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七五三を扱うべきかどうか、それが問題だ

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本日のお題:七五三を扱うべきかどうか、それが問題だ
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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昨日から10月、ついに袷の季節になりました。ようやく朝晩涼しくなって暑いと全く売れないリサイクル店の店主としては「今年も何とか生き残りました」という心境です。

夏物や単衣はしばらく着ることはなくなると思いますが、衿山部分、袖口など汚れやすいところを点検して、汚れている場合は洗いに出してまた来年気持ち良く着られるように保管しておいてくださいね。

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■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。本店サイトは楽天などのショッピングモール価格よりも5-10%程度お安く提供いたしております。

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■七五三を扱うべきかどうか、それが問題だ

本日のお題は「七五三を扱うべきかどうか、それが問題だ」です。当店はサイトを見る限りでは99%の商品はリサイクル着物でほぼリサイクル着物専門店になっておりますが、実店舗は意外とそうでもないんですよ。なにせ大阪市内でもこの大正区という区は隅っこの方で難波や梅田など繁華街のある場所からは遠く離れているおり、大阪市内の中でもかなり下町といってもいいと思いますが、その町に当店しか呉服を扱っている店がなく、当店がなくなると着物を着る日に腰紐がない、帯板がないという時にどうしようもなくなるので、細々とリサイクル品以外も店頭に並んでおります。

大正区はかなり高齢化も進んでおりまして、このメルマガでも何度か書いておりますように私は商店街の役員をやっており、行政ともわずかながら情報交換をすることもあるのですが大正区の高齢化は著しく喫緊の課題とされているようです。ちなみに私が卒業した小学校は昔は1学年3クラスあったのですが、今は1クラスとなっており、そういったところからも少子化ははっきりと感じ取ることができます。

まあそんな土地柄ですし、駅からも遠いし、別に有名店でもなし、オリジナルの柄を作ったりしてネット民の話題になっているわけでもなし、店頭の売り上げは当店の売り上げの中ではごく一部ですから店頭に着物を陳列していてもそれほど売れるわけもなく、ネットに出しているリサイクル品は近くの巨大倉庫に保管しており店頭には最低限しか陳列しておりません。店頭にも置きたいんですが、どうしても蛍光灯に照らされているとヤケて褪色してしまう可能性があり躊躇してしまいます。

呉服屋の在庫商品で一番気を使うのは虫食いなどではなくヤケによる褪色なんですよ。着物なんて商品の回転率はかなり遅い部類の商材ですので2年や3年在庫として持っていることなんてザラです。たまに廃業する呉服店から大量の在庫商品の買取を依頼されることがあるのですがだいたいそういう店の商品はどこかヤケていますので全部ヤケていることを前提とした価格で買い取ることになります。

特にネット店舗を中心にしていると1年前に検品と写真撮影したものが売れることもあります。1年間店頭に置いて蛍光灯に照らされているとほぼ確実に折り目の部分が褪色しますので、店頭には置きたくないんですよ。もちろん現在店頭に置いている最低限の着物はヤケないように頻繁に入れ替えておりますが、店全体に着物を置いて頻繁に入れ替えるのは大変な労力なのでそういう点からも躊躇してしまいます。ちなみに倉庫は窓という窓を全てダンボールで塞いで外の光が全く入らないようにして、電気をつけないと全く何も見えない暗闇の中に保管しておりますのでヤケの心配は皆無です。

先ほど書いたように一応ほんの少し新品も扱ってるんですよ。もうこの地域には呉服屋自体ほとんどありませんし、ちょっとした小物を買いに来られることはたまにあるので、地元で商売させていただいている責任かなぁ、と思って足袋や和装小物などは一通り揃えておりますし、染抜きなどお手入れを持って来られる方も多いのでそういった取次も細々と。先ほども「たまに着物着たくなった」と角帯と足袋を購入していただきまして、こういう時のためになかなか売れないものでも在庫として持っておく必要性は感じています。ただ、日々の売り上げとしては大したことなく、正直店頭だけでは全く売り上げが立たないのでネットがなかったらとっくの昔に呉服屋はやめて商売替えしていたかもしれませんね。

リサイクル着物を扱ってからはリサイクル着物の面白さに目覚めて当店の全資金力をリサイクル着物にぶっ込んで現在は在庫数9000点近くになりました。好きな着物に囲まれてとっても幸せです笑。

当店を取り巻く状況はそんな感じなのですが、今悩んでることがあるんですよ。それはこれからの季節の売れ筋商品の七五三です。それほど積極的にはやっていなかったのですが、地元に呉服屋がないから全くないというわけにはいかないよなぁ、と思いながら結び帯や被布セット、男の子の袴セットなどは在庫にあり細々と店頭にも並べています。

とは言いながら数点ずつあるだけなので正直ちょっと足を伸ばせば行くことのできるデパートやもっと大きな呉服店には太刀打ちできません。当店には通り一遍のごく普通の昔からの定番のものがあるぐらいです。ごく普通の着物、ごく普通の結び帯、ごく普通の被布セット、ごく普通の草履…。

でも今ネット検索すると10年前とはデザインが全く変わってるんですよ。昔は真っ赤な地色に花柄が定番で、帯も黒地に金の帯など、もちろんデザインは多少違いますが大体の定番が決まっていました。しかし今はメーカーも様々な色柄のものを提案してきて、アイテムも多岐に渡るようになってきました。女の子の草履なんていままで赤地に金が定番だったのに黒地、白地、ピンクに鼻緒も刺繍の入った豪華なものがネットに並んでいます。めちゃくちゃ可愛いやん笑。多分デパートに行くと10年前とは全く違うめちゃくちゃ可愛い七五三用の着物がたくさん並んでいるんでしょう。

男の子も最近可愛い被布セットが出てきてますし、袴も今までの定番の仙台平調の縦縞一辺倒ではなく様々な色柄のものが発売されるようになりました。女の子はもちろんそれ以上にアイテムは多岐に渡ります。可愛いが正義の子供用の着物は「隣の子よりも少しでも可愛い着物」を着せたいという親御さんの気持ちも相まって進化がすごく早くて正直ついていけません。

実は何年も前から「もう七五三は今の在庫を安くして売り切ってしまったらもうやめようか、それとももうちょっと頑張ろうか」とスタッフの大西さん(仮名)と話し合っているのですが今だに結論は出ません。もうちょっと頑張るなら今までの在庫とは全く違う、現代風の新しい商品を仕入れなければならないのですが、リサイクル着物にかかってるリソース(資金や時間)を七五三の販売に振り分けると結局どちらも中途半端になってしまうのではないか、と思うんですよね。

同じような事例で、実は昔は新品振袖も頑張っていたのですが、これはもうほぼ諦めております。着物自体のデザインはそれほど変わらないものの、帯締めや帯揚げ、重衿など小物を中心とした様々なアイテムが進化してついていけなくなったというのが要因の一つです。雑誌の振袖最先端コーデ特集をもってきて「こんな小物が欲しい」と言われることが頻繁になり、そういった要望に応えてお客様が望んだ商品がすぐに出てくるようにするにはアイテムが多岐に渡りすぎるし当店の資金力はなさすぎる。そして今はネット社会ですからお客様もご自身の理想にあわなければネットで探したほうがいいかな、と思うでしょうし、私自身もその場でネット検索して「こんな感じのを考えてるんですか?ここに売ってますよ」なんてアドバイスしてしまいます笑。

無理に買っていただくよりもお客様の理想になるお手伝いをさせていただきたいと思っておりますし、そもそもそういう雑誌を持ってきて「こういうのが欲しい」という方は頭に理想が出来上がっていてその理想と合わなければなかなか選んでいただけないし、そこで勝負しようとするとかなりの商品数を持っている必要があり、やっぱり当店のような小資本では対応するのが難しくなってきています。

今思い出しましたけど、10年ほど前、当店の前社長が浴衣用の今風の帯〆やフリフリのついた重衿などを仕入れてきましたが、仕入れておくと売れないものでして、結局大赤字で処分しました。どうやらうちの店頭はあまり変わった今風のものを置いてもいまいち売れ行きが悪いというジンクスがあるようです。まあ普通に考えると、お客様の方もうちのような小さな店にそんな変わったものがあると思わないので、少し変わったものが欲しいのであれば大きな店やネットで探しますよね。

かなり長い年月と資金の投資をしてリサイクル品の取引先と人脈を作ってきたのでやはりそちらの方にリソースを割くのが一番自然で無理をしなくていいやり方かなぁ、と思いつつ周りに呉服店がないのにせっかく来ていただいたお客様に「それうち扱ってないんですよ」というのも抵抗があり…。

これから涼しくなってくるとそろそろ七五三の準備に動くと思うのですが、もう今の細々と残っている商品を安くして売り切ってしまったら当店の七五三の扱いは終わりにするか、それともこれからももう少し新しい商品を仕入れてみるか、まだまだしばらく悩んでしまいそうなのですが、たぶんもうこれで七五三は終わりにするんだろうなぁ。最近珍しいもの、面白いものはまとまったお金を出さないと手に入れにくくなっておりますのでそういう現状から考えてもリサイクルの小紋とか紬に特化しないと生き残れないのでは、という風にかなり傾いております。

今週のお題の七五三はもちろん小学生の卒業式の袴姿など、平成の後期から令和にかけて特に子供用の着物が進化してきたような気がします。着物は流行がないと言われがちですが、そんなことないですよ。洋服に比べてゆっくりではありますが確実に流行はあり、やはりファッション産業だなぁ、と改めて思うのです。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022

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