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日本酒居酒屋には「とりあえず生(なま)」が足りてないという話

さすがに「自粛疲れ」なんて言葉も聞かれるようになりました。
在宅時間が長く続いておられる方も多いのではないでしょうか?
私もそうです。早く大手を振って外を歩きたいですね。
そして居酒屋で美味しいお酒を飲みたい!

お酒のご紹介です。

而今(じこん)

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三重県名張市にあります木屋正酒造。
創業は1818年、代々の銘柄は「高砂」「鷹一正宗」であります。
現蔵元である大西唯克氏が立ち上げた銘柄が「而今」。
今や押しも押されぬトップブランドとなりました。

飲んでみましょう。

上立ち香はうっすらメロン様の香り。
口に含むと舌先にはガス、舌サイドから酸。追随して瓜のような青みがかった香り、うっすらと甘みが感じられてきます。
ピリッとしたガスと青みのある果実香。含み香はメロン。スッと一本通ったシャープな中間。
喉を通ると渋みを置いてふわっと切れます。余韻は比較的長めで、辛みを伴っています。

而今を初めて飲んだのは平成18年度でしたが、その頃とはまるで違う酒質。
明らかに食中酒にシフトしましたが、フレーバーには過去の余韻が残っています。
個人的には、いまの口当たりが良く最初の1杯にもなれるし、ずっと飲み続けることもできるバランスはとても好きですね。

裏ラベルを記載しておきます。

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純米吟醸
原材料:米(国産)米麹(国産米)
原料米:山田錦(100%)
精米歩合:50%
アルコール分:16%
製造年月:2020.04

購入は大阪のかどや酒店です。

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「どんな感じのがお好みですか?」
「今日はどんな感じのからいきますか?」

居酒屋でお酒を選ぶとき、店員さんにこう訊かれたら、スラスラと答えられる人はどれくらいいるでしょう?
この質問をする居酒屋は、間違いなく何かのお酒にこだわっている専門店です。日本酒なら日本酒専門店。ワインならワイン専門店。

お酒の回転が速いのでメニューを作ってなかったりします。
店員さんしかメニューを把握してないから、お客さんにどういうタイプのお酒を出せばよいのかを探るため、前述のような質問をするんですね。

私は「どんな感じのがお好みですか?」と訊かれてもまともに答えられません。

ずっと飲み続けている日本酒に限って書けば、
「しっとり果実香があって、甘さ控えめだけど辛口までいかないやつ。後を引かない余韻の短いのが好みかな~」
なんて言えますが、他の酒類になるともうダメ。
自分がどんなのが好きか言語化したことないし、そもそも自分の好みなんて把握してないんです。

だから全然守備範囲じゃない〇〇バーとかに行くときに、メニューがあるのかどうかは結構大切だったりします。メニューがあれば、とりあえずそこから頼むことはできるわけです。
でもメニューが無く、「好みのタイプを店員にお知らせください」なんて書いてると、敷居が上がってしまう。

そしてきっと、ふだん日本酒に親しんでいない人から見た日本酒専門店も、同じような敷居の高さを感じているんじゃないかなと思います。
ふだん飲まない人にとっては、メニューに書いてあるのはただの漢字の羅列(日本酒や焼酎なら当たり前ですが)なわけで、それぞれどんな味なのかもわからない。

私はよく知らない人とコミュニケーションとるのも苦手なのです。だから「自分が何が飲みたいのか言語化できない」「メニュー見てもよくわからない」「そもそも他人と話すのニガテ」となれば、自分がそうだから、ハードルはうなぎのぼりだろうな、と思うのです。

ところで、ビールってすごい飲み物ですよね。
日本独自の文化と思いますが、「とりあえず生!」と頼む人のなんと多いことか。あの慣習って、メニュー見る必要ない自分の好みを顧みる必要ないコミュニケーションも最小で済むんです。

そして生ビールが来たら、それを飲みながら次はどうしようかをじっくり考えられます。ビールをひとくち飲むことで、自分の体調(今日は飲める日なのか、それとも遠慮しといたほうが良いのか)もなんとなくわかります。

結婚式のウェルカムドリンクも素晴らしいと思います。
選択肢を最小にして3種類くらいから選べますよね。そしてそれを飲み終わったら、次に飲むものを相対評価の中で選べるんです。
「これ飲んだから次はこれにしよう」と。

日本酒専門店にも、「とりあえず××!」と頼める何かや、着席するなり出てくるお通し的なお酒があれば(メニューの値段よりちょっと安いともっと良いよね)、そしてそれが慣習化されれば、ぐっとハードルが下がる気がするんですけど、いかがでしょうか?

(ちなみに、執筆時点で、駆け付け一杯をサービスしている日本酒居酒屋さんももちろんあります)

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今回ご紹介した而今は、これから日本酒を知るのにうってつけの銘柄だと思います。
居酒屋で見かけたら、ぜひ一杯目に飲んでいただきたいと思います。

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