見出し画像

SEOUL 100K 2023 の参加報告。大会運営が酷かった。が、コースの景色とスタッフのホスピタリティには助けられた。

2023年10月21日〜22日に韓国ソウルで開催されたトレイルランニングレース SEOUL 100K に参加してきた。韓国のレースは、2018年の TransJeju 以来。そして、私自身の初めてのソウル訪問でもある。

そして、私にとっても4年半ぶりの 100km レースではあったものの、リザルトを先に伝えておくと、U3(33km)を一度は出発したものの途中で引き換えして、戦略的撤退(DNF)を決断することになった。理由は右膝の故障。コロナ禍を挟んでのウルトラディスタンスではあったが、結果は残念に終わったものの、チャレンジしてよかったと個人的には感じている。

SEOUL 100K の大会に関する評価ですが、ロケーションの良さ、コース、山からの景色、そしてボランティアスタッフのホスピタリティは良かったものの、その良さを完全に打ち消してしまうぐらい大会運営が大きな課題があった。具体的な内容は後述するが、ランナーのレース継続に係る大きなミスがあり、流石に「海外レースあるある」として見過ごせるものではなかった。


SEOUL 100K の概要

SEOUL 100kコースマップ
出典:http://www.seoul100k.com/eng/race/course_100k?gubun=course_100k


SEOUL 100K 高低表
出典:http://www.seoul100k.com/eng/race/course_100k?gubun=course_100k


SEOUL 100K は、ソウル市の北部にある「北漢山(プカンサン)国立公園」をメインコースとした大会で、距離は100km、50km、10kmの3種目。主催者は、東亜日報という韓国の新聞社で、メインスポンサーは THE NORTH FACE。本大会は2019年から実施されているものの、コロナ禍でしばらくお休みしていて、昨年2022年から再開している。

スタート/ゴール地点は、ソウル広場というところで、ソウル市内のど真ん中。隣にソウル市役所、そして徒歩圏内にソウル最大の繁華街である明洞(ミョンドン)がある。ソウル広場までは、仁川国際空港から KAL リムジンバスで約1時間20分で市庁(シチョン)まで直通でアクセス可能で乗換なしで行ける。

KAL リムジンバス(仁川国際空港)

スタート・ゴール地点がソウルの中心部であるため、宿のキャパシティに関しては全然問題なし。しかし、ソウルの物価は高く、特にソウル広場周辺の宿は非常に高い。私は、運良く、年季は入っているものの、比較的安くて、そして日本語の通じるオーナーが経営している Hotel Daewoo Inn を予約。会場から徒歩5分と好立地で、飲食店やコンビニも多数ある。設備の老朽化は歪めないが、清潔感のあるホテルだった。

また、衣類などのクリーニングサービスもやっていて、フロントにお願いすれば 10,000ウォン(約1,100円)で数時間程度でやってくれます。きれいに畳んだ状態で、返ってくるのでパッキングが楽でした。

SEOUL 100K を走ってみて・・・

大会前日。会場未設営、そしてビブがない

日本人向けの受付は、スタート・ゴール地点であるソウル広場にて行われる。しかし、会場に行ってみるとこの有様。

どうも、直前まで別のイベントでソウル広場が使用されていた模様で、上の写真はその撤去中の写真。はじめは、行く会場を間違えたのか、もしくは日時を間違えたのかと焦りましたよ。

会場には日本人向けのエントリー代行および現地サポートをやっていただける GONTEX さんの担当者が居たのだが、そこで更に衝撃的な事実が・・・「日本人ランナーのゼッケンがまだ届いてなくて、19時半以降でないと届かないらしい・・・」とのこと。ほんで、レース会場の設置状況や、19時半にも本当にゼッケンが届くのか怪しいかったので、結局受付は翌朝レース当日の1時間前から行うことになった。

ちなみに、レース会場は翌朝にはちゃんと設営が完了していた。徹夜で設営したものだと思われる。ブラックな労働環境だな・・・

レース当日の朝(午前4時頃)

季節外れの寒さ。そして突然の雨。

ソウルは日本で言えば新潟県ぐらいの緯度になるので、大阪や東京からすると少し寒い位置にある。しかしながら、現地についてみるとそれ以上に寒さを感じた。

大会期間中だけソウル市民にとっても季節外れの寒さだったそうで、これは宿の店主に聞いてみてもそうだった。大会当日の最低気温は4〜5度で、高くても14度とかです。日本から持ってきた防寒着だけでは寒かったので、急遽明洞のユニクロでフリースを買う羽目になった。

実際走ってみると、朝5時スタートということもあって本当に冬のトレイルレースを走っている感覚だった。また昼間も、山の上に行くとそれなりに気温も下がるし、レース中の大半はレインウェアジャケットを羽織って走っていた。

あと、最初のエイド(13km)を出て、トレイルに入ったところで急に大雨が降ってきた。気温が寒い上に、雨が降ってこられると下手すると低体温症に成りかねない。天気予報も雨が降るとはなってなかったので、「山は天気が変わりやすい」というのを改めて実感した。

コースは岩稜を使ったもので、岩場が多い。

昨年 SEOUL 100K を走られた方の情報を確認する限り、「全体的に岩の上を走らされる」だったので、事前に把握はしていたものの、やっぱり本当に結構な割合で岩の上を走っている感じ。

元々、北漢山(プカンサン)国立公園周辺のトレイルは岩肌むき出しなところが多い上に、万里の長城のような石で固めた岩や石壁があっちこっちあって、膝や足に負担のかかるコースだった。

岩場の多いコースに不慣れであったのと、レース前半の関門がかなり厳しくそれなりに走らないと関門で引っかかる計算だったので、足に負担を掛けながらも走りまくった。U1とU2 に到着したのは関門の約10分前。結構ギリギリだったので、エイドの滞在時間も数分程度で、100kmのレースでここまでドタバタさせられたのは正直初めて。そういう事もあって、あまりスマホやアクションカムでの撮影が出来ておりません!

U2(24.5km)〜U3(33km)までは比較的にアップダウンが少なく、走れるコースだったのでペースを上げて走ったきったところ、U3には関門55分前に到着。しかし、到着する前から右膝に違和感が出てきて、レース続行できるか不安だった。

戦略撤退を決断したの正解だった

U3 で提供された韓国式おかゆ

U3のエイドでは、装備チェックがあり。とりあえず私はすべて提示されたものはあったので難なくパス(詳細は後述します)

ここでは少し関門に余裕があったので、上の写真の韓国式おかゆをいただく。少し温かったが、スタート以降まともに食べた食事って感じでホッとした。韓国のレースのエイドは、たいていチョコパイが提供される。

ここで少し長めの休憩を取りつつ、右膝の違和感に対処するためにストレッチをして、不安に感じつつ15分ほど休憩して U3 エイドを出る。そして、しばらくは緩やかなロードの上りを移動することになるのだが、2kmぐらい進んだところで、急な岩場の登りが登場。

ここで、登り始めるとやはり右膝に痛みが出始めた。U3〜U4は、SEOUL 100K の中でも一番標高の高いところを移動することになり、かつ岩場も多いコースという情報でもあったので、流石にこれ以上走ったら膝が悪化してしまうだけでなく、途中で動けなくなって下山ができなくなるリスクも出てきた。

いろいろ悩んだが、ここは直感に従って戦略的撤退を決断。先に進むより折り返して U3 に戻ったほうがリスクが低いと判断。ということで、引き換えしてU3に戻る。U3に引き返す途中に、大会ボランティスタッフと遭遇して「膝が痛いので引き換えしてきた、U3に戻ってDNFしたい」と伝えると「すでにエイドは撤去し始めてる。ただスタッフはいるので連絡しておく」と回答。とりあえず、戻ってみると U3 のエイドは撤収済みで、スタッフが数名待っていた。

あとは、エイドのスタッフがスマホの翻訳アプリで「困っていることはありますか?」と質問されたので「どうやってスタート地点まで戻ればいいですか?」と答えて「送迎バスはないので、タクシーを呼びます」と回答。タクシーの手配もやっていただけたので助かった。その後は、タクシーがすぐに来て、1時間ぐらい乗車してスタート地点のソウル広場に戻る。料金は20,000ウォンと、乗った時間を考えると安い。

スタート地点に戻る(15:00ぐらい?)

ホテルに帰って、シャワーを浴びてしばらくホテルで仮眠を取っていたのだが、その後夕方になってから、歩き出すと膝の痛みがあり、歩くのが辛かった。やっぱり、あそこでの戦略的撤退の決断は正しかったと実感。あのまま U4 エイドまで進んでいたら、もしかすると下山が難しかったかもしれん。無事にお家に帰るまでがトレイルレースなので、やっぱり安全が一番だわ。

ソウル市内の夜景、岩山などなど景色は堪能

さすが約940万人都市だけあって、夜景がすごくきれいだった。朝5時スタートではあったものの、日の出が7時すぎなので、2時間ぐらいは夜間走行。

ソウル市内の夜景

コース上には、ところどころこういう韓国式の古い建物があり、韓国走ってるーて感じがした。

あとは、山頂付近からの景色。大阪よりも経度が高い位置にあるだけあって、山間部は紅葉になっていて、一足先に楽しめた。また、途中雨が降っていたおかげか、こういう少し雲がうっすらと雲海のようになっていて、すごく幽玄さを感じた。写真だとあまり伝わらないかもしれんが、実際の目で見てみるとええ景色やった。プライベートでレースとは関係なくまた行ってみたいと感じさせてくれる。

あとは、ところどころ岩が露出した感じの地形になっていて、チェジュ島の漢拏山もこれに近い感じだったような気がする。韓国の山って岩が多いのかな・・・

大会運営の問題

景色やボランティスタッフのホスピタリティは良かったんだが、それを打ち消すぐらい残念だったのが大会運営のクオリティ。トレイルランニングを初めて10年以上経過するが、ここまで酷いのは初めて。今まで個人的ワースト運営だった台湾の棲蘭100林道越野を超越する酷さだった。

私が体験したそして他のランナーから聞いた問題を列挙すると以下の通り。

  1. 前日にも関わらず会場が設営出来てなかった

  2. 日本人ランナーのビブが予定通り現地に届いていない

  3. 大会提供のGPXデータと実際走ったコースが一部異なっている

  4. 必携装備リストになかったものが U3 のエイドでチェックされた

  5. 一部のドロップバッグが中間地点のU5(55km)に届いていない

特に致命的なのが4と5。これ以外にも細かなところあるのだが、あげるとキリがないのでやめておく。

必携装備リストに無かったものが、U3エイドでチェックされた

必携装備リスト(GONTEX提供)

SEOUL 100K の必携装備リストは上記の通りではあったのだが、U3 では以下の物がチェックされた。

  • ロングスリーブシャツ

  • ロングパンツ

私は、寒いのが苦手なので、自己判断でたまたま上記2つの装備は携行したいたのだが、一緒に参加した私の友人がロングパンツを携行してなくて、ペナルティ対象になった。私もチェックされたときに、「ロングスリーブシャツとロングパンツってリストにあったっけ?」と思ったが、彼はスタッフに「They're NOT mandantory gears!」と異議申し立てをしていた。

ルール上は必携装備品がない場合、ペナルティ(+30分)か失格扱いになるのだが、現地のスタッフもその後の対応をよく分かってなくて本部判断になると回答。で、レースを継続してもいいのかどうか、友人は困惑していた。

ドロップバッグが一部のランナーの分が届いていない。

私は途中で DNF したので直接は経験はしていないのだが、一緒に走った友人が U5 に到着したが、ドロップバッグが無かったそうだ。彼以外にも日本人数名事例があった模様。韓国人やその他外国人にも同様の事例があったかどうかは不明。

このミスは致命的で、ランナーのレース計画を大きく左右するもので、場合によってはここで DNF を決断せざる負えないこともある。仮に私がこれに遭遇していた場合、間違いなく DNF になる。理由は、以下の通り。

  • ヘッドライトが能力不足

  • 追加の防寒着がない(このときの天候だと、ドロップバッグの中にある防寒着が必須)

  • レース後半の補給食・サプリメントがない

ヘッドライトに関しては、U5 で高級ヘッドライトにリプレイスする予定だった。どうみても、朝使ったライトだと夜通しバッテリーが持たず途中で電池切れになる。補給食に関しては最悪エイドからチョコパイなどを大量に持っていけばなんとかなるかもしれんが、ヘッドライトと防寒着はレース継続に関わる問題。たぶん、私のドロップバッグも配送されていないと思われる(友人と同じタイミングで預けたので)。

ちなみに、ドロップバッグの荷物はスタート地点にあったそうで、GONTEX のスタッフが次のエイド(U6)まで車で運んだそうだ。

これ以外にも、夜間でいろんなことが起こっていたそうだ。

レースを終えて

ひどい運営ではあったものの、今となってはいい思い出になってまった。こういう酷い経験をしておくことで、今後の人生の糧になる!

ただ、来年以降走るかといえば今のところは選択肢としてはないだろう。同じ韓国を走るのならやっぱり2週間前に開催されていた TansJeju by UTMB を選択することになるだろう。TransJeju の運営は香港の TransLantau by UTMB と同じオーガナイザーで運営実績も豊富。

ちなみに、SEOUL 100K は今年から運営体制が大きく変わったそうで、このグダグダ運営もそこから来ていると思われる。GONTEX の方曰く「昨年よりも、大会本部とのやり取りに苦労した」とのこと。

ただ、ボランティアスタッフはみんな親切だったのが救いだった。ドロップバッグは、10/22(日)0:00以降には受け取れる(たぶんずっとスタート地点にあったのかも)ので、朝7時半ごろに取りにいったあとに、いろいろお土産をいただく。

その中に、朝食券が入っていて、これを少し離れた焼肉屋(?)に持っていくと無料で食べられると教えてくれた。ただ、韓国語なんて全然読めないので、道を聞いたら地図アプリでここって教えてくれた(近くに7-11あるよとのこと)。

大会配布の朝食券

で、この食券で食べられるものを教えて聞いて頼んだのが、これ。

牛肉クッパ

牛肉クッパというのを牛骨スープの料理なのだが、韓国の人って朝からこんなヘビーなものを食べるの??と思いながら食べた。台湾の鹹豆漿(酸味のある豆乳スープ)のようにあっさりしたものは食べないのか・・・味はめっちゃ美味かったんやけど、朝からはこれはヘビーやった。夕食なら最高だった。流石に全部は食べれんかったわ(笑)

10/22(日)は丸一日空いたので、ソウル市内を観光

早めに DNF したので、日曜日は丸一日空いた。ということで、せっかくなのでソウル市内を観光してみた。

北村韓屋村

観光はノープランだったので、Google で調べて行った見たのが「北村韓屋村」というインスタ映えスポットへ。ただ、観光客多すぎで、個人的に微妙だった。本来は静かな街だったんだろうけど、観光公害(オーバーツーリズム)になってしまって、本来の良さが出てなかった。日本でも各地で発生している諸問題、韓国でも顕著になっているね。

ということで、あまり有名スポットを行くのをやめて、私が海外旅行に行くとよく行く美術館や公園をぶらぶらする旅に切り替え。

現代国立美術館

あと、ソウル市内に入るとよく鳴いている野鳥がこのカササギというやつ。日本では聞かない鳴き声なので追跡しておってみたら、この白黒した鳥が張本人。日本では九州の一部にしか生息してないそうで、韓国ではこれが国鳥らしい。カラスの仲間だそうです。最近野鳥にもハマってたりします。

ソウル市内でよく見かける野鳥「カササギ」

あとは、ソウル市内のど真ん中にはこういった小さな落ち着きのある川が流れている。清渓川(チョンゲチョン)という名前で、実は SEOUL 100K の最後はここを走るそうだ。大阪でいう道頓堀川みたいな立ち位置?

ソウル市民の憩いの場で、個人的には一番のお気に入りスポットになった。コサギやドバト、カササギなどの野鳥も多数居た。

清渓川

最後に、友人と明洞の焼肉屋でサムギョプサルをいただく。激ウマだった。やっぱり、韓国のレースは短めのレースを走って、夜はサムギョプサルを食べるのが一番楽めるというのが改めて実感した。ただ、明洞は物価が高く、二人で90,000ウォンぐらいした。たしかチェジュ島のときは、4人で行っても40,000ウォンぐらいだったような気がします

というわけで、4日間の健康的トレランとソウルの旅でした。ここまで読んでくれてありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?