本の散歩 42/69@横浜 元石川

画像1 『陰翳礼讃』谷崎潤一郎。 絢爛な小説が陽ならば、滋味深い随筆は陰となってコントラストを生む。本書は洋の東西の建築における陰影から、羊羹一つに宿る日本の伝統美まで日常の隅を見つめる文豪の視点が面白い。小説とは一転、けれん味のない文章に大谷崎を近く感じる。ただ、率直過ぎる女性の評は現在であれば炎上もの。読んでて焦る。写真家・林忠彦の一枚にいつものへの字口ではなく邪気なく笑ってるものがある。見れば見るほど愛くるしい目。まったく人たらしだ。わたしはかつて谷崎に憧れていた。いよいよシルエットだけが似てきた。

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