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[日刊] 米国株:パウエル議長講演を消化し、逆イールド解消へ

こんにちは、GOEMONです。

10月20日(金)のレポート。

このnoteでは前日の米国市場から当日の東京市場までの株式投資、経済に関するニュースや出来事をまとめたレポートを平日18時を目安に投稿しています。

自分では2~3時間かかる量のニュースをこの記事1つで済むよう、可能な限り網羅し、要点をまとめています。

さらに深掘りしたい方は「ニュースメモ」から各ニュースのリンク先を御覧ください。


■米国

19日夜の米株式市場は3日続落となった。

・S&P500種株価指数:4,278.00(-0.85%)
・NYダウ平均   :33,414.17(-0.75%)
・NASDAQ    :13,186.18(-0.96%)

明日21日からFOMC会合のブラックアウト期間に入る前にパウエル議長を筆頭にFOMCメンバーの講演やインタビューが数多く発信された。

要人発言を総括すると今会合では利上げ見送りは確定だろうが、その先の利上げ可能性はまだ残すという特にこれまでと変わりのない結論となる。

パウエル議長の講演はハト派と受け止めるメディアもあったが・・・

最も注目を集めたのはパウエル議長の講演だった。

急激な米国長期金利の上昇、弱らない米国個人消費、手強い労働市場、イスラエルーハマスの衝突、前回のFOMC会合からさらに複雑になった金融市場を取り巻く環境の中で、どのような決断を下すのかを探る最後の機会なだけにハト派タカ派どちらかに振れることがあれば、その発言は大きな材料として注目されただろう。

しかし、終わってみれば無難な発言のみに留めた講演になった。

一部発言を抜粋しておく。

「不確実性とリスク、そしてこれまで実施してきた措置を踏まえ、委員会は慎重に進んでいる」
「追加の政策引き締めの度合い、そして景気抑制的な政策を維持する期間については、入手するデータと変化する見通し、リスクバランスの全体像に基づいて判断する」
「金融環境の変化が根強く続けば、金融政策の道筋に影響を与え得る」
「経済成長の強靱さと労働需要の底堅さを示している最近のデータに、われわれは留意している」
「政策が現在引き締め過ぎである兆候はないと考えている」
地政学的な緊張は「極めて高い状態にある」

ブルームバーグ

最近の主要なテーマ(長期金利上昇、労働市場のデータ、パレスチナ情勢)にそれぞれ触れ、どれも注視していることをアピールしながらも何か断言するわけでもない。

つまるところ、先行きが不透明過ぎるからもう少し様子見させてくれ、というのが本音だろう。

そして、その様子見の間に長期金利がFRBの変わりに仕事をしてくれて、徐々に実体経済が傷んでいるデータが出てくれば利下げも検討し始めるのが楽な道だ。

他の要人発言は中立からややタカ派が多め

パウエル議長の講演の他、シカゴ連銀、アトランタ連銀、フィラデルフィア連銀、ダラス連銀の各総裁も講演やインタビューで各々の意見を表明している。

ダラス連銀のローガン総裁が「インフレ目標達成にまだ確信がない」とややタカ派な発言をした他、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が「金利を現状維持できる段階にある」と利上げ休止を支持する姿勢を示した。

アトランタ連銀のボスティック総裁もインフレ目標達成が優先課題だと再度表明したことはタカ派と捉えられるだろう。

連銀総裁たちも現段階でのインフレ勝利宣言をすることなく、もう少し様子見期間を設けたいという意図のある発言だ。

今会合は利上げ休止となるだろうが、12月会合ではどうなるか現時点で全く予想が付かない展開が続きそうだ。

米長期金利は一段と上昇、10年債はついに5.00%へ

パウエル議長を始めとした講演やインタビューに加えて、米新規失保険申請件数が予想より下ぶれたこと(労働市場堅調)などを受けて、米長期金利は一段と上昇した。

米10年債利回りは2007年以来となる4.99%となり、今利上げ局面で発生している逆イールドはついに0.17%まで縮小した。

米長短金利差 = 米10年債利回りー米2年債利回り

リセッション(景気後退)入の前には逆イールドが解消されることが多いため、市場ではいよいよリセッション入が近いとの見方が広がっている。

このシグナルの信憑性がどうであれ、大事なのは米長短金利が5%もの高水準にあることだ。

つまるところ、長短金利差が大きかろうが小さかろうが、絶対的な金利水準が高いので多くの企業は借入に苦しむだろうし、個人消費者のローン契約数は減り、形は様々なだがいつかは経済にダメージが出てくるということだ。

長いこと繰り返し書いているが、今日も今日とて米国株、特に米国グロース株からは距離を置いておきたい。

おまけ:米国PE市場の怪しさ

以前に米国で増えているプライベートクレジット市場がどうも怪しいと書いた。

投資会社が銀行のように企業へ貸付をしており、これが最近急拡大しているのだ。

驚くことに中には15%なんて利子で貸し付けていることがあり、PE市場に参入した投資企業のインタビューを見ると今の状況でこぞって貸付先を探している雰囲気すら感じる異常さだ。

株式市場や債券市場が振るわないので、投資企業は10%前後の高いリターンが見込めるプライベートクレジット市場で貸付をしたいというわけだ。

しかしどう考えてもリスクが高い。なぜなら社債発行でまともな利率で資金調達ができず株式市場でも資金調達が難しい企業に15%前後の利子を返せる能力があるとは思えないからだ。

もちろん各社は厳しい審査を設けているのだろうが、彼らはあまりにも楽観的過ぎないだろうか。

そう思っていたところ、米ヘッジファンド運営会社エリオット・マネジメントの創業者ポール・シンガー氏が「資金の一部は、実際には破たんしている問題企業に流動性を提供するために使われている」と昨今のプライベートクレジット事業について懸念を示していた。

参考:現在の世界情勢、市場が織り込んでいる以上に危険-エリオット創業者

いつ問題が表面化するかわからないが、遅かれ早かれ問題になる日が近そうだ。

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本日はボリューミーなため、本記事は米国のみとしています。

後ほど(か夜)に日本市場とその他については別途アップロード予定です。

ニュースメモ

▼株式市場

【米国市況】株続落、FRB議長発言で乱高下-ドルは一時149円96銭

▼経済指標

米新規失業保険申請、19万8000件に減少-1月以来の低水準

米新規失業保険申請件数(10月14日終了週)は前週比1万3000件減の19万8000件
ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は21万件
前週は21万1000件(速報値20万9000件)に修正
失業保険の継続受給者数は10月7日終了週に173万人に増加。こちらは7月以来の高水準

フィラデルフィア連銀製造業指数、10月はマイナス9-予想マイナス7

10月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数はマイナス9に上昇した。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値はマイナス7だった。前月はマイナス13.5。

米中古住宅販売、2010年以来の低水準-価格は9月として過去最高
全米不動産業者協会(NAR)が発表した9月の中古住宅販売件数は減少し、2010年以来の低水準となった。消費者の住宅取得能力はさらに悪化した。

中古住宅販売在庫は113万戸に増加。しかし、9月としては1999年にデータ集計が始まって以来の最少となった。現在の販売ペースで見た場合、在庫消化に要する期間は3.4カ月。前月は3.3カ月だった。5カ月を下回ると在庫がタイトと見なされる。

▼債券市場

NY債券、長期債続落 10年債利回り4.99% 米金融引き締め長期化への警戒で
19日のニューヨーク債券市場で長期債相場は4日続落した。長期金利の指標となる表面利率3.875%の10年物国債利回りは前日比0.08%高い(価格は安い)4.99%で終えた。2007年7月以来の高水準となる。堅調な米経済を背景に米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが長期化するとの見方から債券に売りが出た。

10年債利回りが2年債利回りを下回る「逆イールド」は前日の0.31%から0.17%に縮小した。22年9月以来の小さい幅となった。

▼要人発言/アナリスト見通し

利回り5%の米国債は買い、「絶好の水準」-モルガン・スタンレー
在ボストンのマルチセクター債券チームの共同責任者を務めるビシャル・カンドゥジャ氏は、現在の環境では10年債利回りの5%突破は「デュレーションの観点からポートフォリオに長期債を組み入れる絶好の水準になる」と述べた。5%を突破すれば、同社のフェアバリュー水準から「オーバーシュートの範囲に入るだろう」と話した。

パウエル議長、FOMCは「慎重に進んでいる」-利上げの選択肢残す
「不確実性とリスク、そしてこれまで実施してきた措置を踏まえ、委員会は慎重に進んでいる」
「追加の政策引き締めの度合い、そして景気抑制的な政策を維持する期間については、入手するデータと変化する見通し、リスクバランスの全体像に基づいて判断する」
「金融環境の変化が根強く続けば、金融政策の道筋に影響を与え得る」
「経済成長の強靱さと労働需要の底堅さを示している最近のデータに、われわれは留意している」
「経済成長が継続的に潜在成長率を上回っている兆候、ないし労働市場の引き締まりがもはや緩和していない兆候が新たに見られた場合、インフレに関する一層の進展にリスクが生じる可能性があり、金融政策の追加引き締めが正当化され得る」
「政策が現在引き締め過ぎである兆候はないと考えている」
「インフレはなお高過ぎる。インフレがわれわれの目標に向けて持続的に低下しているという確信を得るには時間が必要で、数カ月の良好なデータはその始まりに過ぎない」
「有意な引き締めがなお控えている可能性はある」
地政学的な緊張は「極めて高い状態にある」としてその重要なリスクに言及。

【速報・解説】パウエルFRB議長 講演
「いまのところ失業率の大幅上昇を伴わずに、インフレ率が鈍化している。今週発表の小売売上高が示すように、経済成長は一貫して上振れしている」

「地政学的緊張が高まっており、世界の経済活動に重大なリスクとなっている。経済への影響を監視するが、影響は極めて不透明だ」

パウエルFRB議長、利上げ休止継続を示唆

シカゴ連銀総裁、米国はリセッションを回避できるとなお期待
グールズビー氏は19日、ウィスコンシン州マディソンで講演。「インフレ率を5ポイント余り低下させるためには、大幅なリセッションは避けられないという考え方が広く受け入れられている」と発言。「今のところ、そのようなリセッションは起こっていない。それは完全に回避できると私はまだ期待している」と述べた。

アトランタ連銀総裁、インフレ目標達成が当面の優先課題
米アトランタ連銀のボスティック総裁は19日、インフレ率を金融当局の目標である2%に戻すことが自身の優先課題だと述べた。また、長い景気拡大は特に経済・社会的に不利な立場にある労働者にとって有益だと強調した。

フィラデルフィア連銀総裁、金利据え置き選好重ねて表明-データ注視
米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は19日、たとえ経済成長率が予想より多少高めでも、政策金利を据え置くべきだとの見解を示した。
CFA協会向けの講演で同総裁は「金利を現状維持できる段階にある」とし、「今のところ経済・金融情勢は私のほぼ予想通りに推移しているが、最新データを注視している。データは私の基本予想より幾分、強めになっている」と語った。

ダラス連銀総裁、インフレ率が2%に向かっているとまだ確信せず
ニューヨーク大学のマネー・マーケターズ主催の討論会でローガン総裁は、インフレ率が米金融当局の目標である2%に向かって鈍化基調にあると「私はまだ確信していない」と述べた。
「景気抑制的な金融環境の維持が重要だ」
同総裁は今年の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で投票権を持つ

FRB議長、利上げ終結観測をけん制 次回は据え置き示唆

▼コラム

米利上げ、次回は見送りの公算 「終結」には温度差も
米長期金利16年ぶり5% 進んだ円安、カギは日米金利差

▼その他

現在の世界情勢、市場が織り込んでいる以上に危険-エリオット創業者
弱気派で知られる同氏は、大規模投資家によるプライベートクレジット進出にも懸念を表明。「資金の一部は、実際には破たんしている問題企業に流動性を提供するために使われている」と語った。

米MMF資産残高が急減、リーマン破綻の週以来の大幅な落ち込み
米国のマネー・マーケット・ファンド(MMF)の資産残高が2週連続で減少。企業が米政府への所得税の納税を行うため、資金を引き揚げた。一部の納税者に対し、納税期限が16日まで延期されていた。

関連:米MMF資産残高が過去最高更新-金融政策の先行き不透明感や金利高

サポートを頂くことがありましたら、主に投資資金としてありがたく頂戴しますm(_ _)m