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はがきを書くことで私が得られたもの

大学四年生のときから、気づけば七年。今もせっせとご縁はがきを書き続けています。
千枚まではきちっと数えていたのですが、千枚を書き終えた翌月起業し、講座やイベントなど仕事としてもはがきを書くようになって「これはカウントする?」という線引きが難しくなるはがきが増えてきたためそれ以来数えていません。プライベートな繋がりで渡すはがき、仕事のなかで書いているはがき合わせて、少ない月で二十枚、多い月で六十から七十枚くらい書いている感覚があります。平均すると月に五十枚でしょうか。そうして計算すると、累計四千枚ほどこの七年間ではがきを書いたようです。
今となっては食事のように当たり前に私の日常に入り込み、人生の一部となっているはがきですが、書き出した当初からこんなにも続くとは思ってもみませんでした。これまでの人生を振り返ってもここまで続いたものはなく、継続記録を更新している真っ最中。
今も自らはがきを書き続け、また講座やこのような発信を通して、人へもそのことを教えたり伝えたりしているのは、書くことで得られたものや変化をたしかに実感しているからです。

1.筆文字で表現する技術


「書道をされていたのですか?」とよく聞かれるのですが、私は子どものときから起業するまでに書道教室に通った経験はありません。小学校の書写の授業として学んだ程度でした。今となってははがきだけでなく、商品のロゴや飲食店の看板も書かせていただけるまでに成長しましたが、その表現やセンス、技術ははがきを書き続けるなかで自然と身についていったものです。

「書けたら良いけど字はとにかく苦手で…」とおっしゃる方が少なくありません。しかし、筆文字は素人でも、字が苦手でも、書き続ければ必ず良い方向へ変化していきます。そして一定期間続けていくと、見る人が思わず「すごい!」と言ってくださるような出来にまで成長していくのです。ご縁はがき教室で学ばれる受講生のうち、長く書き続けている方をみていても、その変化が誰にでも起こり得ることを確信しています。

筆文字の技術は身につけてしまえば一生もの。子どもが補助輪無しで自転車が乗れるようになると、たとえ乗らない時期があってもまた乗ったときにはスイスイ自転車を漕げるように、その技術は失われることなくあなたの価値、能力になっていきます。「センスが全く無くて」という人も大丈夫。自分が気に入った筆文字やイラストを真似することから始めていきましょう。真似を続けていくと、だんだんと自分なりの感性でアレンジできるようになり、筆ペンで自在に表現できるようになっていきます。

2.夢中になれる時間


あなたの日常には、なにか無心で没頭できる時間はありますか?サウナやヨガ、料理、運転、写真、旅行など時間を忘れて打ち込める趣味をお持ちの方もいれば、自分には夢中になれるものがないという方もいらっしゃるかもしれません。かつて、はがきを書き始めるまでの私もそうでした。

就職活動をしていた頃、趣味は?と問われたり、書いたりする際に困ってしまったものです。本を読むこと、料理をすること、カフェで美味しいモーニングを食べること、映画や友人の舞台を観ること…いくつか浮かぶものはあっても、どれもすごくハマっているかというとそうでもない。根が真面目で、休みの日にも家にこもりご飯に呼ばれる以外はずっと勉強しているような学生でした。大学生になってからはその勉強時間がバイトと学生団体での活動に代わって、働きアリのごとくせっせと動き続けていたのです。

そんな私にとって、じっと座って筆ペンを取り、ただ静かに書くひとときはとても新鮮でした。書いていると、始めはラジオを聴きながら書いていてもしばらくしてふと手を休めると、ラジオの音なんてまるで耳に入っていなかった自分に気づきます。それくらい書くというのは集中を要する行為であり、心を研ぎ澄ませてくれるのです。

あるとき、誰かのために書いている時間は、自分のために書いている時間でもあることに気づきました。ご縁はがきを書こうとなると、悪口や愚痴、シビアな表現やネガティブな表現はまず使いません。「ありがとう」「感謝」「出会えてよかった」心が喜ぶ言葉を書くと、たとえ誰かへ向けた言葉であってもそれは自分の心にもしっかりと沁み込んでいきます。ポジティブでハートフルな言葉が自分の内側に溜まっていき、自分の心が前向きに穏やかになっていくのです。次第にこの時間がなくてはならないひとときになり、朝晩の寸暇をも惜しんで書くようになりました。

無心になって筆を動かすひとときは、童心に帰るような心地です。
社会の常識や世の中のトレンド、同世代の友人に合わせようと息を詰まらせながらもがいて生きていたかつての私が忘れかけていた心を、ご縁はがきが目覚めさせてくれました。

また手書きという行為自体には、瞑想で得られるマインドフルネス状態になり、脳が活性化される効果があります。書けば書くほど、私は水を得た魚のように元気になり、当時勤めていた会社でのパフォーマンスにもよい影響を与えてくれました。

3.横のつながり


ここではあえて、”横”のつながりと書きます。横のつながりとは、たとえば同僚や友人といった上下関係のない人同士のつながりを指します。一般的には 上司や先輩と部下、先生と生徒というような”縦”のつながりよりも、プライベートな話題や本音の会話をしやすい関係性といわれています。

私がはがきを書き始めた2年間は、大学4年生から社会人2年生を終えるまでの期間でした。”縦”のつながりという観点でみると、就職活動でも社会人生活でも下の位置にいたわけです。会社の人全員というわけにはいきませんでしたが、「この方なら受け取ってくださるかな」という上司や先輩方へ、仕事で助けていただいたときや食事をご一緒させていただいた際、勇気を出してはがきを渡していきました。

「わあ、すごいね!こんなの書くんだね。嬉しいなあ。」

そこから、少しの会話が始まります。仕事のことではありません。

「僕の嫁さんの妹も、こういう絵はがきを書いていてね…」
「いつから書いてるの?」
「いい言葉だなあ」

一枚をきっかけにして、もらい手が自分のことを話してくれたり、私自身へ関心を寄せてくれたり。ひとりの部下としてではなく、私という人と接してくれている。その瞬間から、横のつながりが紡がれていくのを感じていました。仕事だけでなく、学生生活や研修、イベントなどで出会った人との縁が立場や年齢を超えた横のつながりとなって、私の財産となっています。

手書きのはがきは決して同じものを二枚と作ることはできませんし、ましてや量産することもできません。世界にひとつというはがきの特別感は、そのまま相手とのつながりに特別感をもたらします。”あなた”だけに向けられた感謝の心は、はがきを通して相手に届くことで、横のつながりに欠かせない信頼となっていくのです。

4.応援者の存在

前述した横のつながりは、太くなっていくと互いの人生を支える”縄”になります。例えるなら出会った直後は互いに細い一本の糸がより合わさった状態。はがきを渡すことでそれを機に深く対話したり、食事などなんらかの活動を一緒に過ごしたり。その一期一会の連続で糸はさらに撚り合わさって、太く強くなっていきます。その過程を繰り返し、いつしか相手の成功や幸せを願う”応援者”へとお互いに成長していくのです。

実際、そうしてできた沢山の”応援者”の方々に支えられて私は様々な夢を叶えることができました。出版にはじまって、とある書道の大会のカリグラフィー部門でグランプリを受賞したり、都内で個展を開催したり、一流飲食店が看板とする文字に使っていただいたり。すべて、私だけの力ではありません。はがきを通して私の想いを聞いていただき、また一枚をきっかけに積み重なった時間の中で信頼していただけたことで、いざというときに「麻衣さんがそういうなら」と力を貸していただけたのだと思います。はがきを書くという習慣は、私を”応援していただける人”として成長させ、想像以上の未来へと自分を運んでくれました。

5.自信

私がはがきを書くことで得た自信は、2種類あります。

一つは、続けることによって生まれた自信。書道素人の私が、ただ”はがきを書く”ことの繰り返しで筆文字を技術とできたこと。続けている中でふと以前の自分の文字を振り返ってみると、たしかに見るたび上達している。それが嬉しくて、その瞬間は自分を承認してあげることができました。
今となっては驚かれますが、昔は完璧主義と真面目な性格のダブルパンチで自己否定に陥る場面がなんと多かったことか。勉強ばかりしていたと前述しましたが、それも「私は他人よりうんと出来ない人間だから、他人がやる3倍やって始めて人並みになれる」という根拠のない思い込みから。なにが原因だったのかはさっぱり記憶から飛んでしまっていますが、小学校中学年くらいからそう思っていたのは朧気ながら覚えています。
そんな私にとって、「良くなってる」「できた」と自分へ思うことがもたらすインパクトは絶大でした。1回1回は大して大きな影響がなくとも、日々の積み重ねによってどっしりと重く、揺るぎない自信が育まれていきました。

もう一つは、受け取っていただくことで得られた自信。他の人が信じると書く”他信”とも言い換えられるものです。
文字にはそのままの心が表れます。何回書いても、はがきを渡すときには受け取る方がどのように感じられるか不安になります。嘘偽りのない、等身大でありのままの自分がそこに宿るからです。
「私、このままでいいんだ」
「私は、自分らしさを出していいんだ」
一枚受け取っていただくごとに、私はだんだんと自分らしさを認め、外に出せるようになっていきました。その最たる結果として、自分がやると決めたこのご縁はがきで起業し、ご縁はがき講師として、筆ペン書道家として唯一無二の仕事をさせていただいています。

「ありがとう」と受け取っていただくことは、自分自身を受け入れていただくのと同じ。はがきを手にして喜んでくださる様子や言葉の一つ一つが、はがきを通して自分の心へ真っ直ぐに届いていきます。1枚や2枚ではなかなかそのような感覚にはならないかもしれません。しかし100枚、200枚と続けていくと自分の心持ちが変わりつつあることに気づきます。かつて人目を気にしてしまう性格だった私は、特にそのことを実感しました。渡したはがきの数だけ、今の私の心は自信で満ちています。

以上、5つに代表してご紹介させていただきました。
一つ一つは抽象的で捉え難いものばかり、しかしこれら全てが確実に私の人生に作用し、現実の日々を好転させてくれています。はがきの可能性を少しでも感じていただければ幸いです。
「はがきで私の人生も変わるかも…」そう感じた方は、きっと今がタイミング。ぜひ一緒にはがきの扉を開きましょう!


【玉城麻衣 たましろまい】
1993年生まれ、熊本県出身。
2015年、自分の人生で出逢う1000人の 縁ある方へ筆文字で「ご縁はがき」を届けるチャレジに挑戦、2年間を経て1000枚を書き上げる。
その翌年から「ご縁はがき講師」として 活動を全国で展開。 講演、セミナーは累計100回以上。 出会ったお客様の数は1100名を超える。
2018年7月「ご縁はがきのキセキ」 個人出版500部。
2020年11月福井新聞掲載。同年12月週刊誌「週刊女性」掲載。
2021年9月書道のはな*みちスカウトキャラバン、カリグラフィー部門グランプリ受賞。
2021年4月「一枚の奇跡」(文芸社)出版。
2021年4月初個展「ご縁はがき展」を東京都内にて開催。
公開講座の他、企業研修や公立高校での出前授業、学童や福祉施設においてもご縁はがきを通して、手描きの筆文字で感謝を伝える技術を普及している。

【お仕事について】
・公開講座へのお問い合わせ、
・出張講座などの講師のご依頼、
・デザインや記念品制作など書道家活動
下記リンクよりHPをご覧ください。
個別のお問い合わせもお待ちしております。
http://goen-hagaki.com/

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