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山で安全に楽しむために、出来る準備を考える

私がCXOとしてお手伝いしているYAMAPが、先日「みまもり機能」という無料で使える新機能をローンチしました。

このみまもり機能がどのように山での安全の向上に寄与できるか、またその他にも安全に山行をするために、私が普段山に赴く時にどのようなリスク対策をしているのかをご紹介してみたいと思います。

YAMAP みまもり機能

YAMAPのみまもり機能をかんたんにまとめると以下の2つの機能です。
1. 家族や友人に位置情報を共有する
2. YAMAPユーザー同士が位置情報を交換しあう事で精度が向上する

まず基本的に「みまもり機能」は登山をしている自分の位置情報と、その軌跡を家族や友人に共有する機能です。登山を開始すると登録済みのメールアドレスに登山開始の案内が送られ、一定間隔で最新の位置情報が確認する事が出来ます。家で待っている家族が逐一状況を確認する事が出来、安心に大きく寄与できると考えています。

また、万が一登山中に不慮の事故に遭い連絡が取れない場合、家族がいち早くそれに気づき、救助を要請する事が出来るようになります。


このみもり機能に加え、「こんにちは通信」という機能があります。これはBluetoothを利用し、YAMAPユーザー同士が位置情報の交換をおこなう技術です。


電波圏外で交換された位置情報は、交換した相手のいずれか電波を掴んだ方がまとめてYAMAPのクラウドに送信されるため、電波圏外であっても位置情報がアップデートされる可能性が高まります。

そしてこの仕組みはYAMAPを利用するユーザーが増えれば増えるほど、精度が高まり、登山者の安全が向上していく事を期待しています。

しかし、みまもり機能で全ての事故が防げるかというと、まだまだ登山を楽しむ方一人ひとりが意識しなければならないケースは数多くあります。

ここからは山行にはどういったリスクが潜んでいて、それらに対してどう対処が出来るのか、掘り下げてみます。


遭難者の実態

こちらは警察庁が毎年公表しているレポート「平成30年における山岳遭難の概況」からの抜粋です。

遭難全体の約4割は道迷いが原因となっており、その他は怪我や体調悪化などの原因が大部分である事が分かります。

それではこうした要因によって起きてしまう遭難事故を、私がどのように防ごうとしているかご紹介したいと思います。

1. スマホに登山アプリを入れる

遭難のレポートを読んでいても、大半が道迷いが原因となりリカバーしようとした結果、登山道ではない道を行こうとして滑落に繋がったりするケースを数多く見ます。

従来の登山では地図とコンパスを活用して現在地の確認を行う読図が主流で、現在でも読図を山の醍醐味とされている方も多いですが、読図のためのスキル習得が必要になります。

一方で、誰にでも活用しやすいのは、やはりYAMAPをはじめとしたスマホの登山アプリだと思います。

山域によってはキャリアの電波が届かない場所もありますが、GPSによる位置情報は可能なため、予め地図をダウンロードしておく事で、圏外でも地図を見ながら自分の現在地を確認する事が出来ます。

2. モバイルバッテリーを携行する

またスマホのバッテリーの消費について慎重な方も多いですが、iPhone Xなどの準最新機種であれば、日帰りの山行(8時間程度)でのバッテリー消費量は概ね50%以内です。また機内モードでもYAMAPは現在地の確認が出来るため、更にバッテリーをセーブする事が出来ます。

例え日帰りでバッテリーが50%程度の消費だったとしても、モバイルバッテリーの携行は最早必須だと思います。

私は日帰りの時はAnker PowerCore Slimを持ち歩いています。118gながら、iPhone XSを1.3回フル充電する事が出来ます。

こちらのモデルは既に廃番になっているようですが、より小型なバッテリーも数多くあるようなので、ぜひ山行のお供にして下さい。

3. スマホを2台持ち

スマホのアプリが万能である一方で、壊れたり無くしたりした際に一気に詰んでしまう危うさを孕んでいる事も事実です。

そこで私は山行の際は常にスマホは2台持ちで臨んでいます。2年か3年に一度スマホを買い換える方は、大体1台はスマホが自宅に余っているのではないでしょうか。

通信回線も音声無しのMVNOであれば月1000円前後と、非常に安く利用する事が出来ます。またそれぞれのスマホで異なるキャリアを選択しておくと、場所によってどちらか一方は電波が入る可能性が上がります。

4. 紙の地図を持ち歩く

ここまでスマホを推していても、やはり紙の地図は必須だと思います。プリントアウトしたものですが、コンパスと合わせて持ち歩いています。

地図はYAMAPの地図プリント機能で好きなエリアを選んで印刷する事ができます。ぜひご利用下さい。


行動不能状態に対する備え

さて、ここからは怪我・体調不良により行動不能になったり、滑落などの事故によるルートが外れて復帰不能な事態に陥ってしまったケースへの対応策になります。

山域で行動不能になってしまった場合、概ねこの様なフローチャートに従うのではないかと、まとめてみました。

行動不能になっているので、救助隊によるレスキューが必要になり、支援の要請にはA. 自分で連絡する or B. 誰かに連絡してもらう必要があります。

また救助を要請しても、時間帯、天候、場所の条件により救助がそれほど迅速に来てくれるとは限らず、長時間のサバイバルを余儀なくされる可能性があります。

救助が成功するためには以下の2つのパラメーターが重要になります。
・どれだけ長時間のサバイバルに耐えられるか
・どれだけ短時間で発見してもらうか

上図のフローチャートのうち太字で囲っている箇所がこれに該当します。これらのサバイバルの確率が高くなるための装備について、私が携行しているものをご紹介していきます。

5. ツェルト・防寒具

ツェルトは小型軽量なテントです。一人がギリギリ入れるくらいの空間で、ビバークと言って緊急の野営のための装備です。

急な雨や風を凌ぐ事が出来、これがあるだけで大幅に体力を温存する事が出来るでしょう。

また季節や山域によって内容が変わりますが、追加の防寒具としてダウンジャケット(場合によってダウンパンツ)は常に持ち歩いています。

6. ココヘリ

年間3650円で利用が可能な救助要請時の捜索用の発信機です。これを保持しておく事で最長16kmの距離から検知が可能で、ヘリコプターでの捜索時の発見に絶大な威力を発揮するでしょう。


7. GARMIN inReach Mini

GARMINのイリジウム通信機です。キャリア回線ではなく、衛星通信を使うので屋外であれば地球上のどこからでも通信が可能です。

YAMAPみまもり機能のように、家族や知人との位置情報の共有が出来、またテキストでのメッセージも送信する事が出来ます。(英数字のみ)

またSOSボタンを搭載していて、これを押すだけでGEOSのレスキューネットワークに救助依頼をする事が出来ます。

価格はデバイスが約37,000円と、プランに応じて月$15〜 利用する事が出来ます。

まとめ

どういうケースを想定して、対策として何を持っていく必要があるか戦略を立てるのも山行の醍醐味だと思います。

これから梅雨も明けて山シーズン本番が到来します。自分が行きたい山のレベルに応じて、自分の身を守るための準備をしっかりとして、楽しい時間を山で過ごしたいですね。

何はともあれ、YAMAPのみまもり機能をぜひご活用下さい。何しろ無料なのと、YAMAPユーザーが増えれば増えるほど、みんなが少しずつ安全になります。ぜひ日本の山の安全の向上に力を貸してください。


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