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録音、ミックス関連

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自宅録音やミックス、リモートでの制作に関連しそうなトピックで人気のあるもの、特に重要だと思うものをマガジンに纏めました。
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#音楽制作

「明瞭な音=良い音」で本当にOKなのか

先日「邦楽は低音が足りないのか」というトピックで配信の中で、邦楽は低音が足りないのではなく明瞭さを追い求め過ぎているという考え方について解説しました。(14:24あたりから) この記事では「明瞭さ=良い音」という価値観の危うさについてもう少し掘り下げてみます。 料理で喩えると分かりやすい良い音を言葉で表現する時に頻繁に使われるのが 明瞭な 解像度の高い スピード感のある レスポンスの良い レンジが広い といった言い回しですが、これらは大体似たようなことを指して

今更人に聞きづらいディザリングの意義

前置き本記事は計測ではなく人間の認知を優先しています。 そもそもディザリングを何のためにするのかディザリングは限られた解像度でディテール(小さな音)をより豊かに表現をするために行うものです。ディザリングを行うことで、16bitのオーディオであっても16bit以上の表現力を得る事が出来ます。 何故表現力が足りないのかこの章では解像度が不足すると何故表現力が足りなくなるのかを説明します。 例えば0と1の2通りの数字で量を表現する装置のことを考えます。入力に0や1が来てくれれ

自宅録音のススメ

本記事では2020年4月に投稿した「どこまで出来れば『宅録可』なのか?」という記事のレベル0〜2を細かく説明します。 以前投稿したこちらのTips記事よりは初心者向けです。 どうすればいいかの丸覚えよりは何故そうする必要があるのかを重点的に解説します。 レベル0: 機材を買い揃えるここに関しては正直楽器屋さんに問い合わせるのが一番だと思います。何故なら、機材を買う人の音楽制作のスタイル、好み、予算等に応じて必要なものが全く異なるからです。記事の形で一方通行的に全ての答え

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アナログとデジタルの違い

アナログとデジタルの違いを把握出来ていると人生がちょっとだけ生きやすくなる気がするので、なるべくかたい用語を使わずに解説します。 ※注意: 本記事では量子化の説明の比重が大きいです。※注意2: 本記事では量子力学的な議論を行いません。(僕がわからないので) それぞれのメリット定義的なことを考え始めるとあまり楽しくないので、先にアナログとデジタルにそれぞれどんなメリットがあるか音楽家向けに書きます。 アナログのメリットは2つあって ・デジタルでの完璧な再現が出来ない音

Listentoで回線が安定しない時の対処

コロナ禍ですっかり市民権を得たAudiomoversのListentoですが、Source-Connectとは違い接続がP2Pのためインターネット回線が十分に強くない国や地域、施設でセッションを組んだ時に配信に問題が生じがちです。 接続が安定しない時のTipsは ・音質を下げる ・遅延を伸ばす ・ファイアウォールのポートを確認する(TCP80と443を開放) といった例が公式のFAQで挙げられていますが、それでも受信側でListentoに接続する人が増えれば増えるほど切

作曲とミックスでプロジェクトを分ける利点

DAWとバーチャルインストゥルメント(ソフト音源)で音楽を作っていると、作曲しているプロジェクト、セッションでそのままミックスをすることがよくあります。一方で、ミキシングエンジニアにデータを渡す場合は一般的に音源類は波形にレンダリングしてから渡すことになります。 ここで、自分でミックスする場合は制作セッションのままミックスすべきか一旦波形にしてからミックスすべきかという問題が生まれます。 本記事では双方の利点と問題点を列挙し、状況に応じたワークフローを選択出来るためのアイ

モデリングアンプで極力実機に近い音を録りたい人が知るべきこと

アンプシミュレーターで音作りが上手く行かない理由は次の2つに大分されます。 ・生のアナログアンプに触れていない ・マイクレコーディング、ミキシングに慣れていない いずれにも当てはまる人であっても上手に音を作れる人はいますがそれはそれとして、この2点を抑えておいた方が良い理由と具体的にどんな訓練が有効と思われるかをご説明します。 時間をかけて感覚を養っていくのはまだちょっとハードルが高いのでもう少し気軽にそこそこ良い感じの音を出したい方には下記の記事の方がオススメです。

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アンプシミュレーター初心者でも出音を手っ取り早く良い感じにするためのポイント

レコーディングスタジオで100Wのチューブアンプにマイクを立てて録音した所謂プロの現場の音を簡単に出すノウハウは一朝一夕で身につくものではありませんが、その音に何となく近い音を手っ取り早く楽しむ方法は無くはありません。 この記事ではシミュレーターに触り始めたばかりの人、久しぶりに触る人、たまにしか触らない人が100点満点中70点の音を目指す時のチェックポイントをいくつか紹介します。概要は目次をご覧ください。人によっては当たり前のことかもしれませんし、見落としていることかもし

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サンプルレートとビット深度についてのシンプルな説明

この記事は細かいことがよく分かっていない人がどんな環境設定にすれば人間が聴いた時に問題無いかに主眼を置いて、人間の聴覚とデジタル信号処理の観点からかなり説明を端折りつつ科学的に説明します。 はじめに: ビット深度に関するよくある誤解ビット深度が大きければ音が良いという誤解がありますが、正確には「ビット深度が高ければノイズが少ない」です。ビット深度でノイズの量は増減しますが、あくまでそれらはノイズなので元の信号に影響を及ぼしません。 DAWの設定DAWで曲を作り始める時は

ミックスを始める時に1トラック目の音量で悩まなくなる環境設定

ミックスをしていると気がついたらマスターがクリップしてた! リミッターの出番だ! みたいなシチュエーション、結構あるんじゃないかと思います。ミックスを始める時に1トラック目(例えばキックやベース)の音量を大きくし過ぎたり小さくし過ぎると最終的なミックスの音量に直接影響します。 また、多くの配信プラットフォームでラウドネスノーマライゼーションが導入され、またテレビのようにラウドネスの基準がルールとして定められているメディアもある昨今、ミキシングにおけるプロジェクト全体のレベル

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ミックスが上手く行かない理由とその対処(入門編)

ミックスに限らず、上達するために最も大事なのは嫌にならないことです。そのために、何となく良くなった気がするという体験を積み上げることと最初から情報の洪水に流されないことが重要だと考えます。 この記事はミキシングに興味を持った人が実際にやってみた時につまずくポイントを推測し、それぞれの対処法を提案する逆引き的なものです。 ミックス完成までにどんな工程があるのか知りたいミキシングの中で行うことは下記のいずれかに分類出来ます。 ・音量バランスと左右のパンニングを調節する ・楽

打ち込みストリングスに宅録でトップ1本重ねた時に馴染ませる裏技

まずは聴いてみる・裏技を使った場合 ・打ち込みだけの場合 ・普通にリバーブかけた場合 のそれぞれのケースについて、生のソロバイオリンを1st、2ndの打ち込みにレイヤーしたものを下記動画にまとめました。楽曲はAZさん(@AZ_arp124 )さんのMy Dearで、バイオリンはsetsatさん(@setsat666 )です。 1stと2ndに生のソロバイオリンが重なるだけで説得力が増したことが分かるかと思います。また参考資料としてソロバイオリン単体や、普通のリバーブの代わ

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音楽家の心を守るため今必要なシフト

何故シフトが必要なのかコロナ禍においても音楽制作を継続するために多くの音楽家が創意工夫を始めてから1年近くが経ち、一部の音楽家は緊急避難的に自宅での録音やリモートレコーディングに対応しました。しかし、レコーディングスタジオでしか生まれないものは多々あり、二度目の緊急事態宣言が発令された今も可能な限りの感染対策をしつつスタジオでのレコーディングは継続されています。 全ての音楽家はレコーディングによって素晴らしい音楽を生み出したいというモチベーションと、ウィルスの感染を拡大させ

レコーディングスタジオでの過ごし方

楽しく過ごす一番大切なのはスタジオでの時間を楽しくクリエイティブなものにすることです。これは作家だけでなく奏者、エンジニア等全員の協力が不可欠です。良い演奏は良いムードから生まれます。 時間を大切に次に大切なことは限られた時間を有意義に使うことだと思います。仮にスタジオを6時間ブッキングしたとしても、うまく使えば4時間くらい録音にあてられるかもしれませんし、うまく使えなかった場合2時間くらいしか録音にあてられないかもしれません。 現場で悩むこと/迷うことをとにかく減らす譜