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一部【無料】公開中!介護事業所 開業1年以内に読んでおく本

電子書籍をリリースしました。タイトルは「介護事業所 開業1年以内に読んでおく本」です。

私が代表を務める社会保険労務士法人GOALと介護・障害福祉サービス業界専門のコンサルタントの合同会社NAGISA Planningとの共同執筆です。

これから介護事業を始めようと考えている方、介護事業所を開業したばかりの方にぜひ、読んでいただきたい内容になっています。

感想ツイートやコメントもいただきました

ご著者、Kindleで早速、拝読させて頂きました。分かりやすくて、一般のかたにもそして社労士や行政書士にも参考になる大変素晴らしい内容だと思います。ありがとうございます!レビュー5でAmazonにリプライさせて頂きました✨

はじめに これから魅力的なマーケット…でも成功確率は?

 事業を成功させる方法。そのような方法を知りたければ起業や開業に関する書籍を読めばいくらでも情報収集することはできるでしょう。その中でも一つ重要なことを挙げるとすれば、起業しようとしているマーケット(市場)が成長産業であるかどうかです。

 介護事業に関してはどうでしょうか。総務省統計局の公表によると日本の総人口(2021年9月15日現在推計)は、2020年の調査と比較して51万人減少しています。一方で、65歳以上の高齢者人口は、前年の3618万人から22万人増加し3640万人となり、この数値は過去最高です。総人口に占める高齢者割合の29.1%も同様に過去最高という結果でした。日本の経済全体で考えれば少子高齢化により労働力人口が不足することは、好ましいことではありませんが介護事業を一つのビジネスと考えたとき、見込み客(ここではあえて「見込み客」といいます)は増え、マーケットとしても拡大傾向にあるといえます。

 しかし、拡大傾向の魅力的なマーケットであってもすべての事業者が成功するわけではありません。それは介護事業においても同様です。東京商工リサーチが公表したデータによると、2020年の「老人福祉・介護事業」の休廃業・解散は、455件(前年比15.1%増)で2010年の調査開始以来、過去最高の数値だったとされています。廃業の主な理由としては、新型コロナウイルス感染症の影響があることはもちろん、人手不足や後継者不在などヒトに関する課題も原因の一つになっています。

 介護業界だけではなく日本全体のとして生産性の向上が課題として挙げられます。生産性向上は、慢性的な労働力不足を解決するためにも必要不可欠です。その中でも特に介護業界はヒトに依存する部分が大きい産業です。にもかかわらず、介護業界の人材不足は深刻で2025年度には約32万人、2040年度には約69万人が不足するとも言われています。

 このように成長するマーケットと言われながらも事業の成長を妨げるような要因もあり、全ての事業者が成功するとは言えません。特に人材の確保とご利用者の確保は、開業前から入念に準備をして戦略を考えて臨む必要があるでしょう。なにをするにも「ダンドリが○割」とか言われるように開業する前の準備が開業後の成功のカギを握っていると言っても過言ではありません。今、手に取っていただいている「開業1年以内に読んでおく本」は、開業前の準備段階から開業間もない経営者に向けて書いています。この本が少しでも早く、あなたの手に届き、開業後の1年を乗り切って順調なスタートができる手助けになることを願っています。

第1章 なぜ、介護事業所の成功率は低いのか?

・失敗要因①:経営者視点が足りないから、失敗する

 これまで多くの経営者、特に介護事業でこれから開業しようとしている人を見ていて感じることは、介護職という職業やご利用者への想いが強いということです。そして、ご利用者のためにもっと良い介護サービスを提供したい、あるいは、このような事業所をつくりたいという理想をしっかりと持っている人が多いと感じています。その想いが強いこと自体はとても素晴らしいことで、事業を運営していくためには必要不可欠なものであることに違いありません。

 一方で、事業として継続していくためには想いや理想だけではなく経営者としての視点も重要です。介護事業においては、介護サービスを必要としているご利用者を集めて介護報酬などの利益を得て運営していきます。一般的な会社組織の言葉に置き換えれば「集客」と「売り上げ」です。それまで、職員として事業所に勤めていたときは目の前のご利用者のために精一杯介護サービスを提供していれば良かったものが経営者になったらそれだけでは足りなくなります。人件費などのコストや法律の制約のことを考えるとやりたくてもできないことも出てくるでしょう。一人一人のご利用者と向き合うために自分の理想を思い描き、事業所を立ち上げようとしたにもかかわらず、経営者視点で考えると合理性や効率化を考えないといけない場面もあります。

 他の業界で既に経営者としての経験がある人がFCなどで介護業界に新たに参入してきたようなケースでは、介護事業も一つの事業として収益を求め売り上げを上げていく人もいます。そうではなく、介護業界で長く職員として勤めてきた人が独立開業をしたときに経営者視点が足りず事業が軌道に乗らない(乗るまでに時間がかかる)ことがあります。私個人としては、ビジネスとして他の業界から参入してきた人よりも介護業界で長く経験を積んだ人が何かしらの課題を感じ、その課題を解決するために立ち上げた事業所にうまくいってほしいと考えていますが、そのためには、職員としての意識の延長線上で経営を始めてしまうのではなく、経営者としての視点を持つことが何より大切です。

・失敗要因②:法律がわかっていないから、失敗する

 経営者視点を持つことの大切さと職員(労働者)としての意識の延長線上で経営を始めてしまうことのリスクについては既にお伝えした通りです。経営者と労働者、どちらがえらいということではなく役割や立場の違いだと考えていますが立場が違えば求められることも変わってきます。介護事業で起業するにあたり多くの方は事業所の収入に直結する介護保険法のことに目が行きがちです。事業を開始するために最初に行う指定申請は、介護保険法の手続きになりますので事業所の運営に際して重要な法律であることは事実です。介護保険法上の手続きが滞れば介護報酬の支払いが遅れるなど事業運営にとって死活問題になります。

 しかし、事業を運営していくにあたって関わってくる法律は介護保険法だけではありません。介護事業という特性上、経営者一人で事業を運営していくことはなく、職員の雇用が発生します。雇用が発生するということは、労働基準法を始めとした労働基準関係法令や健康保険、厚生年金保険、労働者災害補償保険、雇用保険といった社会保険関係法令を順守する必要があります。

 例えば、労働基準法を例に考えてみると経営者には労働基準法は適用ありませんから、自分のやりたい仕事をして、時間外も休日も関係なく働く人もいます。特に開業当初は、本業の他にも事務手続きや役所関係などやるべきことは多いです。本業がうまく回り出すと事務作業に割く時間が夜間や休日しかないということになるかもしれません。経営者自身はそれで良いかもしれませんが職員に対してはそうはいきません。時間外労働や休日労働をさせれば割増賃金を支払う必要があります。賃金に関しても最低賃金以上の賃金を支払う必要があります。さらには、労働基準法で時間外労働の上限も定められていますからその上限を超えて労働させることはできません。介護報酬などご利用者から得られる収入はある程度決まっていますから時間外労働の割増賃金を支払えば支払うほど事業所の利益を圧迫してくことにも繋がります。

 一般企業においても「会社を立ち上げたばかりだから」と労働時間管理を適切に行わず、労働者の善意(実際は言わないだけ)によって長時間労働が常態化する中で利益が出ていたものの、それが労働者の不満に変わり信頼関係が崩れ、未払い残業代請求などの労務トラブルに発展していくケースも多数見てきました。

・失敗要因③:人材の採用と定着、教育がわかっていないから失敗する

 介護事業の開業にあたり人材の採用と定着は、重要な経営課題の一つだと考えています。指定申請のときも人員基準を満たさないと許可が下りないですし、事業を開始した後も有資格者や一定の経験がある人など常に適切な人員を配置しておく必要があります。指定申請書を行政の窓口に提出する日までに人員基準を満たせず申請を延期するケースや事業開始後の実地調査で人員配置の不備を指摘されるケースもあるでしょう。今、我が国では慢性的な人材不足に陥っており今後も改善の兆しは見えません。特に介護業界においては、随分前から人材不足になっており外国人労働者の活用などの対策も行われていますが課題解決には程遠い状況です。

 こうした状況を理解せず「ハローワークに求人を出せばすぐに採用できる」と楽観視している人も少なくありません。実際に介護事業の開業を行う人は、求人広告を使ったり知人に広く声掛けをしたりしてなんとか指定申請に間に合わせたという人もいます。人材の採用と定着の問題は、開業した後も常に付きまとう経営課題です。小規模な事業所であればギリギリの人員で運営しているケースがほとんどですが「職員が辞めたら代わりの人を雇えばいい」という考え方は危険です。まずは、今いる職員が辞めない労働環境づくりが重要ですが、辞めてしまったときに備えて継続的な採用活動を行ったりマニュアル作りをしたりということが事業継続のためには必要です。

 介護事業のように有資格者や一定の経験がある人などが常駐している必要がある場合、職員の中で「自分がいないと事業が継続できない」という意識が生まれることがあります。そうすると経営者に対して強気に出たり職場内のルールを守らなかったり、さらには給与に関して不満を言ってきたりする人がいます。そのような人が現れて事業所内の雰囲気が悪くなってしまうと他の職員が退職してしまうなどの悪循環に陥ってしまうことがあります。そうなってしまっては、良い介護サービスどころではなくなってしまうでしょう。

・失敗要因④:利用者の集め方がわからないから、失敗する

 ご利用者の集め方とは、言い換えれば集客のことです。介護職という職業への想いが強く、ご利用者のためにもっと良い介護サービスを提供したいという理想を持っていることはとても大切なことですが、想いだけでは利益は上がりません。集客や利益という言葉に拒絶反応を感じ「お金のために事業を立ち上げるわけではない」という人もいます。しかし、職員を雇用し、給与を支払うためには売り上げを上げていく必要があります。言い換えれば、営業活動やマーケティングも必要になるということです。これらは、事業を継続していくためには必要不可欠な要素であると言えるでしょう。

 会社を設立すればお客さまが自然とやってくる、介護事業所を立ち上げれば自然とご利用者は集まってくる、そんな風に考えている人もいるかもしれませんがそんなことはありません。事業所を立ち上げようとしている地域には競合他社はどれくらいいるのか、利用者になりそうな人はどれくらいいるのか等を事前に調べた上で場所を選ぶ必要があります。また、事業所を立ち上げる前、あるいは立ち上げた後も、近隣の人やケアマネジャーに挨拶をするなどして事業所のことを知ってもらうことが重要です。

 例えばこんな話があります。ある歯科医院は患者さんが来なくて困っていました。そこのドクターに「どうしたら患者さんが来ると思いますか?」と聞いたところ「腕が良ければ患者さんは来るはずだ」と言いました。「じゃあ先生は腕が良くないのですか?」と聞くと「私は腕には自信がある」と言うのです。そして最後に「先生は腕が良いのになぜ患者さんが来ないのですか?」と聞いたら「・・・」答えに困っていました。この話からも想像できるとおり、腕が良い、良いサービスを提供している、サービスには自信がある、と言ってもそれを知ってもらわないことには、集客にも売り上げにも繋がらないのです。

 介護職員という立場で働いていたときには、既にご利用者がいたり、新しいご利用者が入ってきたりと忙しくしていたかもしれません。「また新しいご利用者が入ってきて大変だ、忙しい」と感じたこともあるでしょう。それは、その事業所としての営業努力の賜物だったと言えます。近隣地域やケアマネジャーへの挨拶回り、ホームページ制作、ポスティングなど様々な方法を使っていたかもしれません。集客とは、そのような一つ一つの積み重ねの結果であると言えます。

・失敗要因⑤:相談相手がいない孤独な経営だから、失敗する

 よく、「経営者は孤独である」と言われます。私自身も会社を経営して感じることでもあります。社員のために何かをやろうと考えたり、社員に少しでも多くの給与や賞与を渡すためにいろいろな取り組みをしてみたりしていても社員からは、「新しいことに取り組むのは大変そう」「できればやりたくない」というようなことを言われたり(言われなくても態度で感じることも)、それがきっかけで辞められてしまったりすることもあるでしょう。そうすると「社員は経営者の気持ちなんてわかってくれない」「せっかく社員のためになることをしようとしているのに」というようなことを言う経営者もいます。社員が経営者の気持ちをわかってくれない(わからない)のは当たり前のことです。だって経営者ではないのですから。

 経営をしていくにあたって重要な要素である「ヒト・モノ・カネ(+最近では「情報」と言うこともあります)」について、悩みは尽きません。同業者や経営者仲間と集まればこのような話題ばかりになるでしょう。そのような集まりで悩みを打ち明けたり、他社の事例を聞いたりすることも大切です。しかし、そのような話題は気持ちを吐き出すことはできたとしても解決策にはなり得ないこともあります。なぜかというとそれが他社の事例であり再現性がない場合があるからです。

 経営課題を一つ一つ明確にし、解決していくためには信頼できる相談相手を見つけることが一番の近道です。それが専門家である士業やコンサルタントです。会社設立や事業の立ち上げのときには行政書士や司法書士、お金のことや税金のことは税理士、人材に関する労務管理や採用定着のことは社会保険労務士(社労士)、契約関係や訴訟トラブルのことは弁護士といった専門家が挙げられます。開業するときにはこのような専門家が周りにいると安心です。もし、相談相手がいないというときには経営者仲間などに声をかけて紹介してもらったり、インターネットで検索して良さそうな人を探したりしておいた方がいいでしょう。これらの専門家をすべて自分で探そうとしなくても、一人、信頼できる専門家と出会うことができればその専門家からさらに他の専門家を紹介してもらえるはずです。逆に言えば「自分の専門分野のことしかわからない」「他の士業などはご自身で探してください」という人ではなく、士業を含めた広い人脈を持っている人を見つけてください。これまでも、介護事業所開業のご相談をいただいた際、会社設立ができる司法書士はもちろん、事業所物件の要件を整備するための内装工事業者、建築士など指定申請に至るまでの様々なことをサポートした経験があります(紹介料などはいただいていませんが・・・)。

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続きはぜひ、kindle電子書籍にてご覧ください

第2章 介護事業所成功のために開業1年以内に知っておきたいこと

・介護事業所の経営の基本構造と集客

・介護事業所運営で絶対に押さえておきたい関連法律解説

・創業融資と資金調達の知識

・2年目以降に成功するための1年目の労務管理と就業規則

・介護事業所特有の人材の採用と定着とは?

第3章 2年目以降も成長し続けるために

・成長の鍵は人員確保と利用者の確保

・介護事業所特有の組織の作り方、伸ばし方

・行政書士、司法書士、社労士、税理士、弁護士…活用するべき社外専門家一覧

・プロ士業の見分け方

・2年目に大飛躍するために必要なこと

終わりに 1年目に、あることを知らずに失敗してしまった介護事業所の話

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