手書きの原点は母の愛情
先月届いた母からの贈り物、子どもたちへのクリスマスプレゼントにお正月用のお餅や栗やさつまいもに玉ねぎ、じゃがいも。
ダンボール箱を開けると封筒の中には一通の手紙。
便箋いっぱいに母の文字がありました。
大学生になり一人暮らしを始めてからもう10年以上、変わることなくたくさんのメッセージをもらいました。
あるときにはカレンダーの裏にマッキーで書いたメッセージが載っていたり、またあるときには可愛いメモ帳の一枚が入っていたり、絵はがきの裏に母の一言を見つけたり。
初めて母から手紙をもらった記憶を辿ると、小学四年生のある日、学校から帰ったキッチンが浮かんできます。それは二分の一成人式の日でした。
学校から保護者へ手紙を出すよう伝えられていたようで、その手紙と一緒に可愛い星のネックレスをもらったのです。
便箋2枚、母が自分のために綴ってくれた言葉が嬉しくて、その日から私の宝物になりました。ちなみに一緒にもらったネックレスも。
シルバーの細いチェーンに星が一つついたシンプルなネックレスは、10歳の私には大人びてみえて、つけるときにドキドキした気持ちを今でも覚えています。
小学校六年生のときに私はちょっとした事件(事件という時点でもうちょっとのことではないですね…)を起こしてしまったのですが、そのことが母にわかった日、母に怒られるではなく差し出されたのは一通の手紙でした。
小学生ながらに、文字から読み取れる母の素直な気持ちと真っ直ぐすぎる愛情が痛いくらいに心に刺さって、苦しいくらいでした。
それを読んで、母と正面から向きうことができました。
あの手紙がなかったら、母の前でしらばっくれていたかもしれません。
そうして、一生自分の心と身体を痛めつけていたかもしれません。
あの手紙のおかげで私は本来の自分を取り戻すことができました。
18歳の冬、志望大学に合格し下宿先も決まっていよいよ一人暮らしが始まる日。
当時熊本に住んでいた私にとって、そして家族にとっても、大学がある神戸は遥か遠くの地でした。
あの頃は九州新幹線が開通したばかり、新幹線といっても時間的にもお金の面でも、決してすぐ会える距離ではなくなることが分かっていました。
玄関を出る直前に渡されたのは、家族全員からの寄せ書きでした。
母に始まって、父、妹と弟。
全員から一言ずつメッセージがあって、「ああ、もう私は行くんだ。独り立ちなんだ。」そう思い直した瞬間涙がとめどなく溢れました。
誰から言い出したのかはわかりませんが、おそらく母か妹か言い出したのだろうと思ってます。
あげればこんなエピソードが数え切れません。
私と家族の物語にはいつも、手書きの文字がありました。
私が手書きを大切に思う原点は、母からの愛情です。
母の文字は、丸っこくて、たまにぴょんと軽やかに飛び跳ねていて、それは優しくてチャーミングな母の人柄そのもの。
小学生のときからみていた母の文字はずっと変わりません。
母の愛情も、小さいときからちっとも変わっていません。
昔、幼い私や妹たちを見ていた母の眼差しは、今もそのままに孫への温かい眼差しとなっています。
だから、思うのです。
手書きにはその人の心が入っているのだと。
上手い下手ではない、手書きの文字はそれだけで、人の心を打つのだと。
どんな特効薬にも負けないくらい、手書きには人を幸せな気持ちにさせたり、癒やしたり、励ましたりする力があるのだと。
人とのつながりのなかにある幸せを、手書きから育み、広げていく。
それが、今の私にできること。
今の私だから、できること。
母の手紙を手帳にはさんで、今日も頑張ります。
【玉城麻衣 たましろまい】
1993年生まれ、熊本県出身。
2015年、自分の人生で出逢う1000人の 縁ある方へ筆文字で「ご縁はがき」を届けるチャレジに挑戦、2年間を経て1000枚を書き上げる。
その翌年から「ご縁はがき講師」として 活動を全国で展開。 講演、セミナーは累計100回以上。 出会ったお客様の数は1100名を超える。
2018年7月「ご縁はがきのキセキ」 個人出版500部。
2020年11月福井新聞掲載。同年12月週刊誌「週刊女性」掲載。
2021年9月書道のはな*みちスカウトキャラバン、カリグラフィー部門グランプリ受賞。
2021年4月「一枚の奇跡」(文芸社)出版。
2021年4月初個展「ご縁はがき展」を東京都内にて開催。
公開講座の他、企業研修や公立高校での出前授業、学童や福祉施設においてもご縁はがきを通して、手描きの筆文字で感謝を伝える技術を普及している。
【お仕事について】
・公開講座へのお問い合わせ、
・出張講座などの講師のご依頼、
・デザインや記念品制作など書道家活動
下記リンクよりHPをご覧ください。
個別のお問い合わせもお待ちしております。
http://goen-hagaki.com/
こちらも随時更新しています
フォローいただけますと嬉しいです♪
■Facebook
https://www.facebook.com/mai.obara1
■Instagram
https://www.instagram.com/mai.tamashiro1/
■Twitter
https://twitter.com/goenhagaki/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?