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日本酒の口内調味について思うこと

あっという間に2021年の夏は過ぎ、涼しい風が心地よい時節となりました。
日本酒もひやおろしが棚に並んで、新酒の到来を今か今かと待つようなタイミングです。
この時期、実はとても好きだったりします。

お酒のご紹介です。

立山(たてやま)

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富山県砺波市にあります立山酒造株式会社。
創業は1830年。加賀百万石と言われた地域で新明屋仙助が幕府から酒造の認可を受けたのが始まりとのこと。
以後、北陸地域最大の蔵元として広く名を知られています。

飲んでみましょう。

上立ち香はほんのりと漂う米の香り。奥に少しセメダイン。
口に含めばスッと入ってくるやわらかいテクスチャ。
中間からは酸が感じられます。芳香の広がりが艶を帯びてなまめかしいですね。
スッとたなびくように切れ、爽快感が残ります。

甘くもなく、辛くもなく、ただ水ではなく、でもアルコール感は強くない。
ただ傍にあることが当たり前になりそうなお酒です。

ラベル情報を記載しておきます。

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本醸立山
アルコール分:15~16度
原材料名:米(国産)、米麹(国産米)、醸造アルコール
精米歩合:麹米63%、掛米63%

購入先は東京都調布市にありますリカー&フーズやまぐち。

価格は 1,800mL で 2,240円でした。

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日本酒を肴と一緒に楽しむとき、私は基本的に口内調味を行いません。
日本酒に限らないのですが、食べ物とお酒の口内調味が基本的に苦手と言えます。

とくにお浸しなどの出汁の味を楽しむもの、繊細な味付けのもの、サラダなどで柑橘系のドレッシングでさっぱり食べられるものなんかは、日本酒を飲むときの肴として口内調味に向かないと思っています。
そして合わせるお酒の側も、ボリュームのある味の濃いお酒や華やかな香りのあるお酒は、口内調味に向かないと感じます。

口内調味で楽しみたい組み合わせも無いわけではありません。
例えば烏賊の塩辛、酒盗、蕎麦味噌、鮭とばといったようなもの。
合わせるお酒はすっきりしているタイプのもの。
これはお燗だとなお良い。

でもこの行為も最初は抵抗がありました。
塩辛い肴だから、余韻も力強い。
その力強さを和らげたくて、お酒で中和するために口内調味してみたのがきっかけだったと思います。

日本人ですから、白飯を食べるときはおかずを一緒に頬張ります。
味付けの濃いおかずと白飯を交互に口に入れて同時に咀嚼するのは大好きです。
ただこれも薄味のおかずだとそれ単体で食べる傾向があります。

江戸時代の記録では当時の人は1日に5~6合の白飯を食べていたとされています。
これは現代人と比べるとはるかに多い量。
これだけの白飯を食べるということは、おかずは少量でも味付けの濃いものが添えられていたと解釈すべきでしょう。
そもそも口内調味とは味付けしていない白飯を食べるために、味付けの濃いおかずを合わせて食べることが原点と言える。

江戸時代と比較して現代は様々な洋食文化が輸入されましたし、健康志向もあって、塩分濃度の高いおかずは減少しました。
その結果味付けをしていない白飯を食べる必要性が減少、ひいては口内調味を日常的に行う習慣が薄れていったと考えます。

このことは、日本酒の味わいにも間接的に変化をもたらしたと思います。
白飯と同じように塩辛い酒肴に合わせて口内調味される日本酒だけではなく、ワインのように、洋食や控えめな味付けの料理に風味や余韻で合わせる日本酒が登場した。

現在の日本酒は単体で楽しめるものも多い。
酸味が強かったり、甘みが強かったり、香りがフルーティだったり、おつまみがなくてもそのまま飲めてしまうお酒も多いです。
こういう日本酒は基本的には口内調味に向かない、と感じます。

たぶん私が口内調味が苦手なのは、私が最初に美味しいと感じた日本酒が口内調味に向かないタイプだったからでしょう。
日ごろ傍にあった日本酒が、口内調味に向くタイプであり、日常的にそれを楽しまれている土壌があればこそ、日本酒の口内調味への抵抗は減るのだろうと思います。

ちなみに、向かない向かないと書いていますが、その既成概念を打ち破ってくれる飲食店もあったりします。

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富山県の文化・風土を受けて醸される立山というお酒は、口におかずを入れて間髪入れず後追いさせるご飯に非常によく似ていると感じます。
日本酒の口内調味を何の抵抗もなく受け入れる、すぐそばにあるのが当たり前になるお酒。

常温から少し温めるくらいの温度帯が最高に美味しいお酒です。
塩辛、漬物、なめ味噌あたりとぜひ。

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