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着物も進化しているんですよ

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本日のお題:着物も進化しているんですよ
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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いやー、暑い。めちゃくちゃ暑い。私は夏の暑さはとても苦手でして、エアコン大好き、アイスキャンデー大好きでして、お茶やビールも飲みまくってお腹を壊すというのが毎年の恒例なんですがこの暑さではやめられないんですよね。昔はここまで暑くなかったような気がするんですけれどどうでしょうか。きっと太陽が少しずつ近づいてきているんだと思います。たぶん。知らんけど。

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■着物も進化しているんですよ

今週のお題は「着物も進化しているんですよ」です。私は商店街の役員をやっておりまして月1回会合があります。といっても平和な商店街なので別に大した議題もなく、会計担当の私は会計報告はしますがそのあとはうだうだ話している程度で全く報酬も出ないタダ働きなんですが、着物業界とは違うまた別の業種の方とお話しするのは刺激になり、ヒントを得ることも多いです。

その時に婦人服店の方から「着物は流行がなくていいなぁ」なんて言われたので本日は着物の流行についてお話しさせていただきます。

婦人服店の方がおっしゃっるように一般的には着物は流行がないなんて思われることも多いのですが、このメルマガを読んでいる皆さんから見ていかがでしょうか。「えー、そんなことないよ!」なんてツッコミが聞こえてくるようですね笑。はい、着物も当然流行があります。もちろんその変化はとても緩やかで婦人服のように毎年のように流行の波が来たり、5年前に購入した服が時代遅れに見えたりということはありません。着物は仕立ての形は完全に決まっていて変化をつけられるところが少ないため、洋服勢からすると進化が止まっているように見えるかもしれませんが、色柄や生地はゆっくりながらも確実に流行があり、もちろん進化もしています。

現在、着物のルールとして浸透しているもののほとんどはこの数十年程度で確立されたもので、それ以前からも少しずつ緩やかに変化しております。新しいアイテムが出てきては消えながらも、その中で現代に生き残っているものも多く、先日もX(旧ツイッター)でも書きましたが紬の訪問着が登場したのなんでこの30年ぐらいの間でようやく最近市民権を得てきたように思います。

ちょっと考えてみてください。例えばあなたが着物の作家さんだったとしたら、今までの着物の概念を変えるような新しいものを提案したいという欲求は必ず出てくると思うんですよね。今までなかった柄付や着方など「へー!これは新しい」なんて言われてみたい、なんて思うのは作り手の願望としては当たり前ですし、着る側(ユーザー)の方も他の人とはちょっと違う自分だけのコーディネートや着方を探求したいという欲求はあるでしょう。古今東西を問わず服飾文化はそうやって進化してきました。極端な言い方ですが作家さんなどはそういうものを探求するのが存在意義であり、ユーザーも作家さんには「他にはない新しいもの」を求めているのではないでしょうか。

30年もこの業界におりますといろんな「新しい着物」が生み出されるのをみてきました。簡単に着付ができる、誰でも簡単に着られる着物は毎年のように提案され、そして消えて行きました笑。また、このメルマガに書いたこともありますが「付上(つけあげ)」なんて着物が提案されたこともありました。この着物は、最近は結婚披露宴はテーブル席が多く、裾に柄があってもほぼ見えないので上半身の方に柄を多く入れようというものでしたが見事にコケてあっという間になくなりました。

「テーブル席が多くなっているので上半身に柄を入れたい」というのは誰しも考えることで、某有名作家さんは上半身に柄の入っている黒留袖を提案しておられました。このメルマガを読んでいるような着物のことをある程度わかっておられる方は「上半身に柄の入っている黒留袖って五つ紋付比翼仕立の訪問着とどう違うの?」という疑問をお持ちだと思いますが、当然私もそう思いましたので作家さんに直接聞いてみましたところ「テーブル席なので黒留袖の上半身に柄を入れたものであくまでも黒留袖から派生したものとして考えてほしい」ということで根本的な違いはよくわかりませんでした笑。でも家紋を入れる石持(注)は5つあったのでやはり新しいコンセプトの黒留袖なんでしょう。

注:石持(こくもち)とは家紋を入れる場所に空いている、染まっていない白い丸。黒留袖や黒紋付は必ず家紋を入れますが、家紋を入れる場所まで黒く染めてしまうと地色が邪魔になって家紋が綺麗に入らないのでその部分は染められずに白くなっています。

上記は残念ながら定着していないを挙げましたが、着物の進化で一番顕著だと思うのは振袖です。黒留袖や訪問着はフォーマルな場で着用するものですのである程度その場の雰囲気を壊さない、ドレスコードを守った装いが求められますが、振袖は「可愛い」が正義であり可愛けりゃなんでも有り、ですので各メーカーいろんな提案がしやすいですし、若いお嬢さんもちょっとでも可愛くありたい、横に座ってる子よりも目立ちたいとどんどん冒険します。

先ほどの作家さんの黒留袖の話に戻りますが、新しい提案としては面白いのですが結婚式に着ていった時に上半身に柄のある黒留袖を着たらその場に出席した方のほとんどは「訪問着着てるやん」と思うことでしょう。他に発言力の強い方がその場にいると「なぜ訪問着を着ているのか」とツッコミを入れられることも有り得るかもしれません。

でも振袖は自由です。もちろん成人式の式典なのである程度の節度のある服装は必要ですが、結婚式のようにドレスコードを厳密に守ることを要求されるような場では有りません。なので特に最近の振袖の雑誌やパンフレットを見るとかなり自由なコーディネートが提案されています。帯締め帯揚げはどんどん豪華になり、重衿もスパンコールやクリスタルのついたキラキラしたもの。以前に来店されたお客様はゴスロリ調でコーディネートして楽しんでおられました。

この30年ほどの振袖の進化は著しく、歩みを止めることなく、若いお嬢様の「もっと可愛く有りたい、そこに集まる子の中で少し目立つ存在で有りたい」という願望がそのまま形になってどんどん進化しているように思います。

実は当店はリサイクル店になる前はかなり新品振袖の販売に力を入れておりまして、振袖販売の組合に入ってメーカーさんに直接振袖の別染めを依頼して常時200枚以上の振袖を在庫に持っておりました。しかしながら振袖の進化は早すぎるんですよね…。もう今年55歳になるおっちゃんには若いお嬢さんに納得してもらえるコーディネートができないと思ってリサイクル品にシフトして行きました。

若いお嬢さんが雑誌の振袖特集のちょっと変わったコーディネートの写真を持ってきて「こんな感じの帯締め、帯揚げはないですか?」と問い合わせてくださるんですけど、なかなかそこまでの多くのアイテムの品揃えはできず、中途半端に在庫に置いておくよりもネット通販でさがして「ここに売ってるからこれ使ったらどうですか?」という方がずっと話は早いしお客様にも満足してもらえます。

まあ簡単にいえば当店は振袖販売に関しては負け組といってもいいと思うんですが笑、自分の器を見極めて無理せずにいた方がお客様にも納得していただけるので、今でも振袖販売をほぼ辞めたことは正解だと思っています(在庫処分でサイトにもめちゃくちゃ安く出しているのでよかったらごらんください)。振袖は呉服屋にとってかなり戦略的な商品ですので同業者からは「振袖の販売やった方がいいんちゃうん」なんて言われるんですけど、自分がついていけてない、お客様が本当に望んでおられるコーディネートの提案ができない商品を取り扱うのはどうしても抵抗があるんですよね…。

まあそんな感じで着物もどんどん進化しております。着物はルールが面倒臭いなんて言われますけれど、今まことしやかに言われているルールなんてたかだか50-100年程度のものではないでしょうか。もちろんこれからだってどんどん進化して行きますのでルールなんてせいぜいその程度のものだと考えて気軽に着物に親しんでいただければ、と思います。


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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
https://www.kikuya.shop/

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