無人家【禍話リライト】

短い話。
九州北部のある街の、線路沿いから一つ入った細い道でのこと。
その道沿いには、立派な邸宅が一軒建っていたのだが、空き物件だった。
門には不動産屋の看板が下げられていて、そこにはデカデカと「空き物件」と書かれていた。
さらにその下には、お問い合わせ先としてその不動産屋の電話番号と担当者名が書かれていたのだという。

ところが、昨年のこと。
Pさんが久々にその道を自転車で通ると、以前まで不動産屋の看板がかけられていたところに、手書きの看板がかけられていた。
そこにはデカデカと、「ここは無人の家です」と書いてある。

わざわざ何でこんなこと書いてるんだ?
防犯的にも良くなさそうだし……

まるで、その道を通る人にアピールしているようで、気持ち悪さを覚えたのだという。

気になった彼は、近所に住んでいる知り合いにその看板のことを聞いてみた。
すると知り合いは、あくまで噂だけどと前置きして、こんな話を教えてくれた。

夜にその道を通る人が、近所の交番に血相を変えて飛び込んでくることがあるのだという。
その人曰く、どうやら家族間の喧嘩がヒートアップして、このままでは殺し合いになりそうだ、と言うのだ。
場所を聞いて行ってみるとその空き家でhs、もちろん何も起きていないし、誰もいない。
そんな通報が何件も飛び込んできて、警察も、あるいは近隣住民もほとほと困り果ててしまい、そういう看板を出すことになったらしい。

その看板がかけられてからは、家族喧嘩に関する通報はパタリとなくなった。

不思議なことに、その喧嘩は親子喧嘩だというのだが、その邸宅は成金の夫婦が建てたもので、彼らの間には子供はいなかったし、入居してすぐに奥さんは出て行ってしまったので、10年以上男は一人で住んでいたというのだ。
それ以前のその場所は資材置き場だったそうで、家族がその土地に暮らしていたことなどなかったらしい。

ではその家族は、一体どこからやってきたのだろうか。

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この記事は、「猟奇ユニットFEAR飯による禍々しい話を語るツイキャス」、「ザ・禍話 第16夜」の怪談をリライトしたものです。原作は以下のリンク先をご参照ください。

ザ・禍話 第16夜
https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/626355023
(14:25頃〜)

※本記事に関して、本リライトの著者は一切の二次創作著作者としての著作権を放棄します。従いましていかなる形態での三次利用の際も、当リライトの著者への連絡や記事へのリンクなどは必要ありません。この記事中の怪談の著作権の一切はツイキャス「禍話」ならびに語り手の「かぁなっき」様に帰属しておりますので、使用にあたっては必ず「禍話簡易まとめwiki」等でルールをご確認ください。

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