舌を出して歩く
夜、人通りの少ない道を歩いていた。
普段ならスマホをチラチラ見たり、音楽やラジオを聴きながら歩くが今日は充電がない。
いざという時のための残り数パーセントの充電だ。大切にしなければいけない。
となれば暗闇の中を何もせずに歩くのはとても暇だ。
誰もいないのだから鼻歌でも歌えばいいのに、変に恥ずかしくて昔から鼻歌を歌えない。
そうこう考えてたどり着いた暇つぶしがひとつ浮かんだ。
犬のように舌を出しながら歩くことだ。
人に見られないよう視界や音に注意しながら舌を出す。
人の気配を感じたらサッと舌をしまい、通り過ぎたらまた出す。
冬の冷たくて乾燥している空気が直に下につたわり、寒さでピリピリしている錯覚に陥る。
なんだか悪いことはしていないのに、小学生のころにひろにバレないようにこそこそ土管に隠れていたりしたことを思い出した。
舌を少しだけ出してみたり、大きく口を開けてみたりして遊ぶ。
普段外で舌なんて出さないから、少し新鮮な気分だった。
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