続・本の散歩 27/69@静岡市 清水

画像1 『私戦』本田靖春。昭和43年、清水のクラブで暴力団を射殺した金嬉老は寸又峡温泉で13人を人質に立て篭る。メディアはセンセーショナルに事件を報じたが、当時新聞記者であった本田は警察と一体化したような報道に異を立てる。後にフリーとなった本田はジャーナリストの使命は権力に対置させることにあると、ひたすらな取材を基に本書を著し、事件に底流する民族問題を露わにする。硬質なヒューマニズムが貫くノンフィクション。皆等しくあれ。事件の場所はかつて父が勤めた会社と程近かった。役所と通り一つ隔てて漂う濃密な時代の空気に眩く。

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