看護職員がデイサービスについて語る③〜これからのデイサービス〜

「命を守る」と「介護・医療」とは相性が非常に悪い。
 利用者が生きてても、生きてなくても介護職員の給料は変わらない。それなのに、どうして真面目に仕事してるんですか?

 情け容赦なく現実主義で、モラルもクソもなく論理的に考えた場合にこの発想に行き着く。永遠に現実逃避してるか、ずーっとお花畑にいるか、業界も何も知らない場合には、この発想には行きつかない。または思っていても口に出せないか。

 どうもゲーテです。
 僕は有料老人ホームで3年、准看護師学科で2年、准看護師で8年目。全部で13年。多少は語れるようになりました。そんな僕がデイサービスついてお話ししたいと思います。

 正直、日本では医療も介護も、お金が欲しい人がやる仕事ではないです。趣味や道楽のような状態でも仕事をし続けるような人しかできない仕事です。
 アメリカだと高額な医療費を請求できるので、お金が欲しい人はとても稼げると思います。アメリカ式に日本の法律を変えていく必要がありますが、現実的ではない。

 さて、この前提を置いた上で、これからデイサービスで起きる事を書いていきます。
 ・人口減により職員、事業所数の減少。
 ・延々と現状維持が続き、いつか破綻する。でも、どんな破綻なのかよく分からない。

人口減

 一言で少子高齢化と呼ばれますが、”少子化の問題”と”高齢化の問題”と”人口減”の3つの問題があるように思います。

 まず、サービス施設の立地する確率が50%及び80%となる自治体の人口規模 という厚労省の資料が公開されてます。人口規模が◯◯人以上いる地域じゃないと、事業が継続できない というラインがあります。
 三大都市圏以外で人口が6500人以下の地域だと、金融機関が減ります。
 人口が5500人以下の地域だと、学習塾や病院もなくなっていきます。人口が減ったら学習塾は運営が難しいです。
 病院も人口が減ると運営が難しくなります。高齢化で増えそうなんですが、病院の数が減ってますね。

 資料によるとデイサービス(通所・短期入所介護事業所)は6500人以下で半減する。と書かれてますね。訪問介護の8500人。どちらももっと人口が多くないと成立しないと思ってました。

 今後はもっと人口が減る地域が増えるので、それに合わせて介護事業所も減少するかと思います。
 「命を守る」という観点では、病院や介護事業所が減少するはずがないのですが、不思議ですね。命を守る気がないのかもしれない。

車の運転をできる職員がいなくなる

 介護士が足りない!と言われますが、車の運転をできる職員も足りない
 こちらも大きな問題です。

 デイサービスの求人には、介護福祉士+自動車免許 みたいな強気の求人が多いですが、ちょっとよく分からない。
 事業所によっては、介護士1人で利用者を乗せて運転する事がありますが、あまり推奨される話ではない。
 デイサービスは幼稚園の高齢者バージョンです。幼稚園のバスは運転手と保育士が乗ってますよね。保育士が一人で運転しつつ、後ろの子供達を見る状況になります。運転手+介護士で行うべきです。

 それにデイサービスはご自宅まで送るのが業務なので、どんなに細い道でも運転できる技術が必要です。
 今の時代では、タクシー運転手が減っています。どんな道でも運転できる技術を持った人も減っています。高い運転技術がある人の単品だけでも難易度は高い。
 その上で、介護福祉士まで必要な強気の募集になる。

 車を運転できる人を募集しても集まりにくい。で、車が動かせず事業ができず終了。という流れが怖いですね。

 とあるデイサービスでは、専属の高齢運転手がいましたが突然に入院し、引退。デイサービス介護主任と事務スタッフが代わりに車を運転していました。彼らは残業確定です。

 ある職員に車を運転したら車をぶつけて帰って来た。交通事故ですね。
 利用者を乗せて運転中、狭い道を行こうとして、塀?玄関?に車のフロントをぶつけて問題になった。冬の18時前後の暗くて狭い道で運転をしてますから仕方ない部分がある。
 車が軽く損傷するだけで済みましたが、利用者が乗ってて交通事故ってのは恐ろしい。
 デイサービスは幼稚園の高齢者バージョンです。幼稚園のバスが子供の送迎中に、玄関に衝突した。みたいな事があったら一撃でニュースになります。
 しかも一人で運転してますねん。強く激突してたらどう対応すんだって。

 専属の高齢運転手が突然の引退となりましたが、次の運転手に求人をかけても来ない。数ヶ月間ずーっと彼らが運転してて可哀想。過労状態で車を運転するのも危険ですが、他に手段がない。
 あるとすれば運転が難しい位置の利用者を断るか。

 ちなみに、デイサービス1で書いた残業している人はこの人をモデルにしています。車を運転した上に主任業務があるし、道路交通の問題で帰ってくるのが遅くなる日もありました。
 「介護の時間より車を運転している時間の方が長いな!はっはっは!」って言ってましたけど、それはそれで問題なんですよね。

 事務の人も運転してました。
 彼は人事課に相当する仕事、給与の計算など各種事務の仕事をしている。その事務の人が車の運転に駆り出されてるけど本業は大丈夫なのか?と思いました。
 彼が運転してしまうと、元々の事務の仕事が滞る。代わりに事務をしてくれる人を募集しても集まらない。

 ここで前提が出てきます。
「命を守る」と「介護」「医療」とは相性が非常に悪い。
 利用者が生きてても、生きてなくても介護職員の給料は変わらない。それなのに、どうして真面目に仕事してるんですか?

 彼らは仕事に給料以外の価値を見出したからやっているが、逃げ出す人も多い。そんな人材だけ集めるのも難しい。彼らは介護以外の仕事もできるんです。お金が欲しいなら他の仕事をした方がいい。
 あるいはデイサービス(副業)+タクシー(本業)という手もある。

 あの長い残業時間を他の事に使った方が論理的である。
 でもどうして、この仕事をしているのか。貴重な存在だなぁと思ってました。

 以前はシルバー人材を活用して〜といわれてましたが、今はシルバー人材すらいなくなっている。
 タクシー業界は80歳まで働けるようになってる。
 タクシー運転手が足りないなら、デイサービス運転手は更に難しい。これが次の専属運転手が来なかった理由です。

延々と業界が変わらない。

 介護士が不足している。介護士の給料が物足りない。これは何年前から言われていた事でしょうか?
 探すのは凄く難しい。2000年には介護士が不足している、給料も足りない と騒がれていた。つまり、23年間大きな変化はなく今に至る

 大きな変化がないと書く理由としては、処遇改善など改善しようと政策を行っているもののあまり変わらない。でも、もし何もしてなければもっと足りないし、もっと安いと思います。
 十分とは思えないのですが、評価すべきところは評価した方がいい。

 40年前から「このままでは少子化になって大問題になる」とわかっていた事なんですが、40年間少子化問題に大きな改善はなく今に至る。
 少子化対策ですら大きな改善がないのだから、介護士不足に大きな変化があるはずがない。こちらは介護より重要度が高いですからね。

 なので、僕は後10年20年しても大きな変化が起きないと予想します。

 日本全体として介護に興味のある人が少ないように感じます。介護士の給料を増やそうとすると、増税または大規模な改革になる可能性が高い。でもそんな事はできないし、したくない。なので延々と大きな変化はない。
 介護や社会保障の増強(増税)に興味を持つ人を増やす方法も僕には分からない。
 そうなると、ずっと同じ状態になり、そして今に至る。

 「命を守る!」と言っても、介護に興味のある人が増えない。いても「命を守る事に協力している俺カッコいい!」と一時的に気持ちよくなるが、翌日には興味がなくなっている。そんな人が増えてもあまり価値がない。
 「命を守る!」と言っても、延々に介護士不足や給料は変わらないのから「命を守る!」以外のアプローチが必要。とはいえ、別の効果的なアプローチも厳しい。

今後はどうなるか

 さて、デイサービスの仕事2で「重い利用者を断っているデイサービス」について話しました。もちろん、どんな人でも受け入れる強気なデイサービスもあります。
 しかしですね、利用者が生きてても、生きてなくても介護職員の給料は変わらない。それなのに、どうして真面目に仕事してるんですか?

 情け容赦なく現実主義で、モラルもクソもなく論理的に考えた場合。重い人を扱わない方がお得なんです。「命を守る」という理念があるなら、どんな重い人でも扱わないといけない。命を守ると介護は相性が悪いので仕方がないです。

 とはいえ、重い人が多いと運営が難しいのもまた事実。
 「命を守る!」という大義名分があれば、不思議な力や素敵な魔法で解決するはずなんですが、そうそう上手くはいきません。

 重い人は行き場所がなくなり、寿命が短くなる。孤独死がもっと増える。までは分かるんですが、これ以上は僕は何とも分からない。
 へき地医療について調べたけど、何とも言えないですね。問題が起きる前に都市部へ引っ越すかお亡くなりになってる?

 とりあえず、確実に言えることは今まで大きな変化がないから今後も大きな変化はないが、いつか破綻する。破綻すると何が起きるのかは分からない。

 そんな事を考えています。ではまた!じゅわっち!

https://www.mlit.go.jp/common/001042019.pdf 
サービス施設の立地する確率が50%及び80%となる自治体の人口規模
厚労省公式PDF


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?