ナースさんのお仕事 特別養護老人ホーム編 〜終末期対応 最も幸福に天国へ〜
特養シリーズの総まとめです。
「特別養護老人ホームってどんなところ?」「老人ホームでの看護について調べたら広告が多すぎて訳わからなくなったクマー!」「医療・介護業界向けのガチな看護を知りたい」
など思っている方への記事となってます!
前回は褥瘡が多い特別養護老人ホームについて書きました。これは1番目に難しい看護業務だった。前々回は特別養護老人ホームの薬の管理について書きました。
今回はY特別擁護老人ホームで3番目に難しい看護業務、終末期対応をお送りします!
Y特別養護老人ホームの終末期対応が難しい理由
①特別擁護老人ホームは終の住処である。
②いつ心臓が止まるか分からない。対応を誤ると殺人になる。
④間もなく寿命が尽きる方と家族への配慮。
があります。
この記事はY特別養護老人ホームのフィクションです。
僕が働いていた場所が特定されると、入居している人が特定できる。なので特定と避けるために工夫するとフィクションになってしまう。事をご了承頂きたく思います。
良い感じにフィクションができたのでこんな事例を紹介します。
梅子さん(88)
終末期の88歳女性。認知症などにより家がゴミ屋敷となる。近隣住民とのトラブルが続き、一人暮らしも困難となりY特別擁護老人ホームへ入所となる。
入所して8年が経過。当初は歩行できていたが徐々に歩けなくなり、車椅子となり、寝たきりとなる。2か月前から徐々に食事を取るのも難しくなる。高カロリーゼリーや本人好みの食品を用意するが食事は困難。
活力(生命力)がなく3日間食事を全く食べれない状態となる。88歳と高齢であり、快気の兆しも見られない。親族へ連絡し、主治医より余命が少ない事を宣告される。親族は加療や点滴療法は行わず(安楽死に近い)自然に逝去されることを希望される。
特別擁護老人ホームは終の住処である。
特別養護老人ホームは入居したら寿命が尽きるまで入居します。最初はゴミ屋敷で生活できていた方でも、最後は寝たきりになり寿命を終える。終の住処と呼ばれる事があります。
入所した時はまだ元気があり、収集癖でタンスの中に食器やゴミを収集する行為があったものの難易度は高くない。しかし、徐々に歩けなくなり介護が必要になる。ゴミ屋敷になったり、タンスにゴミを集めていたが徐々にそんな体力はなくなる。
そして徐々に寝たりきりになり、最終的に食事をする体力すら無くなった。これで心臓を動かすエネルギーも尽きる。
介護の難易度が上がったとしても、他に行く場所がない。この事例だと、ゴミ屋敷は清掃後に売却されてるので家がない。健康状態も問題でホームから出たら最後、即日寿命が尽きる可能性すらある。他に行く場所がない。
いつ心臓が止まるか分からない。対応を間違えると殺人になる。
88歳、生命力がなくなり3日間何も食べてない。快気の兆しもない。そうなると餓死する。
この場合には、胃の中にチューブを入れて胃へ栄養剤を流し込む。点滴栄養、血管から栄養剤を流し込む。などをしないと餓死する。
この時、対応を誤ると殺人になる。餓死するのを放置した。栄養剤を投与しないと餓死するのに何もしなかった。などの罪が発生する。
法規に則り、正式な対応を積み重ねて、寿命が尽きるのを援助する。事が必要です。そうする事で安楽死ではないが、安楽死に近いような対応となる。
終末期対応と一言でまとめているが、この中身はとても多い。
まず事務処理がすごく多くなる。人間が死にますので相応の事務処理や対応が必要。
何度も血圧を測らないといけない。心臓が止まると血圧は0(ゼロ)になる。徐々に心臓が弱って血圧が下がっていく。心拍がなくなって脈拍が減る。それとか体温を作るエネルギーがなくなって、体温が下がる。
などが起きる。だから何回も巡回に行くし、何度も健康チェック(血圧測定)などします。
正式な対応ができているのか、家族やチームメンバーで相談と同意を得て慎重に進める。
慎重に進めたら時間がかかります。通常の業務に加えて終末期対応が増えるので残業も発生する。しかし、対応を誤ると殺人になる。
僕は医療や介護を命を守る仕事だと思ってない。命を守る仕事なのに寿命が尽きるのを見守る(終末期対応)ってのはよく分からない。だから命を守る仕事だと思わない。
寿命が尽きる方とその家族への配慮。
餓死するが胃チューブや点滴を使わない。安楽死のような形になりました。苦しそうな顔で心臓が止まるより、寝てたら心臓が止まりました。となっていた方が心臓の止まり方としては良いし、周囲も納得しやすい。
梅子さんがもう危篤ということで倉敷の親族が面会に来ました。
親族「梅子さんが死ぬ前に食べたいって言ってた倉敷の名店のケーキです!!!これを食べさせたいんです!11」と言われました。
正直、口を開ける体力や飲み込むエネルギーはない。本来ならケーキを食べさせる選択肢はない。でも終末期対応、かなり無茶なですが、吸引機などを用意して僕が食べさせました。食べたというか、奇跡的に口が開いて口の中に入れた。
それでも親族の方はとても喜んでいました。「遺言を果たせてよかった。。。」と泣きそうになってます。
人間、一人で死にゆくものではありません。「寿命が尽きる前に⚪︎⚪︎がしたい!」という人の気持ちはある。Y市は横浜市ではありませんが、岡山県倉敷からY市にケーキを持って来るのは気合いが入ってます。そういった配慮も必要だと思ってます。
<業界人向け>
このタイミングの無理な食事介助は業界人でも賛否ある。「遺言とはいえダメだ」「この状態で食べるのは苦痛かもしれない」など賛否ある。
しかし、DNARが来ている。倉敷の名店でケーキを買って、Y市まで来るのに4〜6時間はかかるだろう。そのケーキが腐るのは僕も心苦しい。
最悪、これで死亡しても文句は言われにくいだろう。
主治医に確認を取ればもっと良かったはと思うが、強行しました。
食事後、報告会に行って18時。本来なら業務終了の時間です。しかし、何度も血圧測ったり、事務処理がかなり残っているので後1時間くらい残業するなと思ってました。
だが、更に残業する予感がしたので近くのコンビニにおにぎり(夜食)を買いに行きました。玄関近くになると院内PHSが鳴って介護より「息が止まりそうです!!!」と連絡があったので全力ダッシュで病室まで行きました。
病室に着くと「息が止まりそうでしたが戻りました!」「連絡が取れなかったのでパニックになりました!!」と言われる。
僕「大分残業すると思ったのでコンビニに買いに行ってました。コンビニにいたから院内PHSに繋がらなくて玄関付近になったら繋がったんだと思います。コンビニに移動してはのは5〜10分くらいだと思いますが、この状態では『コンビニに行ってたら心臓が止まってた』ということはある。」と介護と親族に説明すると納得したようでした。
自画自賛なんですが、この時わざとコンビニの袋を持って病室に行ったんですよ。もう18時過ぎて残業しているし、コンビニに行ってたけど、全力で戻ってきたよ。と暗に示した形です。
そしたら親族の方が更に泣いてしまいました。
親族「この遺影の人は私の兄なんです。兄は60代で亡くなってしまって、息子も20歳で早世したので『俺が死んだら梅子は一人になってしまう。梅子を頼む、、、梅子を、』と妹の私に言い遺して亡くなりました。」
親族「強烈な性格で他に親族がいなくて、梅子さんを兄から託されてました。」
「家がゴミ屋敷になってるとY市から連絡がありましたが、倉敷にいるのでどうにもできなくて、、、かといってこの強烈な性格の人と住むのも難しいし、困っていた事をY特別養護老人ホームさんで預かってくれることになって、、、本当に、、、本当に、、、」
「久々に兄の遺影を見て〜うっ、うっ、、、、」
という話を親族から聞かされて、この話を聞いてたら残業です。本気で泣いてるし出るに出られない、あれは辛い。
おにぎりを食べた後、事務処理などを行いもう少しで終わると思っていたら介護より連絡「梅子さんの呼吸が完全に止まりました」
聴診器を持って病室に行き、呼吸と心音がないことを確認。主治医に連絡すると「そうか、今日はすぐ行けるよ。30分後に着くな!」とやる気。
21時頃でしたが、主治医が来て死亡確認。死亡診断書を書いて頂きました。そして、死後の処置を行います。葬儀社に引き渡すまでのご遺体の処置です。
その後は倉敷で葬儀を行うので、倉敷から葬儀社がY市まで引き取りに来たそうです。この倉敷の葬儀社すごいなと。
全部終わったのが23時ごろ。18時に終業ですので5時間残業。
残業中に状態が悪くなって対応して更に残業する。病院の医師が無限に残業するパターン。
いや、倉敷の葬儀社には負ける。霊柩車でY市と倉敷間の深夜の往復はやばい。
まとめ
Y市は横浜市ではありませんが、Y市でゴミ屋敷になって近隣住民とトラブルのあった人を入居し、最終的に良い形で逝去された。
住んでいたゴミ屋敷の近隣住民にとって幸せな事をしている。想定外でしたが倉敷市の親族にも幸せな事をしている。そして、認知症(病気により)などによりゴミ屋敷になってしまった人を幸せにして、最終的に良い形で天国へ見送った。
管理職はマジでクソでした。給料も決して多くはない。
でも、素晴らしい事をしている。そんなY特別養護老人ホームのお話でした。
ではまた!じゅわっち!
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