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祇園祭の時期は問屋街はお休みになります

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本日のお題:祇園祭の時期は問屋街はお休みになります
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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■祇園祭の時期は問屋街はお休みになります

今週のお題は「祇園祭の時期は問屋街はお休みになります」です。祇園祭というと日本三大祭の筆頭に挙げられる、おそらく日本で一番歴史のあるお祭りです。Wikiによると、疫病の流行により869年より毎年行われ、実に1150年以上の歴史を持つ、それはそれは由緒正しいお祭りなのです。

祇園祭というと7月17日の山鉾巡行だけだと思っておられる方が多いと思いますが、実は山鉾巡行は祇園祭のほんの一部。実際は7月1日の吉符入りから31日の疫神社夏越祭まで数多くの行事が行われ、それらすべてを称して「祇園祭」と呼ぶのです。1ヶ月間もずっとお祭りをやっているとはなかなかの長丁場ではありますが、当店の取引先の鉾の保存会の方は「祇園祭が近づくとワクワクして仕事が手につかない」というくらい京都人の楽しみの一つのようです。

2020年、2021年には新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点からかなり縮小されたものの、もともと疫病退散のお祭りなので祇園祭の行事を全て無くすということはせず、山鉾巡行などの観光客が集まるイベント(…じゃなくて神事というべきですかね)は中止されたもののその他の行事は継続しておこなわれました。

ちなみに呉服問屋の中でもかなり長い歴史を誇る某問屋Tは長刀鉾のある町内会に位置しており、おそらく長刀鉾を保存するのにかなりの費用も出していることでしょう。ちなみにその会社のマークはそのまんま長刀鉾になっています。

さて、そんな祇園祭ですが7月11日から山や鉾が組み立てられます。京都の中心部のあちこちに建てられるので問屋街の中でも一番中心の室町通にも大きな鉾がどどーんと建つのは壮観です。重要文化財クラスの緞帳などで飾り付けされた見事な鉾や山がそびえ立ち、動く美術館などと言われます。ちなみにこの緞帳などの飾り付けは各鉾や山はいくつかの種類を所有しておられまして、晴れの日には重要文化財クラスの一軍の飾り付けをいたしますが、雨が降りそうな時には二軍、三軍の飾り付けに変えるそうです。重要なものなので雨ざらしにはできないですよね笑。

そしてこの時期、多くの呉服問屋は祇園祭による休業となります。私がこの業界に入った頃、7月初め頃に「7月11日から17日まで祇園祭休業とさせていただきます」とあちこちの問屋からハガキが送られてくるのをみて「祇園祭で休業とはなんとおっぺけぺーな業界やねん」と思いましたが、元々は町内会のお祭りであり、町内一丸となって盛り上げるべきお祭りという考えがそのまま残っているらしいので仕方のないことでしょうね。当店の取引している卸問屋さんも毎日厄除けちまき(注)を作ったりなどで忙しそうで「仕事なんてやってられるか!」というような勢いのようです。

注:友人にこのことを言うと「美味しいの?」とか言われましたけれど、食べるちまきじゃなくて厄よけのちまきですので食べられません笑。

ご存知のように、京都の街は碁盤の目と呼ばれるように細い道が碁盤の目のように縦横に広がっております。いくつかの大通りを除きその多くの道は決して広いものではなく基本的に牛車がのんびり通る道と考えた方がいいぐらいの道幅しかなく、車が二台すれ違えることは稀ですのでほとんどの道路が一方通行になっております。つまり道の真ん中に山や鉾がどどーんと鎮座してしまうともうその道は通れなくなってしまうので呉服問屋から商品が出荷できない=問屋としての業務ができない、というのもあると思います。

東西は烏丸通から油小路通あたりまで、南北は高辻通から三条通あたりまで山や鉾が立ち並びますが、このあたりはそのまんま呉服問屋が立ち並ぶ地域なんです。そしてこのお祭りは町内会のお祭りで、その町内の有力者がお金を出して自分たちの鉾や山を飾り付けて守ってきたという歴史があります。今でこそ生活様式の変化により着物需要は落ち込み呉服問屋は弱体化してしまいましたが、その昔のよく儲かった時代は他の町内の鉾には負けまいと呉服問屋が先を争うようにお金を出して山や鉾を飾り付けたのではないか、と想像してしまいます。

祇園祭は日本にとって大きなイベントであることは疑いの余地はないのですが、呉服業界にとっても実は大きなイベントなんです。

今、オーバーツーリズムが問題になっておりますが、京都は世界でも有数の観光地ですよね。私は大阪に住んでおり、また仕事柄京都には頻繁に行きますし、大学も京都だったのでもうお腹いっぱい(というほどあちこち見てはいませんが)でそこまで特別視はしていないのですが(なんなら沖縄でパイナップルかじってる方が楽しい笑)、日本人にとって京都はちょっと格上の観光地。そして日本三大祭りの祇園祭の真っ只中というと魅力に感じる方は非常に多いのです。

実はこの祇園祭の真っ只中で「うちの会社は荷物出されしまへん」なんてゆっくり休んでいる会社もある一方で、各問屋で展示会も多く開かれています。その多くは問屋の建物内で開催されますが、別の場所を借りたりする場合もあります。「え?そんなのやってるなら見に行きたい」と思ったアナタ、残念ながらそこには入れません。

え?問屋だったら安く買えるんじゃないの?いいな、なんて思ったそこのアナタ、それは甘いです。

先日の日曜日に京都に行く用事があったので、せっかくだからと思って祇園祭にも立ち寄ってきたのですが、何軒かの問屋が入り口に「○○展」と展示会の立て看板が掲示されており「一般のお客様は入場できません」と書かれておりました。

そういった問屋の展示会は、その問屋が取引している小売店がお客様を連れてくる企画で、遠方の方ですと1泊2日で祇園祭を見に行くツアーを組んでお客様を招待して着物を買っていただくというもので、そこに来られるお客様は全て小売店が窓口になっており全て小売店が責任をもって接客をしてお仕立て、納品、代金の回収等を行います。ですので展示会を見かけたからといって立ち寄っても受付で「どちらのお店のお客様でしょうか?」と聞かれて「通りすがりですが見せてください」といってもおそらく会場内に入れてもらえないと思います。

先ほど「遠方の方ですと1泊2日で祇園祭を見に行くツアー」と書きましたが、例えば関東の方からこのツアーを組みますと交通費2万、宿泊15000円、晩御飯(鴨川の床など京都らしい店)15000円、その他諸々で最低でも5万-6万程度はかかります。こういうツアーに招待するお客様は上得意さんが基本でお客様に請求しない店が多いと思いますので、1人あたり安く見積もって5万として20人連れて行ったらもう100万円が飛んでいきます。小さい店にとってはかなり痛い出費なのですが、こういったツアーに参加される方はその辺り心得ておりまして付き合いで20万、30万ぐらいのものを購入していただけますし、そのあたりの阿吽の呼吸で購入していただけない、購入が見込めないお客様には声をかけません。

そしてこの問屋の展示会の中で販売されている商品は、多くの小売店が遠方からお客様を連れてきて、かなりの経費がかかっているのを問屋側もわかっているので通常の展示会の掛け率よりも割高になっていることが多いと思います。また、通常の掛け率だと20万の品物を購入してもらうために5万も6万も経費をかけていたら手元に残る利益なんてほとんどありませんので、通常の掛け率に単純に経費分の5万円を加算しているというやり方もよく聞きます。

ちょっとわかりにくいのでもう少し詳しく解説しますと、展示会場は問屋の社内で問屋の商品を販売しておりますが、小売店が集客して小売店が販売するのであくまでも小売店が窓口になります。つまり問屋で購入したように見えますが、小売店が連れてきたお客様が購入した商品はその後に問屋から小売店が仕入れると言う形になります(いわゆる消化仕入れ)。そして問屋の中で提示されている価格は

原価(問屋の卸価格)15万円の商品ですと
15万円×(1.8から2.5程度の一定の掛け率)+5万円

という価格がつけられていることが多かったです。本来「15万円×(1,8から2.5程度の一定の掛け率)」で販売されている商品ですが、経費分を取り返すためにあらかじめ5万円程度が加算されていました。そしてその経費を何としても取り返さなくちゃならないのと、安い商品に5万円を加算するとバレバレなので安い品物は用意されていないことが多かったです。

私が昔勤務していた店でもお客様を祇園祭ツアーにお連れしましたが、その店は大阪だったので5万円もかかるわけでもありませんのでもう少し安い商品を置いてもらえないかと交渉もしたのですが、その問屋の展示会には様々な小売店が参加するため、当店だけのために安い商品を置くと他の店にも影響があるため置けないと言われてました。あらかじめ5万円が加算されているので値引きはしやすかったですが…。このように書くと結構ブラックですね汗。

でもこのような旅行企画、それも遠方からとなりますと最低でも1人5万以上、お友達同士やご夫婦で参加される方も多く、そうなると10万以上の経費がかかってしまうので、呉服店側に立つとやはりしっかりと利益計算をしておかないと長い準備期間を使って経費も使って結局赤字だったということにもなってしまうので、このあたりはある程度ご理解いただけるとありがたいです。

店側から声をかけて参加していただくお客様ですが、この辺りは本当に阿吽の呼吸ではありますが、お客様と店側がきちんとコミュニケーションが取れていて

「このツアーに参加するんやったらなにか買ってもらわな困るで」
「へいへい、どのくらいのものを買ったらいいねんな」
「まあ最低でも20万か30万ぐらいは頼んますわ」
「はいはい、わかりましたよ」

というような暗黙の了解が成立する方だけを招待するのですが、そのあたりの店側の意識とお客様の意識がずれてしまうと「強引に売りつけられた」といったような被害が発生してしまうことになるので店側もお客様選びはなかなか大変です。私も以前勤めていた店では、ある程度購入を見込める暗黙の了解ができているお客様を集めなくちゃならない、でも付き合いで20万、30万のものをポンと買ってくれる方もそれほど多くいるわけでもなく、大変だったのを覚えております。

そんなわけで、本日は7月17日で祇園祭のクライマックスの山鉾巡行です。すでに朝の9時から始まっておりますので山鉾巡行を見ながらこのメルマガを読んでおられる方も…なんて人はいないですよね笑。見物する方も、山鉾巡行に参加される方も、おそらく本日も暑いと思いますので熱中症に気をつけてクライマックスを乗り切ってください。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
https://www.kikuya.shop/

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