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特別支援学級?通常学級?自閉っ子の小学生ライフ

2018年度に学研発行・実践障害児教育にて10回に渡り連載させていただいたコラムを、編集長に許可をいただきこちらへ掲載いたします。

ADHDうっかり元教師 雨野千晴のいつもココロは雨のち晴れ
<第6回 2018年10月号掲載>
【支援級?普通級?自閉っ子の小学生ライフ】


支援級?普通級?就学時の悩み


今年小学校に就学した、自閉症スペクトラムの息子ハルは、数字が大好きだ。誕生日にはおもちゃではなく、置時計をねだられて買った。幼稚園では廊下にある仕掛け時計の下が彼の定位置になっていた。エレベーターもお気に入り。数字が並んでついていて、「1階でございます」「2階でございます」と自動アナウンスが鳴り、ボタンも押せる。どこをとっても彼を魅了してやまないもの、それがエレベーターなのだ。


私には全くピンとこないのだが、彼がいかにそれらを愛しているかということは分かる。抱いて寝るのはぬいぐるみでなく時計だし、スーパーで姿が見えなくなったと思えば必ずエレベーターの前にいる。小学校の参観日で飾られていた絵には、エレベーターが描かれていた。


さて、彼の入学にあたって、通常学級在籍にするのか特別支援級在籍にするのか、多くの保護者の方が悩まれるように、我が家もいろいろ考えた。そして最終的に、特別支援級在籍で就学することを決めた。


学校生活では、交流学級(通常学級)の1年3組でまずは過ごしてみようということになった。入学式の翌日、1年3組の授業でランドセルをロッカーに片付ける練習をしたらしいのだが、彼のロッカーは特別支援学級にある。そこで「みんなと同じがいい」と本人から申し出があり、1年3組にランドセルをしまうようにする、と先生から連絡をいただいたのだった。


いつも我が道を行く彼が「みんなと同じがいい」と思ったということは、私にとって驚きだった。そして自分で先生に意思表示をしたということに、彼の成長を感じてなんだか胸が熱くなった。それと共に、支援級在籍の選択は本当に良かったのだろうか、と答えのない問いを自分に投げかける日々が続いた。


ハルくんって、おもしろいよね!

▲みかんの皮さえ時計になる。


始めの数週間をほとんど交流学級で過ごしたハルだったが、担任から算数と国語は特別支援学級で学ぶ方が良いのではないかと提案があり、そういう方向でやっていくことになった。交流級の入口で「緊張します。」と言って中に入れない日も出てきたということだった。


そんな中、大学病院の診察のために、学校を早退する日があった。迎えに行くと、授業中にふらりと立とうとするハルの姿があった。そして、そこをさりげなく椅子に誘導している子どもがいた。隣の席のA君だった。私の顔をみると「こんにちは」とあいさつをしてくれた。

授業が終わると、子ども達がわらわらとそばに来て

「誰のお母さん!?」
「ハルくんの!?」
「ハルくんって時計が好きなんだよ!」
「エレベーターが好きなんだよ!」
「おもしろいよねー」
「みんなの誕生日覚えてるんだよ!」

と、私が熟知している情報を皆得意げに口々と教えてくれた。そしてAくんは「僕は同じ幼稚園だから。」と、任せて、といった雰囲気で私に声をかけてくれたのだった。


私はひそかに息子のことをこう思っていた。「この子はいじめの対象になるだろうな」と。彼の話し方は特徴的だ。ものすごくハイトーンな声で、ですます調が基本なのである。さらに、みんなが戦隊ものに夢中になっているときに、好きなものはエレベーターだ。どこをとってもからかいの対象になるとしか思えなかった。

しかし、私自身は彼のことをどう感じているかと言えば、そういうユニークな部分に対して、時にいらいらしながらも、おもしろみを感じている。そういう風変わりなところを、率直に言うと好ましく感じているのだ。「そうくるか!おもしろいなぁ。」といった具合だ。


だから、私と同じような感覚で子ども達が「おもしろいよねー」と言ってくれたことに私は感激したのだった。もちろん、困るなぁと思っていることもあるだろうし、彼がからかわれることもあるのだろうと思うが、「子ども達からいじめの対象になる」と頭から決めつけていたのは、子ども達でも誰でもない、私自身だったのだと思った。


ブレイクスルーが必要なのは…


先日、三重県で障害のある方のアート活動を支援する生活介護施設「希望の園」を運営されている村林真哉さんと、5代目歌のおにいさんであり、NPO法人ハイテンション代表、かしわ哲さんのお話を伺う機会があった。

村林さんは、支援者として大切な姿勢は「面白いな」という視点を持つことであるとおっしゃっていた。また、それを世の中に周知していくこと、まずその人がもって生まれたものや、感じたり考えたりしていることを、とても貴重な物・尊重すべきものとして認めるところから始まるのだ、というかしわさんの言葉が心に残った。


これは障害のある方に限った話ではなく、AIが台頭していく現代において、「普通」を目指す時代は終わりを告げるのだろう。これからは、それぞれが持ち前のユニークさを生かして、その中で他者とどう折り合いをつけていくかが大切な気がしている。子ども達は柔軟だ。変革に向けて、ブレイクスルーが必要なのは、私達大人なのかもしれない。

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■希望の園HP FBページではアーティストたちのユニークな作品の数々を見ることができます。

■ロックンロール型福祉事業所 NPO法人ハイテンションHP 

あつぎごちゃまぜフェス2020 24時間配信では、放課後等デイサービス利用の子ども達のバンド、スロバラSUNZがライブ配信に挑戦してくれました!
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スタッフの戸田さんにインタビューさせていただきました


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