実例で学ぶコンピテンシー面接(人生深掘り)の本質
1.はじめに
コンピテンシー面接というものを皆さんはご存知でしょうか?
いわゆる幼少期から今に至るまで、どのような考えと行動を取っていたか質問して、そこから会社の求める基準と照らし合わせていくやり方です。
この面接はそもそも攻略法が存在してはいけません。
何故なら攻略する事は求職者にとっても会社にとっても良い事では無いからです。お互いのマッチングを著しく損ねる結果になるでしょう。
今からお伝えする内容は、あくまでもこのような仕組みで評価されているという事実を伝えるだけであり、自分の人生を振り返るものとして使ってください。
2.エゴグラム
結論から述べると、コンピテンシー面接は根本的にエゴグラムと良く似た判断基準を持ち合わせています。もちろん、そっくりそのままという訳ではありませんが、よく似ています。
ではエゴグラムとはなんでしょう?心理テストで実際に試した人もいるかもしれませんが、一応Wikipediaで説明されている定義を確認しておきます。
『エゴグラム (Egograms) とは、エリック・バーン (Eric Berne) の交流分析における自我状態をもとに、弟子であるジョン・M・デュセイ (John M. Dusay) が考案した性格診断法で、人の心を5つに分類し、その5つの自我状態が放出する心的エネルギーの高さをグラフにしたもののことである。』
要するに人間の心を5つに分けて判断しているよという事です。ではその5つの基準とは?
CP(critical parent)→厳しい親
+面:厳格、父性、リーダーシップ
−面:責任感のあまり、他人にも同じ厳しさを求める
NP(Nurturing Parent)→優しい親
+面:寛容、優しさ、世話好き
−面:他人に甘過ぎる
A(Adult)→大人
+面:論理的、知的、合理的
−面:論理的な部分がかえって枷になることも
FC(Free Child)→自由な子供
+面:自由奔放、明るさ、ユーモア
−面:自己中心的
AC(Adapted Child)→従順な子供
+面:従順的、協調性
−面:流されやすい、遠慮がち
この5つがあなたの性格や行動特性を決める5つの基準です。しかし、これだけ並べてもよく分からないので実例を使いましょう。
その前に補足知識を付け加えておきます。
基本的に部活が中高で一貫していない事についてはCP(厳格さ)のマイナスと捉えられます。また、大抵の子どもは親の言う通りに学校を受験するので、確固たる意志や目的があって入った事を示さない限りは自動的にAC(従順な子ども)がプラスされます。
AC(従順な子ども)が高い人はNP(優しさ)も高い傾向にあります。しかし、CP(厳格さ)が必ずしもNP(優しさ)と反比例する訳ではありません。
人と違う経験を積極的に行う場合はFCが高くなるでしょう。
注意が必要なのは、NP(優しさ)は人生をなぞっただけでは判断しにくい事です。例えばボランティア経験や、介護施設でのバイト経験などがある場合は別ですが、部活で後輩に優しくしたかどうかは本人の主観によりますし、NPは常に一緒に行動している誰かのフィードバックが無い限り図る事が難しいでしょう。
3.実例
モデルケースを設定します。
鳥太郎くん(21)
小学校:内気な性格、クラブ活動は囲碁クラブ、低学年の時の習い事は特になし。休み時間は本を読むこともあれば友達とドッジボールをすることもある。親が入れた進学塾に2年間通い、偏差値60以上の有名中学に合格。
中学校:卓球部に入部。勉強運動共に問題は無いが、特に目立った功績もあげず。友達とは普通の関係性を築いている。中高一貫校のため受験はしない。
高校:科学部に入部。やや勉強に偏りがちな学生生活を送る。ここでも目立った成果は特に無い。高校2年生から進学塾に通わせられ、無事第一志望の明慶大学の文系学部に合格する。(早慶クラスと仮定してください)
大学:テニスサークルに入る(実質飲みサー)。大学3年の夏まで単位は落とさず普通に遊んでいる。バイトはカフェ。大学3年秋から就職活動を開始
友達と遊ぶ時の鳥太郎くん:誘われて参加する。遊ぶ時は普通に遊ぶ。喧嘩はした事がない
趣味:特になし
資格:TOEIC780点
まあ良くいるタイプだと思います。では彼の人生をエゴグラムに当てはめていきましょう。
小学校時代は、内気な性格や受動的な態度が多いのでAC(従順な子ども)が強めです。有名中学に入れたのでA(論理性)も強いとみなします。
中学校時代も、問題は起こさずにエスカレーターでそのまま高校に上がったのでACが強いです。
高校時代には、部活を変えちゃいましたし、進路も科学部とはまた違う様です。これはCP(厳格さ)が少し弱いという方に取る事が出来ます。大学は問題なく合格しているのでA(論理性)は引き続き高いままです。
大学時代はサークルがまだ高校の部活とは違います。大学のサークルは少し多めにみて評価をつけないでおきましょう。
簡単に人生を分析するとAC(従順な子ども)とA(論理性)が高い一方で、CP(厳格な親)が多少弱い印象を受けます。
例えば鳥太郎くんが大手金融機関を受けた時、どう評価されるのでしょうか?
大手金融機関の求める性質を以下に仮定します。
求める資質:CP(厳格さ)、A(論理性)
鳥太郎くんの資質は以下の通りです。
持っている資質:A(論理性)、AC(従順な子ども)
持たない資質:CP(厳格さ)
金融機関に全く当てはまらないとは言い切れませんが、確実に合致するとも言えない微妙な性格です。AC(従順な子ども)については入ってから求められる事は間違いありませんが、従順なだけでは厳しい局面でついてこれない可能性があります。CP(厳格さ)を証明するエピソードが無いと入ってからきついでしょう。
他の業界でもややCPの低さが不安になります。公務員が向いているかもしれません。科学部などで大会優勝など成果を出したり、大学時代にもう少し人とは違う経験をしていれば、色々な方向転換も+として捉えられてFC(自由な子ども)を高くした結果、クリエイティブな業界を目指す事も不可能では無かったからもしれません。
ではもう1人例を挙げてみましょう。
亀太郎くん(21)
小学校:問題児でしょっちゅう人に迷惑をかける。パワーが有り余っているので、親に少年野球チームに入れられる。野球の楽しさにハマり、野球漬けの毎日。学校の成績は悪い
中学校:地元の私立に入学して野球を続ける。勉強の成績は相変わらず良くない。地元の私立高校に進む。
高校:野球部を続けるがニ年生の時に怪我をして引退。そこから自分には何も持つものが無いと気づいて猛勉強を開始。苦労の末、私学トップの明慶大学には劣るが、偏差値58の日立大学に合格する。(とりあえずMARCHクラスと仮定してください)
大学:草野球団体に所属。バイトは居酒屋。単位は落としながらも卒業には支障のない程度。大学3年冬から就職活動を開始。
友達と遊ぶ時の亀太郎くん:自分から友達を誘う。旅行の企画を立てる。
趣味:野球。ヤクルトを応援している。
資格:TOEIC550点、簿記2級
こちらもエゴグラムに当てはめていきます。
小学校時代は、やんちゃな性格でFC(自由な子ども)が強めです。頭はあまり良くないようでA(論理性)が低めです。
中学校時代は、野球をどうやら続けているようです。これはCP(厳格さ)が高い事の表れかもしれません。A(論理性)が低いのはそのままのようです。
高校時代には、残念ながら野球をやむ終えず引退しましたが、原因が怪我なので判断はしません。ここから苦手な勉強を頑張り見事MARCHクラスに合格した事からA(論理性)のマイナスは帳消しになりました。
大学時代は再び草野球に手を出しています。CP(厳格さ)は相変わらず高いようです。単位を落としている事は簿記2級の取得と相殺するのでA(論理性)に変化は無しです。
簡単に人生を分析するとCP(厳格さ)が強く、若干A(論理性)の気質があり、幼い頃はFC(自由な子ども)が強かったようです。
亀太郎くんが大手金融機関を受けた時、どう評価されるのでしょうか?
大手金融機関の求める性質を以下に仮定します。
求める資質:CP(厳格さ)、A(論理性)
亀太郎くんの資質は以下の通りです。
持っている資質:CP(厳格さ)
少し持っている資質:A(論理性)
亀太郎くんの場合はCP(厳格さ)には問題が無い一方で、鳥太郎くんと比べればまだまだA(論理性)が足りないので、大手金融機関の求める水準にギリギリ達しているかどうかが合否を分けるかもしれません。
面接の答え次第で地頭の良さや業界に関する深い理解を証明する事が出来れば合格する可能性は鳥太郎くんよりは高いでしょう。
4.終わりに
実際のコンピテンシー面接はそもそも、面接をする前にWEBテストで行った性格診断と照らし合わせながら判断するので、より詳細に判断されます。よって、ここまで簡易的に判断出来るものではありませんし、質問はより深いレベルで聞かれるでしょう。
しかし、繰り返すように根本的な見ているポイントとしては上のエゴグラムが当てはまります。
答え方次第で、エゴグラムを操作することは可能です。しかしそれをした所で、入ってから企業とのマッチングが合わず辛い思いをするのは自分です。
どちらかといえばエゴグラムによる考えは自分が志望する業界に当てはめて考えて、応募するかどうか決める判断基準にした方が良いかもしれません。
例えば金融ならCP(厳格さ)とA(論理性)が高い人、広告やベンチャーならFC(自由な子ども)が高い人、公務員ならAC(従順な子ども)やNP(優しさ)が高い人、などといった具合にです。
最後に自分が参考にした記事も載せるので、良かったらそちらも見てください。
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