOX project主催「2023年 夏のデンマークの旅 インクルーシブ教育を探究する エグモント・ホイスコーレン武者修行」に参加し、見たもの聞いたこと感じたことを書いていく滞在記。まずはエグモント・ホイスコーレンのこと。
今回沢山の授業に参加・見学させてもらいました。そんな授業のことや印象的だったインタラクションの内容を。

授業風景

気候変動についての授業

スパイラルガーデン。沢山のハーブや果実が。もぐもぐもぐ。
スパイラルガーデンの近くにあたりを見渡せるベンチがあった。

屋根の下には机と椅子、キッチンがあり、学習もできるし調理もできる。
4年かけて学生とつくったedible garden。1年草しか植えないので、毎年毎年学生とガーデンをつくる。
気候変動の話はシリアスになってしまうから、パーマカルチャーやガーデンづくりを通して気候変動について深めていく。
ここは学生だけでなく、市民との交流ができるスペースにしたいとのこと。綺麗な空を眺めることができるベンチ。「ここにただ居ることがここの学生は大好き。居ること、においや味を楽しむことをここでは大事にしているの。」

paddle / カヤック

ちょうど海に出る途中だった。みんながカヤックに乗り海に出ていく様子を見ていると、日本人の留学生が私に話してくれた。
「彼は私を日本に連れてってくれたんです。自分で航空券をとって、自分でヘルパーのシフトをつくってたんです。」「ああ、今から海に出るのか、みんな必死に落ちないようにするんですけど、彼は落ちるの好きなんですよね(笑)」

水泳

みんなでウォータースライダーを滑ったり、チーム対抗のゲームをした。普段の授業ではできるだけスポンジのような補助具は使わないようにするのだそう。
車いすを使う学生と教員アシスタントをする学生が話してくれた。「普段の授業ではめちゃめちゃ泳いでる。最近は背泳ぎ。」「みんなガチで泳いでぜーぜー言ってるよね。」

体育のような授業

リズムに合わせて先生の真似をして身体を動かす。それぞれおもりを持ってペアでリレー。走るペースや走りながらのポーズは前の人をマネする。サイコロを使ったチーム対抗のゲーム。出たサイコロの目を足し、足した数字が書いたコーンを探していくゲーム。

それ以外に木工の授業や音楽の授業、演劇の授業や編み物、洋裁の授業や教室を見学した。

木工の部屋
陶芸の部屋
洋裁の部屋

参加したどの授業も、グループ/ペアワークが多く取り入れられていた。障がいがある人も同じ活動をしていたし、それができるように教員アシスタントが補助に入ったり、できる器具を活用していた。また、活動内容は介助は必要ではない生徒にとって楽なアクティビティでもない、彼らが息を切らしていたり集中して取り組む様子があった。

授業内・生活内でのケア体制

ケア体制について先生に聞いてみた。
学校内にはドクター・ナースはいない。寮の部屋には緊急ボタンがある。入学時にどんなケアが必要か等情報をもらい、何かあったら町のドクター(車で10分先のところにいる)に来てもらう。
コンタクトティーチャー(担任)がいて、その人が学生の状況・様子を知っているので、授業をする先生は授業の履修登録を見て、どんな学生か、どんなヘルプが必要かをコンタクトティーチャーに聞く。それを教員アシスタントにクラスが始まる前に共有しておくのだそう。
「どんなヘルプが必要?と授業が始まる前に聞いても『やったことないから分かんない』と言われることも沢山あるので、やりながらヘルプの方法を知っていくときももちろんあるよ」
全部ひとりでは見れない、だからこそ教員アシスタントと沢山話すんだ。

学校生活を送る中で亡くなる学生もいるそう。ある一人は、「青春したいんだ!」とエグモントに来て、授業も沢山受けて、恋もして、友達とカフェに行って、青春を謳歌していたそうだ。

授業外の学生の様子

大きな広場のような場所にはハンモックや大きなベンチ。浜辺にはビーチボールができるようなコート。森の中にはブランコ。フリースペースにはソファーとビリヤードとボードゲーム。食堂にはピアノと常時コーヒー・紅茶・お水が飲める状態にしてある。

一日の授業が終わる時間になると、大きな広場のような場所では誰かしらがスポーツをしている。浜辺ではビーチボール、地域の人も学生も海でぽいっと泳いだりしている。授業で習ったのだろうか、自分用のニット帽を編んでたりする学生、フリースペースのような場所ではソファーで寝っ転がってたりボードゲームをしていたりする。皆リラックスしながら、誰かと一緒に何かをしながら、余暇の時間を楽しんでいる。

エグモントにいる様々な人とのインタラクションにて

先生・日本人留学生の話から

「(卒業して雇用する・されるの関係じゃなくなっても友達として関係性が続いていく。それってなんで?という質問に対して)若い子たちが親から離れて寮生活したり、授業でいろんな経験をしたりするとか、そういうそれぞれにとって同じぐらいの、初めてのチャレンジを一緒にするからかな。」
「こっちに来て言語が分からないという障がいを持った。でも言葉は通じなくても授業が救ってくれる時が沢山ある。水泳の授業で水がめちゃくちゃ冷たかったりとか。一緒にその場を楽しむから会話の材料になるときがある。」
意思表示ができるように、まずは練習する。ご飯も何が食べたいか選べない子が沢山いる。その時ヘルパーはひたすらずーーーっと待つこともある。練習しだすと習得は早いのよ。」

校長先生の話で印象的だったこと

Democracyの中で生活をする
デンマークの高校はteachingを重視しているが、ホイスコーレの特徴として、teachingとlivingを同じぐらい大事にしている。ここでも勿論そう。それぞれ人によって違う生活スタイルや環境、優先順位をお互いが大事にしていく。democracyを、紙に書かれたものを学ぶのではなく、実際に体験していく。能力の差、社会的な地位の差があろうと、みな人間。皆中立でありお互いをrecognizeしrespectする。Democracyを学ぶのではなく、democracyの中で生活をする。

他者との関係性や他者との経験を基に、自分が何ができてどうしたいのか、どう生きていきたいのかという問いに光を当てること
すべての学生はすべての授業を受けることができる。
どんな障がいがあろうと全員で修学旅行にも行く。行くのはほんとに大変。一つ一つ調べないといけないことが沢山ある。でも私たちのマインドセットは“やってみたい→どのようにしたらできるか”
よく障がいを持つ学生にとっての活動の重要性を考える学生がいる。でも自分にとっての重要性を見るように私は生徒に言う。
自分のことを知ろうと、人生の意味を考えようと思って自分の内を見る人がいるけど、内ばかり見ても自分は見つからないと思う。他者との関係性や他者と一緒に生活する経験の中でそれは育っていくんじゃないか。人は人と育っていくんじゃないか。Solidarity(≒社会連帯)は自分の可能性を他者に分け、その人から何かを受け取り、循環させていくこと。


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