かぞくの家【禍話リライト】

方角の悪い部屋がある家の話である。

10年ほど前、Kさんが大学生の頃のこと。
地方から出てきて、都会の大学に通うために一人暮らしを始めたKさんは、勉学にサークルにバイトと、いろいろな活動に一生懸命取り組み、色々な人と知り合って充実した日々を送っていたのだという。
そんなわけで、1年目はがむしゃらに過ごしていたKさんだが、2年生になって若干生活にも余裕が出始めた。
生来面倒見がいいたちだったので、新入生たちの姉貴分として、なにくれとなく世話を焼いていたのだそうだ。

そんな折、女の子同士ということで、特に仲良くなった後輩に、Mがいた。
Mはサークルの後輩だったのだが、実家から通っているという話だった。
親が厳しいのか、集まりがあっても7時くらいには帰ってしまっていたので、最初はそのことが印象に残っていたらしい。
もっともその時は、門限があるんだろうな、と考えただけで、特に気に留めていたわけでもなかったのだが。

ある時。
Mと部室で二人きりになることがあった。
授業の関係で、他に人のいない部室でダラダラ過ごしていた時に、Mが急にこんなことを言い始めた。

「お父さんが最近変なんですよね」

その時、たまたま部室で流しっぱなしにしていたテレビでドキュメンタリーの再放送をやっており、そこで家族不和にまつわる話をやっていた。
それを見ながら、誰にいうともなしに、そう言い出したのだ。
しかし、面倒見が良く耳ざといKさんは、その一言を聞き逃さなかった。

「何々?暴力でもあるの?それなら然るべきところに……」

前のめりでそう言い出すと、Mは慌てて手を振って否定する。

「そういうのじゃないんですけど、お父さんが方角とか方位とかに凝り出して」
「風水とか?」
「風水かなと最初は思ってたんですが、よくわからないんですよね。漢字ではあるんですけど」
「じゃあ新興宗教的なやつなのかな?」
「んー……私の家は2階建てで、1階の奥の部屋が悪いものが溜まりやすい部屋だとか言い出したんです、お父さん。『ここで頑張らなきゃいけない、一家の主人は』って言い出して、2ヶ月くらい前からそこで寝起きしてるんです」
「あ、ずいぶん最近の話なんだ。前からそういうタイプのお父さんなの?」
「いいえ。最近急に言い出しました」
「そうなんだ。でも、そういうのやだよね。風水とかならまだしも、よくわからない新興宗教とかだったら」
「そうですよね」
「ま、何かあったら相談してくれたらいいよ。学生課とか、行きにくかったら一緒に行くし」
「ありがとうございます」

その時はそれだけで終わったそうだ。


それから一週間後。

「先輩、いいですか」

Mから部室で声をかけられて、Kさんはすぐにピンときた。

ああ、こないだの話だな。

Mの問いかけに即答する。

「いいよ。どうしたの?」
「お父さん、一階の奥で寝てるんですけど、夕ご飯食べたらすぐにその部屋行っちゃうんですよね」
「へえ、早いね」
「その部屋、テレビもないんですよ。で、その部屋に何も持ち込まずにすぐ寝ちゃうんですけど……変ですよ、お父さん」
「どういうところが?」
「私、2階で寝てるんですけど、昨日喉が渇いちゃって、夜中に下に降りたんです。お母さんはお父さんと違う部屋に寝てるんで、お父さんまたあの部屋に寝てるのかなって思ってたんです。奥の部屋からお父さんのいびきが聞こえてきたんで、ちゃんと寝てるんだなって思ってました。そう思って台所に行ったら、食卓にお父さんがいるんですよ!」
「はあ?」
「うちには他に男性いないんですけど、お父さんのパジャマ着た、お父さんとそっくり同じ背格好の男性がいるんですよ。後ろ姿なんですけど、食卓に座って、カップを持って、何か飲んでるんです。……電気もつけずに、真っ暗な中で。で、うえ〜と思って、慌てて階段の下まで戻ったところで、何とか気持ちを落ち着けて、合理的に考えようとしたんです。え、でも、あれ?お母さんもああいういびきかくのかな?とかって。そう思って、奥の部屋に行って、扉をスッと開けたら、お父さんが寝てるんです。で、向かいにあるお母さんの寝室の扉を開けたら、お母さんが寝てて。そこでまた混乱しちゃって、じゃあ、台所の人は、泥棒?そう思って振り返ったら。……台所から体を半分だけ出して、お父さんがこっちみてるんです。ええ、間違いなくお父さんでした。ああいう時って、驚きすぎて逆に声が出ないもんなんですね。そうしたら、そのお父さんがこんなことを言ったんです。

『お前はいい子だから、それ以上踏み込んだりしないだろう?』

って。そのまま2階に逃げていって、部屋で朝までガタガタ震えてたんです。もう、ゾッとしちゃって。夢なのかもしれないけど……やっぱり良くないですよね?」

KさんはMの話を聞いて、圧倒された。
そして、Mのことが心配になったという。
話を100パーセント信じたわけではない。
お父さんが変なことをし始めたのは事実なのだろう。
それにすっかり参ってしまっているんじゃないか。
精神的なストレスが、そんな幻覚を見せているんじゃないか。
そう思ったのだ。
それに加えて、話を聞くにつれて、ある思いがKさんの中に芽生えた。

ひょっとすると、Mの家は、お父さんとお母さんの仲が良くないんじゃないか?

だとすると父親の奇行も、Mのストレスも、説明がつくかもしれない。
そう思ったそうだ。

話を聞き終わったKさんは、Mからの声にならないヘルプを受け取り、こう言った。

「じゃあ今度さ、私、泊まりに行くからさ」
「すいません、お願いします」

その後、メッセージでやり取りをした結果、Kさんは土曜日の夜に、Mの家に泊まることになったそうだ。
土曜日の授業が終わって、バスに乗って二人、Mの家に向かう。
その道すがら、Kさんは気になっていたことを聞いてみた。

「そういえばお母さんって、お父さんが変なこと言い出して、今まで寝てなかった部屋で寝るとか言ってること、どう思ってんの?」
「うーん……」

少し考えた後、Mはためらいがちに口を開いた。

「お父さん、婿養子なんですよね。それでお父さんはずっとお母さんに頭が上がらなくて。いっつもガミガミ言われてて、耐えてる感じがあって。だから、方角がなんとかってのは、お父さんなりの自己主張なのかもしれません。でも、それに対してもお母さんは冷淡なんですよね。あっそ、みたいな。冷たいもんですよ」

Kさんは予想が当たっていることを確信しつつ、同時に憂鬱な気分にもなった。

これから、そんな空気の家に行くのか……

どう見積もっても、愉快な滞在になりそうには思われない。
暗澹たる気持ちになったそうだ。

Mの家に着いたのは、夕方ごろだった。
しかし、秋が深まった季節だったので、外はかなり暗くなっていた。
にもかかわらずMの家は門灯もついておらず、屋内ももちろん真っ暗である。

あれ、今、家に誰もいないのかな?

そう思っていた。
Mが家の鍵を開けて、中に入ると。

お父さんがいた。

明かりをつけてない食堂に、ポツンと一人座っていたのだ。

部屋の中はかなり暗い。

しかし、予想に反してお父さんは気さくな様子でKさんに話しかけてきた。

「ああどうも。いつも娘がお世話になってます。聞いてますよ?しっかりした先輩だって、いつも娘が自慢してきます」

いえいえ、とKさんは謙遜する。
部屋が真っ暗な以外は、ごく普通のお父さんだった。
本日はお世話になります、とKさんが挨拶する間にも、Mはパチパチとあちこちの明かりをつけて回る。
そして2階のMの部屋に行って、荷物を置いて、一息つこうとすると、Mが口を開いた。

「今日は私がご飯当番なんで」

ご飯当番?

その言葉にちょっとした違和感を覚えたが、「じゃあ、手伝うよ」と答えて腰を上げる。

あれ?お母さん働いてて、ご飯作れないのかな?

そう思いながらも、台所で夕飯を一緒に作っていたという。
しかしどうにも気にはなるので、聞いてみたそうだ。

「あのさ、お母さんは?」
「お母さん、風邪ひいてるんですよ」
「ああ、そういうことか」

そんなことを話していたら、奥からマスクをした中年女性が出てきて、「ああ、どうもすいません」とKさんに挨拶してきた。

「2、3日前から風邪でねえ」
「それは良くないですね。休んでいてください」
「お母さん、後でおじや持って行くから」

そんな、ごく普通の会話の様子を見ていると、特に変なところは見受けられない。
お母さんは挨拶を済ませると、部屋に戻っていった。

夜は、お父さんを含めて三人でテレビを見ながら夕飯を食べることになった。
その時も、ごく普通の様子だった。

これは、私が来てるから、普通の家族を演じてるのかもな。
その可能性もあるよな。

そう思っていたのだが。

9時くらいに、お父さんがこちらに向かって「そろそろなんとかの時間だから」と言った。
残念ながら、「なんとか」の部分は聞き取れなかったという。
日本語らしからぬ奇妙な響きの単語だった。

「じゃあ、ね」

お父さんはそう言って、一番奥の部屋に引っ込んだそうだ。
お父さんが部屋に入るのを見届けて、KさんはMに尋ねる。

「なんとかの時間って?」
「それが、私も聞き取れなくて……」

Mもそのことについては知らないようだった。
こうなると、下にいても仕方がない。
2階のMの部屋に行って、やることもないので、少し喋った後、寝てしまったのだそうだ。


夜中。

「先輩、先輩」

Mに揺り起こされた。

「……え?」
「変な音しません?」
「ええ?!」

Kさんは驚いた。
人の家に来て、そんなにぐっすり寝れるはずがないのに、ものすごく熟睡していたのか、全く音に気づかなかった。
しかし、起きてみるとなぜこの音で目を覚まさないのかというほど凄まじい音が、家の中に反響している。
強いて言えば、1階で引っ越し作業をしているような音だったそうだ。

ガタガタゴトゴト

ここまでの音であれば、普通は起きるはずだ。

時計を見ると、2時である。

「え?すごい音してるけど……」
「ですよね」
「5、6人くらいいないと出せない音だよね。こんな音、よくしてたの?」
「いえ、初めてです」
「……どうしよう」

耳を澄ますと、2階でも音がする。
ただ、音の質は若干異なっていて、よく聞いてみると、一階は大きな荷物を動かしているような音なのだが、二階の物音は何かをカッターで切ったり、ガムテープをビーッと伸ばして切っているような音だった。

「え、何これ?気持ち悪ぅ!」
「ど、どうしよう……先輩、どうしよう?」

どうしよう。
これは明らかに大人数がこの家にいる音だ。
だが、警察を呼ぶのもおかしい気がする。
1階には両親もいるのだ。
考えた末、KさんはMにこう言った。

「あのさ、私、ちょっと開けるからさ。殴れそうなものない?」

Mが部屋の中を探して、棒状のものを持ってくる。

「じゃあ、私構えてるから、M開けて」

緊張の面持ちで頷いたMが、ガーっと扉を開ける。

すると。

何もない。

誰もいない。

2階の音も、ピタッと消えた。
だが、下からは相変わらず音が聞こえてくる。

「あのさ、下に灯りがついてたら、漏れてくるよね?」

廊下の先、階段のあたりにも、階下から漏れてくる光はない。
真っ暗だった。

泥棒だとしても、なんの明かりもなく盗みを働くのだろうか。
一人二人が出せる音ではないのだ。

「……おかしいよね」
「どうしよう……」
「じゃあ、私、下りてみるから」
「危ないですよ」
「でも、確認しないといけないから。私降りてみるよ」
「でも先輩、それは」
「これじゃ警察に言えないじゃん。私、行ってみるから」

そんな押し問答をしていたら、1階からもスッと音が消えた。

「え?」
「音、消えた?」

緊張しつつ、二人とも1分くらいじっとしていたのだが、やはり下からは何も音がしない。
Kさんがあらためて口を開く。

「私、下に行ってみるから。なんか懐中電灯ない?」

Mは部屋をガサゴソと漁って、懐中電灯を持ってきた。

「これ、明かり強いやつです」
「ありがとう。こっそり降りてみるから」

そう言ってKさんは、足音を立てないように慎重に階段を下りていった。
今思えば、普通に明かりをつければ良かったのだが、その時は、賊でもいたらどうしようという考えで頭がパンパンだったのだ。
階段を下りて、一部屋一部屋を慎重に確認する。

食卓や玄関には、誰もいない。
トイレにも風呂場にも、誰もいない。
そもそも人の気配もない。

……あれ?
でも、すごい音してたけどなぁ。

そこでくるっと振り向いて、奥の方を見てみることにした。
お父さんが引っ込んだ部屋が左側。
右側がお母さんの寝室だと聞いていた。

一応、確認しようか。

最初に、お母さんの部屋の扉をそっと開けた。

真っ暗な部屋の中で、お母さんはどうやら寝ているようだ。
規則正しい寝息が聞こえてくる。
お母さんは普通に寝ている。

さっきあんな音がしたのに、起きてないんだ……

釈然としない気持ちになりつつも、自分たちが聞いた音は確実に聞こえてきていた、と確信する。

二人とも揃って聞いてて、幻聴ってことはないしな……気持ち悪いな。

そう思っていると、ふっとお母さんの寝息が止まった。

え?

最初は驚いたが、すぐに、まあ、そういうこともあるか……と思い直す。
扉を閉めると、気がついたらお父さんのいびきの音も聞こえなくなっていた。

訝しく思いつつ、お父さんの寝ている部屋をそっと開けてみると、あれ、と思った。

布団が敷いてある。

それも、三つ。

中に人がいるようで、布団が盛り上がっている。

え?

懐中電灯をつけて、顔を照らす。

その家の親子三人が、川の字に寝ていた。

最初Kさんは、自分の気が狂ったのかと思った。

お父さん。
マスクをしているお母さん。
二階にいるはずのM。

その三人が、川の字になって布団で寝ているのだ。

嘘。
嘘?!

Kさんは驚愕し、思わずこんな言葉を漏らした。

「なんで?」

その瞬間、三人が同時にぱっと目を開けて、Kさんを見た。
驚いたKさんは、その場に懐中電灯を落としてしまい、腰を抜かしてしまった。
何とか階段の上り口まで這って行って、もう少しで玄関に到達するというその瞬間。

「どうしたんですか?」

Mが階段の上から声をかけてきた。

「え、あんたが寝て」

そう言いながら上を見る。


そこにいたのは、Mではなかった。


年齢的には同じくらいだが、背格好も髪型も違う女が、階段に腰掛けていたのだ。

女は、

「もうなんのためなのかわかんないよねえ〜」

そう言いながら、手を叩いて笑っている。

Kさんが、うわ!と叫んだその瞬間。

その家の中のあちこちの引き戸が、バンバンバンと開く音がして、そこで気を失った。

翌日、目を覚ますと、2階のMの部屋の布団の中だった。
Mはいない。

何これ?!
怖い怖い……
夢?
どういうこと!?

混乱しつつも、腰に打撲したような強い痛みを覚える。

……あの時のだ。
じゃあ、あれは本当にあったこと?

恐る恐る1階に降りると、なにやら慌ただしい雰囲気が漂っている。
食卓にお父さんとMがいて、何か準備をしているのだ。
二人は外に出かけるような格好をしている。

「……どうしたの?」

Kさんが声をかけると、Mが振り返る。

「ああ、先輩、すいませんね。病院に入院していたお母さんが危篤状態になったから、病院に行かなきゃいけなくなったんですよ」

真顔でそんなことを言いだした。

「へ?」
「すいませんね、せっかく来てもらったのに……」
「え?まってまって、おかしいよ」
「なんですか?」
「昨日お母さんいたじゃん?!風邪ひいて、マスクしてたじゃん!!」

Kさんがそういうと
Mとお父さんは、ふっと肩の力が抜けたような感じになって、顔を見合わせる。
そして。

「ねえ、先輩ってちゃんと話聞いてないでしょ」

そう言って二人でクックック、と笑い始めたのだ。
その様子があまりに異様で、Kさんはゾッとした。

「すいません、先輩。朝ごはんご用意できなくなってしまって。でも、早く行かなきゃいけなくて」
「そ、そうだよね。お母さんが危篤だもんね?」
「はい、長患いで」
「それ、急がなきゃね。私も顔を洗って出るから」

Kさんは洗面所に行って顔を洗う。
洗いながらも頭の中にはクエスチョンマークが駆け巡る。

でも、昨日。
やばいのをみる前にお母さんの姿を見てるよね、私……
あの部屋にお母さんいたよね。

そう思ったKさんは、顔を洗った後、こっそり奥に向かった。
流石に奥のお父さんの部屋は見たくなかったので、お母さんの部屋をそっと開けてみる。

中は、物置だった。
それもかなり狭い。

え、昨日は広かったよ?

確かに、六畳間程度の広さはあったはず……そう思いながら足元を見たKさんは再び驚愕した。

ええ?!

最初は敷物かと思っていたが、違った。

ダンボールで作った等身大の女性の人形が、床に無造作に置かれているのだ。
表面に下手くそなイラストが書いてあるので、女性の人形だということはわかる。
ただ本当に雑なもので、適当に切ってガムテープで貼ったような代物だった。

扉を閉めて、その場で立ち尽くしたまま気持ちを落ち着けていると。

「先輩、何してるんですか?」

廊下にMとお父さんが出てきて、こちらを見ている。

「あえ?!あ、帰る帰る!じゃあ、帰るから、大学で会おうね!」

Kさんがそう言いながら、階段の下にある荷物を拾い上げると、お父さんが「私たち急ぎますんでね」と言って歩き始めた。

玄関に、ではなく、家の奥に向かって。
そして二人は、一番奥の左側の部屋に入って行って、ドアを閉めた。

えええ?!
急ぐって、外じゃなくって??
ええ?!

そう思っていたら、その部屋の中から、二人しかいないはずなのに、明らかに四、五人以上の含み笑いのようなものが聞こえてきた。

やばいやばい!!

荷物をひったくるように掴むと、スニーカーをつっかけるようにしてKさんは外に出る。
すると、昨日はすでに暗かったので見えなかったが、庭は草が生い茂っていて荒れ果てていた。

ええええ!!?

完全にパニックに陥ったKさんが敷地の外に飛び出ると。
犬を散歩しているお爺さんが、家の目の前にいた。
お爺さんは驚いた様子で、Kさんに声をかけてくる。

「あんた。この家の人達の知り合いなの?!大丈夫なの?ここの人たち」
「し、知りません!!」

そう言って走ってバス停に向かったそうだ。
周辺からもそう思われてるんだ、ということを確認して、あらためてゾッとしたという。

帰宅した後も悪寒が取れなかったKさんは、どうしたらいいかわからないので、見よう見まねで塩やお酒を使って体を清めたそうだ。
それが奏功したのか、悪寒は消え去った。

結局それから、Mは一度も大学には来なかった。


今でもその時のことはKさんのトラウマになっている。

「あれ、最初から嘘だったんですかね?それとも彼女は、途中からやられちゃったんですかね……」

Kさんは、そんな誰にも答えのわからないだろう問いを抱えて、生き続けている。

——————————————————-
この記事は、「猟奇ユニットFEAR飯による禍々しい話を語るツイキャス」、「ザ・禍話 第15夜」の怪談をリライトしたものです。原作は以下のリンク先をご参照ください。

ザ・禍話 第15夜
https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/623468680
(50:58頃〜)

※本記事に関して、本リライトの著者は一切の二次創作著作者としての著作権を放棄します。従いましていかなる形態での三次利用の際も、当リライトの著者への連絡や記事へのリンクなどは必要ありません。この記事中の怪談の著作権の一切はツイキャス「禍話」ならびに語り手の「かぁなっき」様に帰属しておりますので、使用にあたっては必ず「禍話簡易まとめwiki」等でルールをご確認ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?