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「会社を辞めたい」という後輩になんと声をかけるべきなのか。


1.聴くの本質

前の部署で結果が出ず、3ヶ月前に異動をしてきた部下。これまでとは全く異なる仕事を始めてまだ3ヶ月の部下に「私はこの仕事には向いていないと思うのですが、大丈夫でしょうか?」と聞かれた時、あなたが上司だったら、どう答えるだろう。

会社勤めのサラリーマンなら誰しも経験がありそうな一場面。
本書はこのような問いから始まる。
ちなみにこれらにはあらかじめ選択肢が用意されている

  1. たった3ヶ月でそんなことを言っていないで、とりあえず頑張ってみなさい

  2. 最初はみんなそんなものだから、大丈夫ですよ。一緒に頑張りましょう

  3. 私も最初はそうでした。最初は向いてないって思ってました

  4. 向いていないだなんて、なぜそんなことを思うのですか

どうだろう。どれも妥当のように思えるし、どれも間違いではないだろう。
ちなみに私は2だった。
そして、答え(本書で提唱する「聴く」)は

5.この仕事に向いていない。大丈夫だろうか。そんなふうに思っているのですね

である。
(あえて正解の選択肢を隠したことはさておき)
実はこのエピソードに本書のエッセンス、および現代のコミュニケーションの本質が集約されていると言える。

2.「話を聴きたい」という姿勢にある落とし穴

「話を聞きたい」はスキルである。
「聞き上手になりたい」は自身の理想である。
「相手に信用されてうまく相手の悩みや感情を引き出したい」
これはあなたの願望である。
本書では相手の話を「聴く」ということが、そのような概念を解放する作業というところからスタートする。
そういった自身のエゴに気付かずして、本来的な「聴く」には辿り着けないのである。
1~4を選んだ時、あなたは彼(後輩)の話を「聞く」というイベントを通して、自身がどうみられたいか、どうありたいか、自分がどうすればもっとも価値のある人間として成立しうるかを、無意識に探していたことになる。

3.スキルから体験へ

話を聞くという行為のゴールは「話す」側の課題解決ではない。
もちろん「聞く」側の自己満足でもない。
もっとその先の高次元の"共有"にあるという。
それは一種の体験であり、両者の共同作業に近い。
その世界を垣間見ることができた時、きっと私たちはより自然に、同僚や後輩や恋人、そして家族との対話に新たな意味を見出せる、そんな可能性を示してくれる一冊である。

概要

ジャンル:コミュニケーション
読みやすさ:★★★★☆
さらっと全体を読んだときの目安時間:2.9時間
本屋で立ち読みする時のおすすめ章:
第1章
- 聞くと聴くの違い
 "聞くは同意するor反対する、聴くは寄り添う"

第2章 ちゃんと聴くを分解する
- 自分の肯定的意図を聴くことが、多様性を認め合うことにつながる
"肯定的意図という信念は、対立・葛藤を乗り越えるための土台となる"
"自分の中にいる複数の肯定的意図を扱えるようになると、聴く技術は格段に高まる"


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