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われ山に向かいて目をあげん

 故郷の秋田に家族で行ってきました。 コロナになってから3年以上特養ホームにいる父母には会えていませんでした。その間に認知症が進んだ母。歩けなくなってしまった父。今回は、家族が増える予定で、息子のフィアンセを紹介するためでした。施設からのおたよりには、感染予防のために面会のハードルが高くなっていると書かれていました。先週電話で面会を申し込んだとき、第七波の広がりで面会は受けてないと言われました。事情を説明し、施設長さんと相談してもらえるようにお願いしました。訪問する週になって連絡すると、ガラス越しに10分間だけなら、と許可が出て、4人で抗体検査の陰性がでたスティックを持って秋田に向かいました。 

 せっかくなので息子たちに少しはご当地の名物や景勝地を見せたいと思います。友人にランチのおいしいレストランを教えてもらい、昼食の予定にしました。 

 秋田には父の妹がいますが、そのお連れ合いの叔父は、血のつながりがないのに、いつも、「俺たちは家族だから困ったら必ず頼れ」と言ってくれます。今回はコロナだし、お互い無理しないで会わない事にしよう、と話していました。 ところが、前日に叔父から、お昼を一緒にしようと連絡がありました。予定組んでたけど、まあいいか、何時にどこにいけばいいですか?と聞くと、11時半に来て!といわれたのは、私たちが行こうと計画していたレストランでした。神さまはほんとにいたずら好きです。

 指定の場所へ行くと、個室にお祝いの席が予約されていました。老いた祖父母のかわりに孫のフィアンセを歓待してくれるなんて、なんと温かく、カッコいいんだろう!と胸が熱くなりました。 

 楽しい時を過ごして特養ホームに向かいました。ガラス越しの面会会場が作られていました。待っていると小さくなった父と母が車椅子で職員さんに連れてこられました。お互い涙、涙、Vサインでした。 父はおもむろに財布を出して1万円札を職員にわたしてやってくれと言いました。もう子どもじゃないのに小遣いくれるんかい!とつっこみたかったのですが、何か言っています。 ガラスに耳を近づけると、「帰ったら(フィアンセのUちゃん)にお花を買ってあげなさい」と言っています。もう歩けなくなった祖父の精一杯の歓迎でした。

  私は故郷にいたより、東京の方が倍長くなっています。故郷に私たちを愛してくれる人たちがいる。その気持ちに私は応えてきたんだろうか。こんな優しい人たちを、私は捨てて、東京で気ままに暮らしている。そんな思いがこみ上げて自己否定感が強くなりました。 

 翌日は少し観光しようとなり、車で三十分登った高原にある牧場に行って見ました。 鳥海山の麓に広がる牧草地にその牧場はありました。駐車場から回っていくとそこに石の碑が立てられていました。 立教大学教授でアメリカンフットボールを日本に紹介し、清里高原で酪農を行ったポールラッシュ牧師が日本の若者に残したメッセージ『Do your best and it must be first class.(最善を尽くし、かつ一流であれ)』という言葉が刻まれていました。 びっくりしました。 そのことばが刻まれていたのは実は裏側だったのです。 表に回ると、そこにはなんと詩篇121篇のみことばが刻まれていました。

  まったく知らなかったのですが、私たちが導かれたこの牧場は、土田さんというクリスチャンのかたの持ち物で、東京ドームが24入る土地でジャージー牛180頭を飼っているそうです。 鳥海山を望むこの土地を開墾し、『最善を尽くし、かつ一流であれ』と切磋琢磨されて事業を拡大されてきた土田さん。冬は日本海からの風が吹きつけマイナス20度にもなるというこの土地での歩みが楽な年月であろうはずがありません。うまくいかないとき、悩んだとき、鳥海山をみあげながら、詩篇121を何回も何十回も読まれたのだろう、と心がふるえました。

 私はいま更年期の最後の方で、かなりネガティブ思考になっています。自己肯定感を持てずくよくよ引きずることが多く体調もあまりよくありません。誰でもそんなときはあるでしょう。 人生の節目、新しい扉をあけるとき、向こう岸へわたろうとするとき、私たちは恐れにとらわれ、不安とたたかいます。 けれども、 私の助けば主からくる。天地をつくられたお方から このみことばを握って多くの信仰の先輩たちは自分の役割を果たしてきたのです。 

 優しい大切な人たちを残して故郷を出てきたことには、主のご計画と祝福があります。必ず守ってくださる主に全幅の信頼をおいて、私が置かれたところで忠実に、主に従っていけるようにと祈ることでした。 

 旧約聖書 詩篇 121  

私は山に向かって目を上げる。 私の助けは どこから来るのか。  

私の助けは主から来る。  天地を造られたお方から。  

主は あなたの足をよろけさせず  あなたを守る方は まどろむこともない。  

見よ イスラエルを守る方は  まどろむこともなく 眠ることもない。 

主はあなたを守る方。  主はあなたの右手をおおう陰。  

昼も 日があなたを打つことはなく  夜も 月があなたを打つことはない。 

主は すべてのわざわいからあなたを守り  あなたのたましいを守られる。

主はあなたを 行くにも帰るにも  今よりとこしえまでも守られる。

#故郷 #土田牧場 #詩篇121 #恵みをかぞえて


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