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地酒とはなにか

相変わらずじめじめとした日々が続いています。
まだ梅雨明けとは呼べない状況ですね。
とはいえ気温も上昇し、みんな大好き夏!の到来を予感させます。
もう7月も終わりなんですけどね。

お酒のご紹介です。

根知男山(ねちおとこやま)

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新潟県糸魚川市にあります合名会社渡辺酒造店。
創業1868年、現在の代表は6代目となる渡辺吉樹氏です。
銘柄は「根知男山」とヴィンテージ商品となる Nechi です。

さっそく飲んでみましょう。

上立ち香は熟したぶどうのような甘い香り。
口に含むととろみのある質感とともに茫洋とした旨みが広がります。
甘みが少し顔を覗かせる中間。酸も少し感じられます。鼻に抜ける香りは少しアルコール感を含みます。
後口は渋味を置いて、たなびくように引いていきます。余韻は比較的長め。

予想以上にドライな酒質です。
しかし非常にクリアな味わいで丁寧な造りを感じます。

ラベル情報を記載しておきます。

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原材料名:米・米こうじ
新潟県産五百万石100%使用
アルコール分:16度
製造年月:2019.03
蔵出年月:2020.04

購入は AUN COLLECTION。

価格は720mlで2,620円(税込)でした。

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日本酒は米から造られますが、そのほとんどは私たちが普段食べている食米を原料とはしていません。
日本酒の原料となる米は酒造好適米と呼ばれる酒造りに適した品種が使われています。

代表的な酒米である山田錦は約6割を兵庫県で、雄町は約9割を岡山県で生産するなど、各酒米にはその栽培に適した地域があります。

山田錦は酒米の王と呼ばれるなど、醸造適性が非常に高く、鑑評会出品酒もほぼ山田錦でないと入賞しない時期があり、そのため酒蔵は自蔵の県産米ではなく他県から酒米を購入し醸造するスタイルが長く続いていました。

他県で栽培された米で作った酒は、果たして地酒と呼べるのか?
私の認識では、そのような問いに答えようとする蔵がここ10年ほどで増えたように思います。
つまり、ドメーヌを蔵是として掲げている蔵が出てきたのです。

ドメーヌとはひとことで言えば、自社で原料米の栽培をし、その収穫した米のみを使って醸造する蔵のこと。

これは簡単なようでいて実はとても難しい。
酒造りをする人間が、その原料まで栽培しなければならないのです。
そこには大変な労力と、稲作のための広大な敷地が必要です。

単純に安定した品質のお酒を効率よく(コストをかけずに)造るのであれば、こんなことをする必要は全くありません。
それでもドメーヌを目指し実践するのは、「それは地酒ですか?」と問われた際に誇りをもって答えたいからだと思います。

地酒とは、その土地の水とその土地に合った原料米を自社栽培したものを使用して醸造し、その土地の文化に根差した個性をあらわした酒
その土地に合った原料米も定義が難しいのですが、やはりその土地の奨励品種が穏当な答えになるでしょう。
そのようにして造られた酒であれば、付加価値的に唯一無二の個性を持つことになりますし、私は究極の地酒とはそういうものだと考えています。

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根知男山を醸す合名会社渡辺酒造店は、2003年から原料米の自社栽培を開始します。
しかしそのきっかけはドメーヌを意識したものではありません。

もともと原料米は地元農家と契約して生産を行っていたのですが、生産者の高齢化に伴ってそもそもの米作りに危機感を感じたのがきっかけでした。
初年度は1枚の田んぼからスタートした米作りも、現在は15ヘクタールに及ぶ広大な自社田へと成長しました。

生産米は新潟県の奨励品種である五百万石と越淡麗。
さらに今回ご紹介の Nechi では収穫年(ヴィンテージ)と酒米格付けの違いによる商品化を行い、文字通りのドメーヌスタイルを確立しています。
私は究極の地酒のひとつだと思っています。

その土地を想い、その土地で造られたお酒を飲む。
嬉しいことやお祝いごとがあったときに一人そっと飲む Nechi はとても贅沢な味でした。

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