本の散歩 21/69@中央区 銀座

画像1 『TUGUMI』吉本ばなな。 吉本ばななの中から一冊を選ぶのは至難だが、印象深い一節を選ぶなら本書をあげる。銀座に吹いてくる風に潮の匂いを感じ、叫びたくなるほど切なくなる…というくだりだ。なぜなら、かつてわたしもまったく似た体験をしたから。海の近くで育ったゆえ、潮の匂いに敏感なのだ。ほっとくと直ぐに忘れてしまいそうな微細な感覚を、吉本は決して忘れまいと文章にする。死と隣り合わせに生きる捻くれ者のつぐみが堪らなく愛おしい。市川準監督の映画では牧瀬里穂がハマってた。ちなみに、真夏日に潮の匂いはしなかった。

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