DAO:分散自立型組織の革命とその全貌に迫る
今回もテックメディア「The Generalist」から、DAOをこれ以上ない密度で解説した記事をお届けします。
今回はなんと4万文字強という恐ろしい長さになってしまいました。
長すぎて前・後半に分けてもわかりづらいので、見出しを細かく設定することで検索性を上げた記事になっています。
DAOを全く知らない人からDAOをある程度知っている人まで楽しめる記事だと思いますので、下の目次から見たい部分に飛んでいただくのが良いと思います。
ーーーーー
分散自立型組織「DAO」
僕はこの記事を読むまでDAOの本当の革新性に気づいていませんでした。
行き過ぎた中央集権とその強大な力に対するアンチテーゼは日毎に高まっています。そしてそのアンチテーゼを体現するのがこのDAOです。
ビッグテックによる独占体制、政治に対する不信、経営者の暴走、組織の腐敗と隠蔽。
こうした根強い問題は、このDAOによっていずれは駆逐されるかもしれません。
オンラインショッピングが今の当たり前になったように、10〜20年後には会社ではなくDAOを立ち上げるのが一般的になっているかもしれません。
そういった転換点にいるのだなと、この記事を読むことで実感することができると思います。
前述の通りこの記事は4万字と長いですが、僕のようなDAOを学び始めの人にはぜひ全編を読んでいただきたいなと思います。
原文はこちらです。
DAOに限らず、様々なテック企業や業界の分析をしているメディアですので、ぜひ原文やThe Generalistを購読することをおすすめします。
著者のMario GabrieleさんのTwitter ↓
僕のTwitterでは毎日フィンテック情報について更新しています。
noteでも定期的に翻訳記事やオリジナル記事を出しているので、ぜひフォローをお願いします。
それでは本文です。
ーーーーー
インサイト
数分しか時間がない方のために投資家や起業家がDAOについて学べることを紹介します。
・DAOは人を組織化する新しい方法である
伝統的に株式会社は自由市場において、目標に向かって人材を獲得するための最も効果的なアプローチでした。その人材は通常、賃金によって説得されコントロールされます。
DAOは同じように価値の創造を目的としていますが、労働者やユーザーなどのステークホルダーが真の所有権を持つ分散型の枠組みを採用しています。
・DAOは様々なケースに対応するために様々なタイプが登場している
この分野への関心が高まるにつれ、DAOは多様化し可能性の限界を試し始めています。投資のためのDAO、新しい製品を作るためのDAO、ソーシャルのためのDAO、そしてそれらの間の様々な相互影響があります。
・意味のある資産はこれらのエンティティによって管理される
クリプト、特にDAOに懐疑的な人は自分のスタンスを再考したほうがいいかもしれません。これらの概念は世界を揺るがしうる力を持っています。実際にトップのDAOでは数百億ドルが管理されており、中にはCompoundのように10億ドル近くの資金を誇るものもあります。
・DAOのインフラはまだ初期段階にある
DAOには企業と同じようなニーズがありますが、その規模、流動性、技術的なスタックを考えるとより複雑な問題に対処しなければなりません。
そのため、DAOの設立、コミュニケーション、コラボレーション、支払いなどのためのツールの出現が必要となりました。DAOにはこれらのカテゴリーで選択できるプロバイダーがいくつかありますが、概して選択肢は限られています。今後は多くの新規参入者が登場することが予想されます。
・DAOにはまだ完全に解決されていない明確な脆弱性がある
最初のDAOは、ハッキングされ悪質な業者が数百万のイーサリアムを吸い上げようとしたことで有名です。現在、DAOの安全性は高まっていますがリスクもあります。
コントリビュータは偽名で参加することが多く、参加者にレピュテーションリスクはほとんどありません。がさらに、十分な保護機能がないいくつかのDAOはまだ悪用されやすい状態にあります。
チーム
私たちはこれまでずっと企業で働いていたわけではありません。
1820年、賃金を支払う組織で働いていたのはアメリカ人口のわずか20%でした。残りの人たちは農業や漁業を営み、自分の会社を経営したり、それらの仕事を掛け持ちしたりしていました。
しかし、それからの130年間で状況は大きく変わりました。工業化はより多くの富を得るチャンスであると同時に、より多くの労働力を要求するものでした。これらの変化により、1950年には国民の90%が会社に賃金を依存するようになりました。
このように「会社」とは私たちが普段考えているような近代的な現象なのです。現在、多くのベンチャー企業が採用している「会社」とは人類が「調整」という問題を解決するために行った最新の試みに過ぎないのです。
しかしもっと良い方法があるかもしれません。完璧とは言い難くとも、分散型自律組織(DAO)は会社の欠点をいくつか改善しつつ、大規模な人間の共同作業を可能にしようとしています。
インターネットや暗号技術を利用したこの構造は、ガバナンスと所有権を分散させ、プロジェクトの方向性を決定しその成功から利益を得る機会を貢献者に与えることを目的としています。
まだ始まったばかりですが、この組織的枠組みへの関心が爆発的に高まっていることは、DAOが真剣に取り組むべきアイデアであることを示しています。特にここ数ヶ月の間に新たなDAOが台頭してきており、資本と優秀で献身的な人材を集めています。
DAOは決しておもちゃのようなものではありません。起業家も投資家も、このスペースを十分に検討するのが賢明でしょう。
また、DAOは金銭的な利益の可能性だけでなく、永続的な意味を持つ社会的な変化の先駆けとなるかもしれません。私たちは、結局のところ自分が活動する組織に影響を受けます。
社会学者のチャールズ・ペローは、その著書『A Society of Organizations(組織の社会)』の中で世の中の仕組みの多くが組織によって説明されていると主張しました。彼はこの理論を次のように紹介しています。
新たな独立変数としてのDAOが、宗教、歴史、政治などそれぞれの依存関係にどのような影響を与えるのでしょうか。
「組織が社会の多くを吸収してきたからこそ、組織が社会を理解する鍵になるというのが私の命題だ」というのがペローの言葉です。
もしその格言が正しいとしたら、DAOは人生のどの部分を吸収するのでしょうか。
企業が物理的な領域での人間関係やつながりを侵食したとすれば、DAOは時間をかけてデジタルな存在を吸収していくのかもしれません。つまり、インターネットを吸収して新しいWeb3の構成要素となるかもしれません。
今日の記事ではそのような考えに基づいてDAOの現状を明らかにしていきます。特に以下の質問に答えていきます。(そしてDAOという言葉を頻繁に使います)
この記事を読み終える頃には、何が起きているのか、そしてなぜそれが重要なのかをしっかりと把握していただけると思います。
現在ではありえないことのように思えるかもしれませんが、数十年後には、人口の大部分が中央集権的な組織ではなく、暗号によって実現される分散型の組織で働くことも不可能ではありません。
1. 歴史と神話
この言葉は、ヴィタリック・ブテリンが2013年に発表したイーサリアムのホワイトペーパーに掲載されたもので、DAOについての初期の記述の1つとなっています。ブテリンの上記の説明は、彼のブロックチェーンのモジュール性とパワーを示しているだけでなく、その知的影響を示唆しています。
実際、DAOはおろかイーサリアムが登場する何年も前に「Daemon」が存在していました。
Daemonとは、2006年にSF作家のダニエル・スアレスが出版した本で、DAOの本当の原初ともいえるものです。
スアレスはDaemonの中で、地下協力社会を指揮する大規模なコンピュータプログラムを描いています。DaemonはWeb3の組織が参考にしてはいけないような不謹慎な行為(自動運転のバイクでの暗殺を考えてみてください!)を数多く行っていますが、その基本的なオペレーションは、報奨金の支払い、コミュニティ全体での情報共有、物語通貨の管理など、今日のDAOが行っているものと非常によく似ています。
機能的にはよく似ていたものの、DaemonはDAOと呼ばれることはありませんでした。
ブテリンはイーサリアムのホワイトペーパーが発表される前に「分散型自律組織」について書いていましたが、その中で整然とした定義を盛り込んでいました。
イーサリアムのDAOはDaemonと同様、自己修正可能なコードに依存しています。しかし、ブテリンはスアレスが考案したものとは異なり、DAOは基本的に透明性が高く、明確なガバナンスプロセスとコンセンサスを確立するための道筋があると考えています。
ホワイトペーパーではDAOを2つのタイプに分類していることからも、そのことがわかります。それが「DAC1(Decentralized Autonomous Corporations)」と「DAC2(Decentralized Autonomous Communities)」です。
(これらの頭文字は、両者を簡単に区別するためのものであり、正式なものではありません。)
ブテリンは、前者を取引可能な株式と配当を提供する利益追求型の事業体として想定しており、後者はコミュニティのメンバーがメンバーの追加や削除などの特定の問題について投票する、より民主的な事業体として機能するものとして定義しています。
事実上、DAC1は「1株=1票」、DAC2は「1メンバー=1票」というモデルで運営されています。言うまでもなく「Daemon」の読者は同書のほぼ全知全能のプログラムがこのような明確な構造を持っていなかったことを覚えているでしょう。
さて、冒頭のブテリンの言葉は誘いの言葉であると同時に、部分的には挑発の言葉でもありました。
その挑戦をする人が出てくるまでには3年近くかかりました。そして2016年4月、ついにThe DAOが誕生しました。
このプロジェクトはイーサリアムコミュニティの事実上のベンチャーキャピタルとなり、分散型で管理されることを期待して始まりました。コミュニティのメンバーは、共同でThe DAOに投資し、投資先の候補を投票で決定しました。
これは多くの人にとって魅力的なものでした。The DAOはすぐに11,000人以上のLPから1270万ETH(当時の1億5000万ドル相当)を集めました。この規模の軍資金は伝統的なベンチャー企業にとっても意味のあるものだったでしょう。
DAOが設立された同じ年にユニオン・スクエア・ベンチャーズが1億6600万ドルの新規ファンドの設立を発表していますが、これはイーサリアムに特化したファンドとは比べ物になりません。
その後の展開を知らない人にとっては、The DAOがどれだけ奇跡的な成功を収めるかを想像しないわけにはいかないでしょう。もしThe DAOがETHにしがみつくだけだったとしても、現在の運用資産は520億ドル相当になっていたでしょう。そしてもしThe DAOが数人の勝者を選んでいたら、今日のティア1のVCと劣らない、そして間違いなく世界で最も広範な調達構造を持っていたでしょう。
もちろん、ご存知の通りそのようにはなりませんでした。
同年6月、The DAOはハッキングされました。360万ETHが抜き取られ、保有口座に移されました。そのETHの所有者に資金回収のチャンスを与えるため、イーサリアムはハードフォークを行いました。資金の損失はありませんでしたが、このハッキングはイーサリアムコミュニティの分裂を招き、まだ完全には浸透していなかったDAOの危険性を示しました。
その後のDAOの冬は、より広範な暗号資産の冬に先行し、そしてそれに耐えました。しかし、この低迷期にもDAOを構築する熱心な企業は存在しました。
コントリビューターのJorge Izquierdoが共同設立したAragonは2016年にDAO用のツールの開発を始めました。2015年に設立されたMakerDAOはこのスペースで働く新しい才能を惹きつけ、注目を集め続けました。
これらの早期参入者たちはこの1年の間に不可欠な存在となりました。DAOに対する新たな熱意がルネッサンスに結びついた理由の一つは、新規参入者がAragonやMakerのような組織が作成したインフラやアーキテクチャに頼ることができるからです。
さて、現状を語る前に「DAO」の定義について少し考えてみましょう。
2. DAOとは?
上記のセクションでは目下の課題について理解していただけたと思います。しかし、この最も直接的な、そして重要な質問である、「DAOとは何か」については少し考えてみる価値があります。
DAOに関する知識を学んだ後でも、この質問に答えるのは非常に難しいものです。特に「うまく」答えるのは難しいでしょう。
まず、DAOの頭文字をとった言葉、「Decentralized Autonomous Organization」から始めましょう。
これは何を意味しているのでしょうか?
DAOはその名の通り、非中央集権的な構造であり、(Decentralized)政府や民間セクターのアクターから独立して運営され(Autonomous)そして、まあ、組織であるべきだということです。
簡単なことでしょう?
ただ実はそんなに簡単なことではありません。この定義に当てはまる「DAO」と呼ばれるものはほとんど存在しないのが現状です。そもそも真の意味での分散化は稀であり、ほとんどのプロジェクトは立ち上げるためにある程度の中央集権を必要とするからです。自律性についても同じことが言えます。
重要なのはこれらの特徴を二元的に捉えるべきではないということです。DAOが分散化されているかどうかは「Yes」か「No」ではなく、分散化の程度の問題なのです。非中央集権と自律性はスライド式の尺度であり、DAOはこのスペクトラムの中で異なる位置を占めています。
文字通りの読み方ではうまくいかないので、他の方法でDAOを考える必要があります。ここで厄介なのは、DAOを細かく定義するという行為自体が問題を引き起こすということです。
実際、DAOを定義するすべての人が微妙に、あるいは意味のある異なる回答をする可能性があります。例えば、あるゲーム好きの対談相手は、DAOを共有銀行口座を持つグループチャットと合理的に分類するかもしれないし、2人目は分散所有権を持つコミュニティと分類するかもしれないし、(夢のある)3人目は単に「今キテいるモノ」と呼ぶかもしれません。
いずれも正しいと思います。DAOはグループチャットであり、コミュニティであり、その多くは今キテいるモノです。しかし、これらの表現は広い意味ではありますが、何か物足りない感じがします。
DAOは単にネイティブトークンを持つDiscordサーバーというだけではありません。むしろ価値の創造という共通の目的のために作られた組織なのです。
もちろん、価値の創造をどのように定義するかは様々です。目に見えるものを作ることに重点を置くものもあれば、ソーシャルキャピタルを蓄積して増やしていくことに重点を置くものもあります。しかしこの基本的な目的は変わりません。
これがDAOの最も基本的な説明ですが、これでは納得がいきません。ほとんどの組織が価値創造を目的としていると言えるのではないでしょうか?また、企業も同じ目的を持っているのではないでしょうか?
加えて、「価値」といっても主観的すぎてよくわかりません。DAOをより正確に理解するためには、名称だけではなく、DAOを他の組織と区別するための特徴を見ていく必要があります。
2.1 特徴
DAOが他の組織とどのように違うのかを理解するには、所有権と組織をどのように扱っているかを見ればよいでしょう。
・所有権
DAOでは、創業者や投資家に所有権が集中するのではなく、コントリビューター、ユーザー、戦略的パートナー、ベンダーなど、エコシステムを構成する様々なステークホルダーに所有権を分配します。
つまりDAOは、価値を生み出す人々によって所有されているのです。DAOは誰が組織を所有すべきかという伝統的な概念を超えて、幅広いエコシステムに行動を起こさせ、組織に代わって価値を生み出すことができるのです。
・組織
先に述べたように、DAOは 「自律的 」であることを目指しています。当初、この言葉は国家や民間のアクターからの干渉を受けずに、組織レベルで独立して行動することを意味していました。
これは一部のDAOに当てはまりますが、より重要な自律性は個人レベルで発生します。メンバーはDAOに参加し、自分が最も魅力的だと思う方法で貢献することができます。ガイドラインがあるかもしれませんが、ほとんどの場合でステークホルダーは自分で労働を選択し、自己組織化します。
ここにも意味があります。従来、コントリビュータと監督機関の関係は会社の要求に応じて行動するという従属的なものでした。しかし、ここではそうではありません。DAOの 「ワーカー」は、自分が価値を提供できると信じ、そうしたいと思った時にどこでも参加します。
このようなアプローチをとることで、DAOでは人々が創造的な行動を起こす条件を整います。複雑なシステムは個人やグループがトップダウンで調整することができない形で形成されます。
2.1 フレームワーク
所有権や組織などの特徴に注目することでDAOのイメージがより明確になりますが、その文脈を完全に把握することはまだ困難です。
DAOの戦術を理解するためには既存の組織構造と比較する必要があります。基本的には異なるものですが、DAOを企業やネットワークとして考えてみることで多くのことが見えてきます。
企業としてのDAO
所有者や組織の違いはあっても、会社はDAOを理解するのに有効な枠組みです。
実際に大規模なDAOは、プロダクト、マーケティング、エンジニアリング、コミュニティなどの明確な「部門」を持ち、企業に近い形で運営されていることが多いです。これらの部門には通常、マネージャーのように他のメンバーを指導・支援するチームリーダーがいます。
一般的にDAOのリーダーシップは流動的で階層化されていない傾向があり、ティール組織に似ています。経営理論家のフレデリック・ラルーが定義したティール組織は自律的で自然に進化する組織です。また、従業員が自分の能力を最大限に発揮できる組織でもあります。
協同組合としてのDAO
もちろん、上記のような枠組みではDAOは企業とは些細な点、特に所有権についての違いしかありません。
そこで「協同組合」を例に挙げることができます。協同組合は出資者である労働者が所有・管理しています。これは、ステークホルダーがトークンを受け取り、それによって統治権が与えられ、所有権が割り当てられるDAOと似ています。近所の八百屋さんの生協をデジタル化したものと100万マイルも離れていないのです。
ネットワークとしてのDAO
協同組合のフレームワークはオーナーシップをモデル化するのに役立ちますが、DAOは従業員に相当するコントリビュータだけにオーナーシップを分配するわけではありません。むしろ、さまざまな利害関係者に所有権を分配します。DAOが製品を作っている場合は、ユーザー、戦略的パートナー、ベンダー、ミッションに沿ったコミュニティメンバーなどが含まれます。
その結果、DAOは純粋な生協とはかなり異なるものになります。つまりネットワークです。メンバー同士は自由に交流し、役割は頻繁に流動的に変化していきます。
多くの点でこれはDAOを考える上で最も有効なフレームワークです。もちろんネットワークは新しいものではありませんが、官民問わず組織の調整が複雑になるとネットワークを利用します。DAOの規模が大きくなり複雑化しても、ネットワーク型のモデルであれば、スケーラブルな方法で調整や連携が可能です。
これらのフレームワークは2年後に意味を持つでしょうか?それとも5年後でしょうか?
実際は今からでも十数通りのコンセプトが考えられると思います。
共有価値の創造という基本的な目的は変わらないと思いますが、この分野のイノベーションのペースを考えると今後数年でDAOの概念は大きく変わるかもしれません。そこで今回はDAOの種類についてご紹介します。
3.1 DAOの種類
近い将来、DAOの数が増えすぎて分類があまり意味をなさなくなるかもしれません。「株式会社にはどんな種類があるか」と聞かれても答えに窮してしまうでしょう。遠くない将来、DAOの種類が同列になる日が来るかもしれません。
しかし、今のところはDAOの種類を区別することができます。大雑把に言えば技術志向のDAOと社会志向のDAOがあります。
技術志向のDAOは、クリプト分野の構築に注力する傾向があります。また、オンチェーンでの活動を多く行う傾向があります。
社会的指向のDAOは、主に人々のグループをまとめ、彼らが交流したり集まったりする新しい方法を見つけるために存在しています。ガバナンスはオフチェーンで行われるか、存在しないことが多いです。
これらのセグメントの間に明確な線引きはありません。DAOが分散化と自律性の間に存在するように、社会志向のDAOも技術志向のDAOも二元論的に語ることはできません。
例えばMakerDAOは基本的には技術志向のDAOです。しかし一方で、コミュニティへの参加や交流が盛んで極めて強いソーシャル要素を持っています。
また、「Friends with Benefits」は本質的に社会志向なものです。これは、アーティスト、創業者、思想家のための「文化的メンバーシップ」と「デジタルギャザリングポイント」として機能します。
一方でイベントのトークン発行(Gatekeeper)、ダッシュボード(Pulse)、編集サイト(WIP)などの有意義なツールを構築する強力な製品チームの恩恵も受けています。
これらの分類にはいくつかのサブカテゴリーがあります。特に注目したいのは、Protocol DAO、Social DAO、Investment DAO、Grant DAO、Service DAO、Media DAO、Creator DAO、Collector DAOです。
3.1 Protcol DAO
Protocol DAOは、その名の通りプロトコルの構築を支援するために存在する共同事業体です。例えば上述のMakerDAOのようなものです。Makerのプロトコルは中央集権的なチームによって構築・管理されているのではなく、関連するDAOによって指揮されています。
実際、Makerは長年の運営の中で15のコアユニットからなる洗練された構造を構築してきました。各ユニットは、1人以上のファシリテーターによって管理され、MakerDAO内の長期的な目標を達成するために働くコントリビュータを調整し、報酬を支払う義務と予算を持っています。加えて各部門は独自の条件で管理される独立した構造を持っています。
Sushi、Uniswap、CompoundもProtocol DAOと言えますが、それぞれが独自の構造で運営されています。
3.2 Social DAO
Friends with Benefits (FWB)は、典型的な社会志向のDAOですが、先に述べたようにエンジニアリングの能力を備えています。
ここでの目的は強力なコミュニティを作ることです。その点では他のオンライン上のたまり場と言えます。(DAOの中には、オンラインとオフラインの橋渡しをすることに重点を置いて、IRLでのミートアップを開催しているところもあります)
コントリビューターのJess Slossが設立したSeed Clubも、広い範囲を対象としていますがこの分野のプレーヤーです。CabinDAOやBright Momentsなどもその一例です。
3.3 Investment DAO
ソーシャルDAOが主にコミュニティに関わるものであるならば、Investment DAOは主にリターンに関わるものです。Investment DAOは最初に失敗した投資事業体であるThe DAOと同様に、資本と投資家を集めて展開することを目的としています。伝統的なベンチャー企業とは異なり、意思決定は事実上民主的で、LPは関連する機会に投票します。
Investment DAOはそれぞれ異なる焦点を持っていることがよくあります。例えばあるDAOはENSネームの購入に特化し、別のDAOはブロックチェーンゲームに特化し、別のDAOはクリプトのスタートアップに出資するといった具合です。
コントリビュータのAaron Wrightが設立したThe LAOはこの分野のリーダー的存在です。その親会社は、FlamingoやNeptuneなど、多くの追加ビークルをスピンオフさせています。またMetaCartelも注目すべきInvestment DAOです。
3.4 Grant DAO
この記事の最初に言及した参考記事は、初期のDAOの多くは後援を目的とした「Grant DAO」として活動していたと述べています。
多くの場合、これらのDAOは既存のプロジェクトに付随して存在しており、コミュニティの活性化の一形態として機能しています。これらのDAOは助成金を通じて、より広いエコシステムを促進し、有望なプロジェクトを支援し、新しいweb3のコントリビュータへの道を開くことを目指しています。
例えばUniswapはUniswap Grantsを運営しており、CompoundやAudiusも同様の活動を行っています。これらのDAOは、親会社とは機能的に異なるものの、目的意識や共通のコミュニティで結ばれています。
3.5 Service DAO
Service DAOはこの分野ではユニークな存在です。Service DAOは人材のアグリゲーターとして機能し、特定のプロジェクトに向けて人材を集めることができます。
例えばRaidGuildは「Web3エコシステムのプレミアデザインおよび開発エージェンシー 」と自称しています。しかし従来のエージェンシーとは異なり、Raidは正式な従業員や会社組織を持たずにDAOとして活動しています。Service DAOは1Up World、Tellor、Stake On Meなどの顧客と仕事をしてきました。
PartyDAO、DAOhaus、Yam DAOなどもこのカテゴリーに入ります。
3.6 Media DAO
Forefront、Bankless、DarkStarはMedia DAOです。これらのDAOは公共のコンテンツを共同で制作しています。コンテンツから得られる報酬はグループ全体で共有され、ガバナンスも共同で行われます。ステークホルダーは報道するトピックを決定したり、リソースを管理したりするのに役立ちます。
3.7 Creator DAO
Media DAOが出版物を中心に活動するのに対し、Creator DAOは個人を中心に活動します。ファンクラブがインフルエンサーの熱狂的なファンに消費や交流の機会を提供するように、DAOにも同様の能力があります。また、ステークホルダーは純粋なファンだけでなく自分が最も熱狂的に支持するクリエイターを支援する組織に積極的に貢献したり、働いたりすることもできます。
これは現時点ではあまり一般的ではありませんが、今後普及していく可能性があります。真のクリエイターDAOの基盤となるRollのような製品を通じて、多くのクリエイターが「ソーシャルトークン」を採用しているのを見てきました。初期の動きとしては、Leaving RecordsやPersonal Cornerなどがあります。
3.8 Collector DAO
Collector DAOはInvestment DAOと利益を追求する点では共通していますが、その方向性は若干異なります。これらの組織は特定の資産や収集品を中心に貢献者を集めています。NFTはその代表的なものです。
NFTを集めることで非常に有利な経済的利益が得られることもありますが、これらのコミュニティは短中期的にはアイテムを売るつもりがないことが多いです。NFTやその他のコレクターズアイテムの購入は、根本的に異なる傾向を持っています。
これらのグループは、特定のプロジェクトのキュレーターとしての役割も担うことが多く、ある種の組織的な長さとサポートを加えています。
例えばSquiggleDAOはジェネレイティブ・アートのサポートと収集を目的とし、MeebitsDAOはMeebits NFTの収集を目的としています。PleasrDAOは、プロジェクトを超えた「アート収集帝国」として機能しています。NounsDAOは、Noun NFTの保有者が集まる場所であり、将来のNounの売上のシェアを受け取ることができます。
もちろんこれらのカテゴリーを超えた、あるいはその中間のDAOも存在します。例えばKrause Houseは、NBAのチームを共同で購入することを目的に設立された、投資と社会貢献の両方を兼ね備えたDAOです。
今後の展望として上記のカテゴリーは参考になりますが、私たちはまだ始まったばかりであることを繰り返し強調しておきます。これから登場する素晴らしいDAOの多くはこれらの線の外側に描かれることになるでしょう。
4. 理念と文化
DAOは大規模な人間の調整のための新しいフレームワークであり、人間の調整の中心にあるのは、分散型であろうとなかろうと組織文化です。
文化とは、初期のスタートアップにおける企業文化やまだ知られていない音楽シーンにおけるコミュニティ文化と同じように、グループの間に生まれる行動、パターン、価値観と定義することができます。
研究機関であるOther Internetは、代表的なエッセイ「Squad Wealth」の中で、文化は「ミーム、ホットテイク、内部言語、𝓪𝓮𝓼𝓽𝓱𝓮𝓽𝓲𝓬𝓼から、グループとしてのみ形成されるアーティファクトまで、あらゆるもので構成される」と指摘しています。
どのDAOも、視覚的、言語的、行動的な規範によって文化を生み出す独自の方法を見つけていますが、以下2つの特徴がDAOの世界で特に共通しているように思われます。
それはメンバーがオーナーのように行動する傾向と、根本的な透明性を持つことの2つです。
4.1 オーナーとしての行動
オーナーシップはDAOの文化に大きな影響を与えます。
オーナーシップは個人の参加意欲を高めるだけでなく、コントリビュータの努力や労働に対する考え方を根本的に変えてしまいます。すべての仕事はより大きな目的を追求することに基づいており、そしてその利益は共有されます。
オーナーシップは、創造、成功、そして熱狂といった感情を与えます。オーナーは従来の労働者に比べて、仲間をサポートしたり、他の人の仕事を評価したり、エゴを捨てて最高の仕事をしたりすることに経済的にも心理的にもインセンティブを感じるのは当然のことです。
投資会社であるVariantの共同設立者Jesse Waldenは、この問題に関して先見の明がありました。ウォルデンは「The Ownership Economy」というエッセイの中で、次のように述べています。
4.2 徹底した透明性
透明性はすべての関係者の間に信頼関係を築く上で組織文化において重要な役割を果たします。DAOはブロックチェーン上にあるDAOのETHアドレスの公開された不変の活動により、これを前例のないレベルで可能にします。
これにより、暗黙的かつ明示的なチェックアンドバランスのメカニズムが構築され、利害関係者のコミュニティはDAOがどのように資本を行使しているかについて情報を得ることができ、またリーダーシップチームがコミュニティに沿った意思決定を行っていることを確認することができます。
このような根本的な透明性は競争よりも協力を促し、組織の状況を深く理解することで、個人が自分の仕事にオーナーシップを持つことを可能にします。
そして最終的にDAOの文化は個人のグループ間で形成される1対1の関係によって定義され、繰り返し可能な一連の行動やパターンに集約されます。
DAOは分権化された所有権と透明性という新しい形で、ユーザーがプラットフォーム上の受動的な参加者ではなく信頼と協調を中心としたネットワークの能動的で適切なインセンティブを与えられた所有者となる、新しい組織構造を生み出す可能性を秘めています。
このような権力と文化の分配は、より高い敏捷性、回復力、反脆弱性をもたらし、インターネット上の大規模なグループが、最も強力な中央集権的企業にさえ対抗できるような世界の実現に役立つでしょう。
5. ランドスケープ
DAOはweb3の世界では中核的な組織のプリミティブとなっています。それに伴い、DAOの中核的な機能をサポートするエコシステムが急成長しています。
以下では、DAOにおいて影響力のあるステークホルダーを紹介します。これは決して網羅的なリストではないことに留意すべきで、ランドスケープは領域ではありません。Web3は急速に成長しており、日々変化しており、新規参入者によってこの空間の様相は常に変化しています。
とはいえ、ここでは以下の機能分野におけるプレイヤーの概要を説明します。
また注目すべき組織やオピニオンリーダーについても言及します。
さあ、DAOwnをビジネスにしましょう。
5.1 組織形成
DAOに参加するためには、まずDAOが存在しなければなりません。
現在、Aragon、Syndicate、Orca、Tribute、Colonyなど、いくつかのプロジェクトが覇権を争っています。ただこれらはそれぞれのソリューションが独自の価値提案と機能セットを提供しているため、必ずしも直接競合するものではありません。
これらのプロジェクトは何をしているのでしょうか?簡単に考えれば、Stripe Atlasのクリプトネイティブ版であり、DAOの立ち上げを可能にするものです。これにはメンバーシップ管理、財務ツール、ガバナンスのためのインフラなどが含まれます。
今後数年間で、DAO設立をサポートする製品がさらに市場に出てくることが予想されます。コンテンツ管理などにホワイトレーベルのソリューションが使われているように、DAOを新たに構築する人たちに多くの選択肢が用意されるようになるでしょう。
Aragon
2016年に設立されたAragonは、大規模なDAOを作成、管理、統治するためのアプリケーションのスイートを提供しています。これにはAragon Court、Aragon Govern、Aragon Voice、およびAragon Clientが含まれます。DAOインフラストラクチャに特化した最初のチームの1つとして、Aragon Assosiationは、LidoDAOのような注目すべきプロジェクトをユーザーとして主張し、DAOの重要なサービスプロバイダーとなっています。
Syndicate
コントリビュータのWill Papperは、Investment DAOに特化した分散型投資プロトコルおよびソーシャルネットワークであるSyndicateの共同設立者です。
Syndicateのミッションは、個人やコミュニティが従来のファンドよりもはるかに早く、安価に投資ビークルを立ち上げることで、投資の世界を民主化することです。シンジケートのソリューションには、法的サポートとソーシャルネットワークプロトコルが含まれており、投資コミュニティの招集、コミュニケーション、資本の展開を可能にします。
Orca
DAOは規模に応じて高い参加率を維持することが難しい場合が多いです。Orca Protocolでは、この問題を解決するとともに、資金やリソースの展開におけるボトルネックを軽減するための巧妙なソリューションを提供しています。
具体的には、Orcaは「Pod Model」を採用しています。これは単一のモノリシックなトレジャリーの代わりに、それぞれがサブメンバーとウォレットを持つ小さな「Pod」を配置するというものです。つまり、それぞれのポッドは大きなDAO構造の中のミニDAOとして機能するのです。
これは大きなイノベーションであり、ポッドが必要に応じて着脱できるインフラを構築することで、DAOにコンポーザビリティをもたらします。また、グループの規模が小さくなり、調整やエンゲージメントが容易になります。
Tribute
MolochDAOエコシステムの一部であるTributeは、DAOがスケールアップするために活用するオープンソースのソリューションのフレームワークを提供しています。その技術スタックには、提案のキャンセル、無議決権株式の作成、メンバーの追い出し、メンバーシップのためのNFTの使用、トークンのホワイトリスト化などのソリューションが含まれています。Tributeは基本的にモジュール化されており、DAOは必要なソリューションを選択することができます。
Colony
アリのコロニーにインスパイアされたColonyは、コーディングを必要とせずにDAOを立ち上げるためのEthereumスマートコントラクトのコレクションを提供します。Colonyは、ガバナンス、権限、報酬などを簡素化します。
Colony自体はまだ発表されていないDAOであるMetacolonyによって運営されます。Metacolonyは、Colonyのインフラを利用する人々が使用するツールを継続的に開発・維持していきます。
5.2 コミュニケーション
DAOが形成されると、メンバー間のコミュニケーションを促進する必要があります。健全な議論は言うまでもなく情報共有の鍵であり、優れた議決権行使の実践、財務管理、広範な調整を可能にします。どのDAOも「静かな場所」にはなりたくないのです。
この領域には、Discord、Telegram、Twitterなど、会話を円滑にするためのツールが数多く登場しています。
Discord
DAOのコミュニケーションの主な手段は、間違いなくDiscordです。まだweb3サーバーの世界に入ったことがない人のために説明すると、Discordは無料の音声、ビデオ、テキストのチャットプラットフォームで、エコシステムの中で急速に普及しています。
その特徴は、DAOにとって特に魅力的なものです。まず、Discordを立ち上げるのは比較的簡単で、チャンネルやサブチャンネルのアーキテクチャのおかげで、コミュニケーションを整理するのは簡単で柔軟です。(それが狂気を鎮めることにはならないとしても)
重要なのは、Discordがweb3のデフォルトになったことで、それをサポートする便利なボットやプラグインが数多く生まれたことです。その代表的なものが「トークンゲーティング」機能です。前述したように、DAOの中には、一定数のネイティブトークンを保有している人にアクセスを制限するものがあります。例えば、RandomDAOを始めるとしたら、Discordに参加したい人は420枚の$RANDOMトークンを保有する必要があると主張するかもしれません。
Collab.Landのようなツールを使えば、トークンの要件を満たした人にのみプライベートチャットへのアクセスが許可されるように簡単に設定することができます。他にも、MEE6やStatbotなどのボットが広く使われています。
さらに、Discordは既存のサイトとの統合性に優れていることも特筆すべき点です。より多くのコミュニティがDAOに移行するにつれ、Discordはますます重要な機能となるでしょう。
Telegram
Discordの代替手段として最も一般的なのはTelegramです。暗号者の間では人気がありますが、このチャットアプリはDiscordのようにDAOに採用されていません。これはTelegramが、特にボットやサブチャンネルに関して、同じレベルのきめ細かさを提供していないことが大きな理由です。
しかし、そのシンプルさゆえにDiscordに移行する前のDAOにとって、スタートアップの場となることが多いのです。
「Twitterはなんでまだ無料なんだ?」というのはTwitterの熱心なユーザーの間でよく言われるジョークですが、それには理由があります。特にクリプトの世界では、Twitterは多くの意味で公共の利益となっています。一日にTwitterに流れてくる情報量と洞察力は驚くべきものであり、業界の事実上のソーシャルグラフとしての優位性がその重要性を高めている。(もちろん、他の人たちもその座を狙っていますが。)
TwitterはDAOのプライベートな大量チャットのニーズに応えるものではありませんが、エコシステムにおける重要なコミュニケーションツールであることに変わりはなく、特に新しいプロジェクトを発見するためには重要な役割を果たしています。
5.3 調整
地域社会でも多国籍企業でも、あらゆる集団にとって最大の課題の一つは、特に規模の大きい場合の調整です。歴史的にはこの問題を管理するためにヒエラルキーを使用してきましたが、フラットで非中央集権的な構造ではどのようなソリューションが最適なのでしょうか?
DAOは、Coordinape、Collab.Land、SourceCred、DAOhausなど、コミュニティを管理し、調整を最適化するために様々なツールを利用しています。
Coodinape
YearnやSushiなどのDeFi優良プロトコルで使用されているCoordinapeは、DAOの調整や貢献者へのリソースの分配をサポートします。
例えばCoordinapeの「Circle」という製品では、DAOのコントリビューターが、組織に価値をもたらしていると思われる人に、限られた数のGIVEトークンを「ギフト」することができます。これには楽しみながら参加に報いることができるという利点がありますが、同時に、誰がプロジェクトを推進しているかを示す、事実上の「報酬マップ」が作成されます。さらに、誰もが誰かに報酬を与えることを選択できるため、報酬プロセスは機能的に分散化されています。
一方でこの仕組みには、P2Pの報酬は声の大きい人や外向的な人が過剰な配分を受ける人気投票になる可能性があるとの批判も少なくありません。
Collab.Land
Collab.LandはDiscordとTelegram用のトークンゲート用ボットを提供しています。どちらのプラットフォームでも、DAOメンバーに役割を割り当てるのに便利です。
また、その比較的簡単な操作性から業界ではよく使われるツールとなっており、DAOの数が増えるにつれて、その使用率は高まっていくでしょう。
DAOの数が増えれば、利用者も増えることでしょう。また、まだ本格的なサービスを開始していないGuildも同様の機能を備えています。
SourceCred
DAOはSourceCredを使って、個人のプロジェクトへの貢献度を測定し、報酬を与えます。努力によってDAOに価値をもたらした人は、組織が設定したパラメータに基づいて「cred」を獲得します。credは、貢献者の評判や仕事を単純に定量化する強力な方法です。
また、DAOはクレドとともに「Grain」を発行することができ、これは賃金に相当するものとして使用することができます。SourceCredは、このトークンを区別してこう述べています。
credが "誰が価値を提供したのか?"という問いに答えているとすれば、Grainは "提供した価値に応じて、どのように報酬を与えるべきか?"という問いに答えています。
DAOhaus
DAOhausはMolochDAOが構築したフレームワークをベースにした、DAOを立ち上げ運営するための「ノーコード・プラットフォーム」です。
このプラットフォームでは、ユーザーは中央のハブを介して調整を行い、アクティビティ、ガバナンス提案、トレジャリーの健全性を確認することができます。メンバーシップの管理もここから行うことができます。
このプラットフォームはMolochDAOの構造をベースにしているため、DAOhausのユーザーは、親組織が提供するすべてのツールにアクセスすることができ、ユーザーフレンドリーなラッパーの利点もあります。
4.4 報酬
話は変わって、DAOがコントリビューターにどのような報酬を与えるかについてです。これまで述べてきたように、いくつかのDAOは大規模なDAOスイートの一部として支払い機能を提供していますが、特殊な提供方法も存在します。SuperfluidとSablierは特に注目に値します。
これらのツールを一つの考え方として「DAOのための給与計算」と考えています。これらのツールはDAOがブロックチェーン上で、最小限のガス料金で、定期的に支払いを処理するのに役立ちます。
クリプトに慣れていない人にとっては、この分野の専門用語の多くは混乱を招くかもしれません。ただ、この領域で重要なことは、DAOがブロックチェーン上でコントリビューターに簡単に支払いができるようにすることです。
Superfluid
Superfluidは、プログラム可能なキャッシュフローを実現するプロトコルです。独自のERC-777規格を用いて「価値の流れ」を定義することで、コントリビュータに報酬が自動的に継続して支払われるようになります。これは、月に2回給料が支払われる代わりに、従業員が働いた分だけライブで報酬が支払われるよう会社の給与を設定するようなものです。あなたの側では何もしなくていいのです。
Sablier
Superfluidのように、Sablierは金融ストリーミングプラットフォームです。2019年に作成されたSablierは、あらゆるERC-20トークンをサポートし、コントラクトを使用するための手数料はかかりません。
Sablierの注目すべき点は、真の意味で自律的であることです。プロジェクトを作成したチームはレイヤー1のコントラクトを制御する管理キーを焼いています。これはどういうことかというと、Sablierの製作者は、新しいストリームの作成を止めることができなくなったということです。創設者のPaul Razvan Bergの言葉を借りれば「100%分散型の公共財」です。
5.5 ガバナンス
大規模でのガバナンスと協調的な意思決定を解決することは、現在DAOが直面している最も難しい問題の一つです。
なぜそんなに難しいのでしょうか?
web3の大きなアンロックの一つは、その検閲耐性と「パーミッションレス・アクセシビリティ」です。言い換えれば、誰でも、どこでも、第三者の干渉を受けずに、お互いに取引したり、分散型のプロトコルやアプリケーションに関与したりすることができます。例えば、DAOに参加することを政府が止めることはできないはずです。(少なくとも理論上は)
このパーミッションレスのアクセシビリティは、特にDAOが成長して規模が大きくなるにつれて諸刃の剣となる場合があります。メンバーシップに厳しい制限がないためDAOは時間の経過とともに大きくなり、より多様になることがよくあります。人気のあるDAOは最終的に数万人のメンバーで構成され、それぞれが異なるスキル、経験、価値観、意見、背景を持っているかもしれません。
もちろんこれは良いことだとも思います。労働者から所有者への移行を可能にすることはWeb3の最も基本的で魅力的な特性の一つです。しかし、コミュニティの分散化が進むにつれ、強固なガバナンスの必要性が高まっています。そうしないと、参加者全員が風の中で叫んでいるだけの分裂した組織になってしまうかもしれません。
この問題を解決するために、いくつかのチームが必死になって、メンバーを組織化したり、モチベーションを高めたりするためのツールを作っています。SnapshotとDiscourseは、この分野で広く使用されている、非常に強力な製品です。
Snapshot
Snapshotは、ERC-20やERC-721のガバナンストークンを発行するDAOが主に使用する、オフチェーンのガスレス投票プラットフォームです。イーサリアムでは高価なガス料金がかかるため、大規模なトークン保有者以外はオンチェーンガバナンスを利用することができません。
しかしSnapshotはそこに使いやすく安価なガバナンス参加方法を提供することで人気が爆発しました。DAOのコントリビューターは自分の組織のSnapshotページにアクセスし、投票対象のトピックを見て、意見を述べることができます。例えばSushiのコミュニティが最近投票した議案は以下の通りです。
MakerDAOのようないくつかの顕著な例を除いて、ほとんどのトークンDAOは現在、Snapshotの投票機能をガバナンスプロセスに統合しています。後述するGnosisの製品である「SafeSnap」は、オフチェーンでの投票をオンチェーンで実行することができます。これはSnapshotとGnosis Safeの力を合わせて実現されています。
つまり、DAOの参加者はガソリン代を節約しながらオフチェーンで投票を行い、その結果を後からオンチェーンでシームレスに実行することができるのです。
Discourse
DiscourseフォーラムはDAOの「上院議会」のようなもので、提案に対する正式な議論やフィードバックの場となっています。ガバナンスに関する議論は、DiscordやTelegram、あるいはTwitterなどのバックチャンネルで行われることもありますが、多くの場合はより焦点を絞った長時間の議論のために、Discourse上で行われます。より正式な機能として、DiscourseフォーラムはDAOに関連する議論や提案のアーカイブとしても機能します。
5.6 トレジャリー
多くのDAOでは、メンバーが参加するために前もって資金をコミットしている必要があります。この資本はDAOの「トレジャリー」にプールされます。従来の企業と同様に、DAOも資産を効率的に管理しできれば保有資産を増やしたいと考えています。そのために多くのDAOは資金をNFTやソーシャルトークン、暗号プロジェクトなど、デジタルエコシステム全体の資産に投資しています。事実上、彼らは分散型の投資ファンドとして機能しているのです。
このような試みは規模的には重要ではないと思われるかもしれませんが、DAOが今日、総額で数百億ドルを管理していることは注目に値します。これらは複雑なニーズを持った意義深い存在です。
ほとんどのDAOは野心的な計画を持っていますが、抜け目のない管理は難しいものです。まず第一にクリプト業界は非常に不安定です。資産価格が上下するとDAOの資産は1日に20%以上変動することもあります。このような変動から守るためにDAOは分散投資をしなければなりません。
Llama、Parcel、Gnosisは、トレジャリーマネージャーがこのような乱高下に対処するために必要なツールと洞察力を提供するように設計されています。
Llama
Llamaは他のDAOの財務管理を支援することに特化したDAOです。LlamaDAOにはGitcoinの助成金によって調整された大規模なクライアントがあります。Aave、PoolTogether、Uniswap、Gitcoin、FWBなどのプロトコルのために、ダッシュボード、レポート、財務管理ガイドライン、調整された販売、財務諸表を作成してきました。
Parcel
Parcelは、Aave Grants、Compound Grants、Synthetixなど、DeFiの中でも最大規模のDAOで使用されているトレジャリー・スイートです。現在はクローズドベータ版として、8つのDAOにサービスを提供しており、様々なプログラムで300万ドルの一括払いを行うために使用されています。DAOの規模が拡大するにつれ、助成金受領者への資金の流れの管理、貢献者への支払い、トレジャリーの効率的な展開など、Parcelが提供するソリューションが必要になってきます。
Gnosis
Gnosis SafeはGnosisDAOが開発したDAOマルチシグウォレットのユーザーエクスペリエンスを向上させるサービスです。
「マルチシグ」とは、取引を承認するために複数の署名を必要とするウォレットのことです。支払いには一人の批准だけではなく複数人の批准が必要となります。DAOは伝統的にこのフレームワークを使用して、資金の管理、不正使用からの保護、権力の分散化を行っています。
Gnosis Safeは、他のソリューションとは異なりERC-20sとERC-721sのアセットをサポートしており、DAOはNFTをマルチシグ・ウォレットで保有することができます。多くのNFTの価格が大幅に上昇しているため、ここでの強力なトレジャリーツールはますます重要になっています。
5.7 その他、目立っている組織
DAOは次の1億人以上のユーザーをweb3に引き込む機会を持っています。 組織の開発・展開の基盤となる構造として、DAOは個人的なことや仕事上のことを調整する新たな方法を明らかにし、私たちが集団としてどのように活動し、意思決定を行うかを再考しています。
上記のようなツールや戦術が揃う中、それらを実現した人気の高いプロジェクトをいくつかご紹介します。
PartyDAO
PartyDAOは、DAOツールを設計・構築する開発者、ライター、エンジニア、デザイナーが集まった分散型の集団です。彼らの最初の製品である「PartyBid」では、ユーザーが資金をプールしてNFTに入札することができます。ユーザーはPartyBidを使って、Cryptopunks、Andrew YangのNFT、CrypToadzを入札するために資金をプールしました。9月末にリリースされた「Party Splits」により、PartyDAOはNFTを分割して所有権を分配することが可能になりました。
Mirror
Denis Navarozが設立したMirrorは、非中央集権的な出版ネットワークです。MirrorではWRITEトークンが使われます。ユーザーはWRITEを支払って自分のMirrorドメインを作成し、そこに記事を公開したり、投票権を使って新しいメンバーの承認に影響を与えたりすることができます。
瞬く間にMirrorはweb3に関する考えを発表したり、コミュニティ活動を開始するための場所となりました。例えばMirrorのCTOが始めた 「Crypto, Culture, & Society」では、このプラットフォームを使って暗号学習用のDAOの概要を説明し、その過程で25ETHを調達しました。
Seed Club
Seed Clubはトークン化されたコミュニティの構築、支援、投資を行うDAOです。コミュニティにはソーシャルトークンスペースのトップインフルエンサーやファウンダーが多数参加しています。すでにSeed Clubは、PartyDAO、Forefront、The Generalist、SquiggleDAOなどの著名なDAOやコミュニティと連携しています。
FWB
FWBについてはすでにお話しましたが、DAOの影響力についてはもう少し長い議論をする価値があります。ちょうど今週、この大規模なソーシャルDAOはa16zやPaceなどから1,000万ドルの資金を調達したと発表した。
FWBは、最大級のクリプト有識者のコミュニティで、日々幅広い議論が行われてます。Discordでは、あるチャンネルでは音楽について、別のチャンネルではNFTについて、別のチャンネルでは投資について話しています。FWBのメンバーはWeb3のソーシャルクラブのような役割を果たすだけでなく、コミュニティのための製品を積極的に作っています。要するにFWBは暗号のための真の文化的、生成的な家として出現しているのです。
The LAO
The LAOは定義上はDAOとは言えません。創業者のAaron Wrightが設立したのは「Limited Liability Autonomous Organization」という組織です。The LAOはDAOの特徴の多くを持ちながらも、実際にはデラウェア州で法人化された企業です。The LAOはこの製品を伝統的な法律の世界に基づかせることで、メンバーにとって厄介な法律上および税務上の問題を合理化し、簡素化することを目指しています。
また、The LAOはその差別化された構造だけでなく、Investment DAOにおける影響力の大きさでも注目されています。6,500万ドル以上の出資を受けているだけでなく、子会社も次々と誕生しています。Flamingo(NFT専門DAO)、Red DAO(デジタルファッションDAO)、Neon(メタバースDAO)、Neptune(DeFi流動性DAO)などがそれにあたります。前述のDAOの多様性に見られるように、有限責任構造はクリプト関連プロジェクトの全領域で役立つ可能性があります。
これらの企業が過去2、3年の間にクリプトに極めて積極的であったことを考えるとペーパーリターンはほぼ間違いなく常識外れなものになるでしょう。ライト自身も、FlamingoのAUMが10億ドルになりそうだとツイートしています。
MetaCartel
MetaCartelはもともとDappの開発をサポートするために活動していましたが、その後DAOのインキュベーションに軸足を移したビルダーの分散型グループです。彼らはDAOについて人々を教育し、実際のDAOのケーススタディを行い、新しいDAOの開発とブートストラップに関連するあらゆることを支援しています。
また、MetaCartelはMetaCartel Venturesという投資部門を立ち上げました。MetaCartelはMetaCartel Venturesという投資部門を設立し、他のいくつかのDAOに投資しています。
Moloch
Moloch DAOは元々、ETH 2.0に関連するEthereumの公共インフラの開発に資金を提供するために設立されました。それ以来、MolochはGrants DAOへと拡大し、Tornado Cash、Lodestar、Dapp nodeなどのプロジェクトを助成金によってサポートしています。助成金を申請するプロジェクトを評価するために、数多くのサブギルドが作られました。
さらに、MolochDAOはv2スマートコントラクトでオープンソースのDAOフレームワークを提供しています。先述したTributeとDAOhausの両方がここでのMolochの活動から恩恵を受けていることを述べています。
Rabbithole
Rabbitholeはlearn-to-earn DAOで、消費者に報酬を受け取りながらクリプトについて学ぶ道筋を与えています。
その過程で、Rabbitholeはユーザーが獲得したプロトコルを提供しています。クリプトのプロトコルや製品の数は過去1年間で爆発的に増加しており、プロジェクトによってはアクティブでスキルのある参加者を見つけて維持することが難しくなっています。
Rabbitholeは「クエスト」を通じてプロトコルが訓練を受けたコミュニティメンバーを獲得する手助けをしています。Aave、Opensea、Matcha、Perpetual Protocol、PoolTogetherはすでにRabbitholeと協力しています。
毎日のように新しいDAOが人気を博しているため、この影響力のある組織のリストは、今後数ヶ月、数年の間に急速に増加することが予想されます。
6. なぜDAOを始めるのか?
前のセクションで説明したように、DAOの状況を概観すると、DAOは難しいということがよくわかります。大勢の人が共通の目標に向かって進むように調整するのは、最良の状態であっても非常に困難です。
DAOはこの難題を引き受け、技術的・社会的な複雑さを何層にも重ね、経済的にも大きな変動をもたらします。しかしその結果、DAOを作ると言うことは、人口が年率5,000%で増加し、天然資源が日々変動する新しい惑星に国家を設立しようとするようなものといえるほど難しいものとなりました。
では、なぜDAOを始めようと思うのでしょうか?
純粋に斬新で革命的なことを始める楽しみに加えて、DAOを始めるには以下の3つの重要な理由があります。
6.1 資本形成の容易さ
簡単に言えば、DAOはグループで運用可能な資金をプールする最も簡単な方法の一つです。従来の投資会社を設立するよりもはるかにシンプルで安価です。
DAOはパブリック・ブロックチェーン上に構築されているため、初日からグローバルな金融インフラの恩恵を受けることができます。集団が管理する共有ウォレットを立ち上げるのも簡単です。当然オンボーディングにはまだ多くの課題が残っていますが、一度ウォレットとトークンを手に入れれば、そのトークンを世界中の他の口座に相手がどこにいようとも転送することができます。基本的にDAOではコラボレーション機能を組み込んだクロスボーダーのファンドを立ち上げることができます。
資本形成が重要なのはコミュニティが関心のあるプロジェクトへの投資を可能にするからです。この数ヶ月の間にDAOは、NFTの収集、ソフトウェアの開発、インターネットネイティブなソーシャルクラブの設立、音楽の制作、炭素除去の促進などのために資金を調達しました。
6.2 アップサイドの共有
これまで説明してきたように、DAOのメンバーシップは通常トークンで強制されます。多くのDAOでは、特定のNFTまたはER-C20トークンを一定数保持していれば、「公式」メンバーとみなされます。これらのトークンには、ガバナンス、アクセス、ステータス、価値の獲得など、さまざまな機能があります。そして最後のポイントである価値の獲得は人々がDAOに貢献することで生計を立てることを可能にするために非常に重要です。
歴史的に見て、プロジェクトの財務的なアップサイドは創業者、初期の従業員、投資家に集中しています。一方でトークンは、フリーランサーやサービスプロバイダー、さらには顧客など、さまざまな関係者に報酬を与える流動的な方法を提供します。
ただし、一部のトークンにはアクセス性の低さを懸念する声もあります。一部のDAOの人気が高まるにつれ、トークンの価格が上昇し、メンバーシップがかなり高価になっています。
多くのDAOは、経済的に余裕のない有望なメンバーを支援するグラントプログラムやフェローシップを導入することでこの問題に取り組み始めています。このような取り組みが増えていくことを期待しています。
6.3 透明性
多くのDAOは、「理念」の項で述べたように透明性を重視する文化を持っています。そのため、多くのDAOは企業というよりもオープンソースプロジェクトのように感じられます。単に公共の場で構築するだけでなく、DAOはコミュニケーション、オンボード、取引、統治を公共の場で行います。これは、意味のある異なる相互作用と行動につながります。
ここでは、コミュニケーション、メンバーシップ、ガバナンスにおいて、DAOがどのような役割を果たしているかをご紹介します。
コミュニケーション
DAOではDiscordやTelegramを使って同期型のコミュニケーションをとることが多いです。通常、公開チャンネルがあり、誰でも参加してプロジェクトの詳細を知ることができます。
また、メンバー専用のプライベートチャンネルもあり、透明性が高いとは言えませんが、DAOの歴史や意思決定の様子を記録することができます。
メンバーシップ
DAOのメンバーシップは通常、トークンで表示されるため関連する情報を誰でも見ることができます。オンチェーンでは、トークンホルダーの数を確認したり、メンバーシップの価値を発見したり、誰が長期にわたってトークンを売買したかを確認したりすることができます。
面白いことに、トークンがメンバーシップに使われるので、DAOはDAOのメンバーに対して、トークンの保有状況に応じた報酬を与えることができます。例えば、Rabbitholeはウォレットに$FWBトークンを持っている人に報酬を提供することができます。これにより、数年後には「メンバーシップ・コンポーザビリティ」が到来し、コミュニティがより社会的な方法でコラボレーションできるようになるかもしれません。
ガバナンス
DAOでは意思決定やお金の動きも透明化されています。コミュニティのメンバーは、新しいイニシアチブを提案したり、重要な決定に投票することができます。これによりガバナンスが社会的な機能となります。
例えばNouns DAOは過去3ヶ月間にNFTオークションで5,000万ドル以上の資金を調達し、メンバーはこの資金を慈善事業への寄付、iOSアプリの開発、コミックの出版などに使うことを投票で決めました。
このように決して万能ではありませんが、DAOの仕組みには明確なメリットがあります。
7. DAOを始めるには?
上記のセクションで興味を持たれた方は、どのようにしてDAOを設立すればよいのか疑問に思われるかもしれません。
簡単ではありませんが、DAOを設立することは永続的な価値を持つDAOを設立するというはるかに困難な作業に比べれば簡単です。率直に言って、この分野の歴史が浅いため、持続的に優れたDAOがどのようなものか、まだ正確には分かっていません。
もしあなたが目的のためにDAO構造を立ち上げようとしているのであれば、そのやり方は、寄稿者のJess Slossが以下のツイートで説明しているようなものになるかもしれません。
いくつかのNFTを販売し、あなたのコミュニティにクールな人々を集め、Discordをゲートし、いくつかのトークンをドロップします。以上でやることは終わりです。
しかしこれは本当にこれからの作業の始まりに過ぎません。真の価値を持つDAOを構築する方法を理解するためには、ほとんどのDAOの立ち上げに関わる以下の4つのフェーズを拡大して見ることが役立ちます。
7.1 冒険への呼びかけ
「ミッション」や「ビジョン」といった言葉よりも、「コール・トゥ・アドベンチャー」の方が、参加者がDAOに参加することをより正確に表現しています。
確かに、参加するということはゴールに向かって進むことですが、その先にあるのは特にぼんやりとした、まさに踏み固められていない道です。参加する人は、ダイナミックで流動的な構造の中で、逆境、潜在的な失敗、そしてオッズとの戦いにサインアップすることになります。
DAOからの素晴らしい冒険の呼びかけをいくつか紹介します。
KrauseHouseはDAOが所有・運営する初のNBAフランチャイズを目指しています。
GitCoinは「デジタル公共財」の構築と資金調達を行っています。
FWBは文化とクリプトの交差点で強い存在感を示しています。
7.2 所有権の分配
これは重要な作業であり、設計上の重要な決定事項です。NFTxやSushiのように、初日からオーナーシップをトークンで分配するDAOもあります。
また、小規模なチームで構築し、製品やコミュニティの需要と勢いが証明されてからオーナーシップを分配することを選んだ人もいます。UniswapやCompoundがその例です。
最終的にDAOがコントリビューターにオーナーシップを分配する方法はたくさんあります。ひとつは「Airdrop」と呼ばれる方法で、NFTの購入など過去の行動に基づいてトークンがメンバーに分配されます。
また、「bounties」と呼ばれる方法もあります。例えば、Rabbitholeはユーザーがプラットフォーム上でクリプトの勉強をした時にトークンを提供しています。また、Uniswapのような分散型取引所でトークンの購入を可能にするものもあります。
オーナーシップの分配がうまくいけば、トークンはDAOの将来に貢献し助けてくれる価値観の合う個人や組織の手に渡ります。
異なるDAOがどのようにオーナーシップを分配したか、いくつかの例をご紹介します。
Squiggle DAOは、Discord に参加するために Squiggle NFT を所有する必要がありました。その後、$SQUIG トークンがAirdropされました。
SuperRareは、そのNFTプラットフォームを利用するアーティストやコレクターに$RAREトークンを配布しました。
FWBは、メンバーが75ドルのFWBトークンを所有することを要求しました。このトークンはUniswapで購入したり、Grantで受け取ったりすることができる。
7.3 ガバナンス
ガバナンスグループとしてどのように意思決定を行うかを決めることは、DAO立ち上げプロセスの重要な段階です。この意思決定を処理するグループは、しばしば 「ガバナンス・ストラクチャー」と呼ばれます。
Web3では、このテーマに熱心に取り組んでいる人たちがいて、新しい方法論やアプローチを常に検討しています。最近では、Ethereumの創設者であるヴィタリック・ブテリンもこのテーマについて意見を述べています。
最もシンプルな形で言えば、ガバナンスとはDAOやDAO内で活動するチームが下す決定に正当性を持たせるためのプロセスです。
ガバナンス構造には様々な種類がありますが、最も一般的な意思決定方法は 「Token Weighted Voting」と呼ばれるものです。
このシステムでは1トークンが1票を表します。メンバーは提案を行い、Snapshotのようなツールでユーザーはそのテーマに対する好みを示すことができます。これらの投票結果は自動的に実行されるか、マルチシグの署名によって確認されます。
ガバナンス構造の中には、ほとんどの提案に対してメンバーが投票する直接民主主義的なものもあれば、権限を持つコアチームがグループを代表して投票する代表民主主義的なものもあります。ガバナンス構造は、時間とともに進化することがよくあります。
DAO版の「法案が法律になるまで」をまとめてみましょう
議論と形成
メンバーがDiscordでアイデアを出し、そのアイデアが会話を通じて形作られ、初期のコンセンサスが形成されます。提案の正式化
提案はDiscourseに投稿され、より正式な会話やコメントにつながるかもしれません。その過程で、提案が改善されることもあります。提案への投票
Snapshotを使用して、DAOはトークン保有者に一定期間内に提案に対する投票を行う権限を与えます。提案の実行
投票が終了するとマルチシグの署名者が取引や行動を実行します。
ガバナンスのポイントは、良い決定を下し、プロジェクトを推進することです。良いガバナンスは、声を聞き、正統性を守り、勢いをつけることを保証します。
7.4 インセンティブと報酬
DAOは目標に向かって努力を調整し、インセンティブはその努力を促進します。DAOが提供する最初の報酬は、通常ネイティブガバナンストークンであり、初期の貢献者に所有権を与えます。
これらのトークンは市場ですぐに価値があるわけではありませんが、個人が新しい組織に貢献している相対的な価値と、DAOの集合的な価値を共有することを表しています。
もちろん、すべての報酬が金銭的なものではありません。DAOのインセンティブの種類には次のようなものがあります。
トークン報酬
これは前述のトークンのようなもので、保有者に所有権と影響力を与えます。ソーシャルキャピタル
貴重なメンバーにはDiscord上やNFTを通じて正式な称号が与えられることがあります。「モデレーター」や「リーダー」になることで、DAOの範囲内で社会的地位を得ることができます。給与に近いトークン報酬
コントリビューターにはUSDCやETHなどのより広く流通している通貨で報酬を与えることができます。これは流動性が高く、保有している通貨を現地のフィアット通貨 (法定通貨) に簡単に交換できるため、給与に近い機能を持っています。
これらの報酬は強力なものですが、DAOが真の規模に到達するためには、コントリビュータが請求書を支払えるだけの報酬を支払う方法を見つける必要があります。
その方法のひとつが、DAOガバナンストークンの市場を作ることです。UniswapやSushiのようなツールがそれを可能にしていますが、使い方が複雑です。加えてここで十分な取引量を見込むことができるのは、非常に確立された組織だけでしょう。
代わりにほとんどのDAOは、コントリビュータの努力に対する対価として、USDCやETHをトレジャリーに入れる必要があります。DAOは可能な限りガバナンストークンを交換するか、オンチェーンの収益を得ることでこれを行うことができます。例えば、DAOはNFTをETHと交換してトレジャリーに入れ、貢献度に応じてコントリビュータにそれを支払うことができます。
また、報酬と引き換えにブロックチェーン開発などの特定のサービスを組織のために行うことに同意するかもしれません。
報酬をどのように構成するかという問題はほとんどのDAOが重要な時間を費やしています。DAOは一般的にこの分野ではあまり定義されていません。ボスも、構造化された報酬プランも、明確な役割分担さえもありません。中央の人事部が給与を決定することもありません。
このような管理体制がないため、DAOはさまざまな仕組みでコントリビュータに報酬を与えます。報酬の与え方のうちのいくつかはすでに説明しましたが、一旦おさらいしておきましょう。
Bauntiesは、トークンの数で明確に定義されたタスクを完了したコントリビュータに報酬を与えます。
Grantは、明確には定義されていない大きな課題に取り組む貢献者にトークンで報酬を与えます。
Coordinape Circlesは、他のコントリビュータがクラウドファンディングで調達したトークンを使って、ワーキンググループの努力に報いるものです。
サラリーは、コアチームのメンバーの努力に報いるために、定期的に給与が支給されることがあります。これは通常、USDC、ETH、およびネイティブトークンの混合として支払われます。
DAOモデル、プロセス、ツールは、多くの場合それらを必要とするコミュニティによって日々構築されています。実際のプレイブックはまだありませんが、SushiとIndex Coopの両社は、雇用と報酬に関する構造的なアプローチを定めています。
また、最終的にはDAOの各フェーズのニーズに対して、一般的に使用されている技術的ソリューションは1つまたは2つしかなくなるでしょう。これはバーティカルなものが生まれやすいSaaS等とは異なります。
DAOのような新興モデルへの参加には課題もありますが、次のインターネットを形成する大きなチャンスでもあります。
8. DAOで働く
もしあなたがDAOを立ち上げる準備ができていないのであれば、DAOで働くことでその能力を身につけることができます。ここからはその方法を理解するために、DAOの採用プロセスを説明し、以下の様々なステップを説明します。
専門分野の選択
適切な役割を見つける
オンボーディング
共同作業
“給料”をもらう
8.1 専門分野の選択
DAOで働くとなるとどこから始めればいいのかわからないことがあります。DAOにはどのような役割があるのか?実際にどのような人材が必要なのか?
実はあなたが思っているよりも簡単なことです。DAO自体の焦点に応じて様々なバリエーションがあるのは確かですが、いくつかの共通した役割があります。
コミュニティマネージャー
DAOは言うまでもなくコミュニティです。そのためこの役割は特に重要です。モデレーターやマネージャーは、プロジェクトをまとめ、前進させるための潤滑油となります。リクルーターとプロモーター
特に初期の段階のDAOは、存在を周知し、優秀な人材をプロジェクトに引きつける必要があります。書記
DAOでは膨大な量の情報が作られ、発信されます。そのためそれらの情報を明確に記録し、貢献するライターの存在は貴重です。アーティスト
NFTはDAOが収益を得るための一般的な手段として登場しました。そのため、芸術的な能力や感性が求められることがあります。エンジニア
DAOの中には独自のツールやweb3の製品を作り始めているところもあります。プログラマーの方、またはプログラマーになりたい方には、DAOが学ぶ機会を提供します。会計担当者
これまで述べてきたように、DAOは大きなAUMを管理しています。DAOは財政的に賢明なオペレーターを必要としており、効果的な支出の管理と展開をサポートします。
もちろんこれだけではありません。ゲームデザイナーやデジタルマーケターなど、さまざまな機能がDAOには必要です。
では自分に合った役割を見つける DAOの世界では、どのようにして募集を見つけるのでしょうか?
8.2 適切な役割を見つける
実際のところ、正式な発見プロセスはなく、ほとんどの機会はTwitterやゲート付きのDiscordチャットやポッドキャストなどで偶然に浮上します。この不透明さが参入を難しくしていますが、「採用情報」がないことは、バグというよりもむしろ機能のように感じられます。信頼できるコミュニティに参加することで気になる機会を見つけることができます。
8.3 オンボーディング
参加したいDAOを見つけたら、次は何をすればいいのでしょうか?
オンボーディングの経験はDAOによって大きく異なる傾向がありますが、高品質な組織はこの面で優れていることが多いです。結局のところ、適切な状況とサポートがあれば新しいメンバーはよりよく貢献することができます。
そのため、いくつかのDAOは大学のオープンキャンパスのように、新規メンバーのオンボーディングコールを開催しています。Index Coopは暗号化されたインデックス商品を作成する分散型資産管理会社で、毎週新規加入者セッションを開催し「Cooper Owl Quest」と呼ばれる詳細なガイドを提供しています。
NounsDAOのように、ユーザーが生み出す創造性を中心としたDAOは異なるアプローチをとっています。Nounsはプレイグラウンドを作り、ツールを公開して、メンバーがコミュニティの活動に参加できるようにし、その後コミュニティのトレジャリーから資金を得られるようにしています。
8.4 コラボレーション
参加したら、いよいよ付加価値をつけていきましょう。
DAOではその多くがコラボレーションによって行われます。DAOでは中央のマネジメントチームが仕事を定義するのではなく、意思決定権が分散されています。誰もが将来のビジョンを表明する権限を与えられており、リーダーシップチームは通常、コミュニティのニーズを特定し、その解決に向けて努力できる人から生まれます。
このようなボトムアップのアプローチはDAOの全体像に現れています。例えば、6人の熱心なSushiコントリビューター
からなるチームは、ユーザーのトラブルシューティングを支援し、多言語のカスタマーサービスポータルを作成するための助成金を申請しました。このような取り組みは、DAOSの典型的な例です。コントリビューターは、Sushiのエコシステムにおけるペインを特定し、解決策を積極的に提案し、リソースを要求して受け取り、構築を行いました。
この作業はどこで行われているのでしょうか?
これまで述べてきたように、DiscordやDiscourseは会話の場として人気があります。残りのコラボレーションの多くは、Google Docs、Notion、Airtable、Figma、Githubなどで行われています。強力なプラットフォームではありますが、web3のような非常に流動的なチームのために作られたものではありません。
これらのプラットフォームでは、ユーザーの情報は中央のデータベースに保存され、アクセスは組織内での個人の役割に基づいて割り当てられるのが一般的です。しかしDAOでは、役割が変わったり、匿名を希望するコントリビューターがいたりと運営方法が異なります。
今後数年のうちにネイティブなweb3生産性スタックが登場することを期待しています。これはトークンの保有状況やコミュニティ内での過去の貢献度に基づいて権限を付与するものになるでしょう。
8.5 ”給料”を受け取る
DAOのコントリビューターがその努力と引き換えに受け取る報酬の種類については、既にほぼ網羅しました。
それに加えてさらに注目すべき点があるとすれば、DAOが報酬を特定のKPIに結びつけることがあることです。UMAプロジェクトは、DAOが所定の有効期限内に所定の目標を達成した場合に、より多くのシンセティックトークンを支払う枠組みを作りました。
これはモチベーションを高めることができる一方で、コミュニティが間違った指標で過剰に指数を上げてしまう危険性があります。さらに、悪質のある人は、特定のKPIへの貢献度を最大化しつつ、意味のある仕事を省略するようなシステムのゲーム方法を見つけるかもしれません。
9. 法的な問題
ブロックチェーンやDAOのようなブロックチェーンベースのシステムは、法律の管轄外で運営されるように設計されています。DAOのようなブロックチェーンベースのシステムは、その技術のおかげでブロックチェーンベースのコードとして自律的なルールを守っています。とはいえ、この技術は規制可能です。
今日、DAOは多くの伝統的な法人や他のビジネス団体とは異なる前提で運営されています。DAOはデザイン的に流動的であり、理事会や管理者によって運営されるのではなく、民主的に、またはより高度に参加的なプロセスやアルゴリズムによって統治されることを目指しています。
ある地域に根ざした伝統的な組織とは異なってDAOは世界中に広がり、どこに住んでいるかに関わらず何千人ものメンバーをつなぐことができ、必要なのはインターネットへの接続だけです。DAOは書面による契約やその他の法的手続きを避けようとすることが多く、メンバーは主にソフトウェアとコードのルールに従うことに同意しています。
ほとんどの管轄区域ではDAOは定義されていませんが、有限責任会社の元祖であるワイオミング州では、ワイオミング州の有限責任会社として組織されていることを条件に、ブロックチェーン上で活動するDAOに法的な会社としての地位を認める法律が最近成立しました。
この「平等の州」のかなり前向きな考え方はDAOメンバーの責任を保護するものです。このような保護措置がなければDAOは一般的なパートナーシップとみなされ、問題が発生した場合にメンバーが個人的な責任を負う可能性があります。ワイオミング州は先行していますが、他の地域でもDAOの将来について深く考えているところがあります。
また、有限責任の国家構造を活用したDAOの例としては、前述のThe LAOがあります。
Tribute Labs(旧OpenLaw)は「Unincorporated Not for Profit (UNA)」などの代替構造を検討しています。これは、個人のグループが登録による正式な手続きを経ることなく団体を形成したい場合に作成することができます。UNAの構造は、コレクターやアーティストがNFTを寄付し、コミュニティがそのNFTをパーマネントコレクションに加えるかどうかを決める、デジタルミュージアム「MUSE0」の構築に使用されました。
UNAの設立には書類の提出は必要ありませんが、法人格のない団体の目的に利益を上げる意図が含まれている場合は、ゼネラル・パートナーシップが成立したことになります。事実上UNAは、営利を目的としない行動を取りたいグループや、指針の作成を必要とするグループに最適です。
DAOの重要性は増してきており、ブロックチェーンベースのガバナンスは、従来のガバナンスメカニズムをデジタル化し、企業を組織化する根本的に新しい方法を提供することで、従来のガバナンス方法に大きな影響を与えています。
法的には今後の道筋が明確になってきており、推進派は慎重に楽観的になるべきだと考えています。
10. DAO
DAOには強気になれる理由がたくさんありますが、これはまだ初期の段階です。 大規模な展開と大衆からの受け入れには時間と努力が必要です。
そしてDAOは完璧ではありません。 現代の企業には問題があり、DAOはその欠陥に対応したものですが、従来の企業の構造が何もかも間違っていると考えるべきではありません。 それは何百年にもわたる教訓を無視していることになります。
例えば、公正に管理されている企業は2つの重要な責任を業務の一部として引き受けています。
受託者責任
企業の所有権と経営権が完全に重なることはほとんどありません。 そのため、企業の意思決定に責任を持つ者(役員や取締役会など)は、自分の利益ではなく、株主(真の所有者)の利益を考えて行動しなければなリマせん。少数派の保護
株主によって会社に対する利害関係が異なることがあります。しかし、どんな企業でも全ての株主に平等に利益をもたらすように運営されなければなりません。大株主は少数派を犠牲にして多数派に不釣り合いな報酬を与えるような要求に従うことを他の株主に強制することはできません。
これらは正常な企業の基本的な運営であり、これらを遵守しない企業は法的措置の信頼できる脅威に直面します。 しかし、少なくともトレードオフなしにDAO内でこのような行為を再現することは困難です。
まず、違反したときに頼れる伝統的な裁判所がありません。 また、DAOはスマートコントラクトとして動作する信頼性のないコンピュータプログラムであるため、ある提案によって受託者責任が果たされたかどうか、あるいは少数株主が十分に保護されたかどうかを判断することはできません。 このような判断は基本的に主観的なものであり、ソフトウェアではうまく解釈できません。
通常は問題にならないかもしれませんが、DAOの議決権が悪人の手に渡った場合には非常に重要になります。 例えば、悪意のある人(または悪意のあるグループ)が51%の投票権を獲得することに成功した場合(または設定された閾値を超えた場合)、彼らは他のコミュニティを犠牲にして自分たちに不釣り合いな報酬を与えるような組織の変更を提案し、それに批准する可能性があります。
特にソフトウェアレベルでは、DAOにはこれを阻止する能力がないかもしれません。 DAOのコードにとっては正当な提案も組織の存続を脅かす提案も全く同じに見えます。
上記のような状況ではコミュニティ内の人間は自分を守ることができないため、問題を解決するには、このような評価を行うことができる信頼できる外部ソースからのインプットが必要となります。
また、仮名性はさらに問題を複雑にします。 多くの人が「捨て身のID」を使ってDAOに貢献していますが、これは悪質な行為者にとって風評被害のリスクが少ないことを意味しています。 DAOが誰にでも開かれている現状では、少なくとも外部からのインセンティブがない限り、悪い人が上記のような身勝手な行動をしないインセンティブはほとんどないでしょう。帰属意識を持たずに活動すれば、DAOのリソースをリークすることに価値を見出す人もいるかもしれません。
ではなぜこのような攻撃が増えないのでしょうか?
これには、他のインセンティブが作用していることが一因と考えられます。 多くのDAOではトークンの供給が少数の創設者や評判の良い投資家に集中しています。
これらの人々は通常、長期的な視点で物事を考えており、身元を明らかにしているため、評判を落とすリスクがあります。 いかなる攻撃も、たとえ彼らにとって合理的な経済判断であったとしても、これらのクジラによって撃ち落とされる可能性が高いのです。 このような可能性があるため、そのような作戦は試みられることすらありません。
また、DAOのマルチシグを管理する責任者は、多くの場合、比較的容易にコミュニティの利益に反する行動を取ることができます。 しかし、DAOの世界で蓄積されたソーシャル・キャピタルやweb3の規範は、利己的な行動を妨げるものは何もないにもかかわらずこのような行動を思いとどまらせます。
また、このようなリスクに対処するために、他にもRage quittingやVetoingなどのアプローチが提案されています。
10.1 Rage quitting
Moloch DAOはトークン保有者が資産の比例配分でDAOを退出できる「rage quitメカニズム」を備えています。 重要なのは、rage quittersは賛成票を投じた場合を除き、議案が正式に可決される前に持っていたシェアで退場するということです。 DAOが下した決定が気に入らなければ、トークンを持って出て行くことができます。
潜在的な攻撃者にとって、このような出口メカニズムの存在は大きな障害となります。 攻撃が行われていると判断したコントリビューターは強制的に参加させられるのではなく資金を持って去ることができます。 仮に強盗が51%の過半数を占めたとしても、資金にアクセスできない可能性があります。
rage quitの欠点はかなり核心をついた方法だということです。 さらに、NFTのような腐らない資産を保有するDAOには特に効果がありません。 あなたと私と98人の友人がそれぞれ1ETHを投入してBored Apesをいくつか購入した後、あなたがRage quit^をしたいと思った場合、どうすればあなたが端数分の保有資産を持って帰ることができるでしょうか? 簡単な答えはありません。
最終的には、この方法を採用している大規模なDAOは、メンバーの包括的な審査プロセスと組み合わせています。 これによりソーシャル・キャピタルが確保され、不正な提案が最初から起こらないようになります。
10.2 Vetoing
Rage quittingの代わりにVetoingを通じて攻撃から守るDAOもあります。 これは、信頼できるエンティティやメカニズムがプロポーザルの正当性を確認し、悪意のある行為をシャットダウンするものです。
例えば、Nouns DAOの創設者たちは悪意のある提案に対してVetoingを行使することができますが、彼らはこの権利を時間の経過とともに「証明可能な形で無効にする」ことを計画しています。 ここでも、コードではなくソーシャルキャピタルに依存したアプローチがとられています。
主観的な意見を通じてこの問題に正面から取り組もうとしているプロトコルもあります。 例えばAragon Courtでは「guardians」のネットワークを使って、この種の紛争を処理しています。 問題が発生した場合、判断はこの独立した裁判所に委ねられ、公平な努力に対して報酬が与えられます。 Klerosの「Justice Protocol」も同様のソリューションです。
DAOは、攻撃の脅威だけでなく、その構造の有効性に関する多くの未解決問題を解決しなければなりません。 非中央集権的なアプローチが最良の結果をもたらす可能性はあるのでしょうか?
影響力のあるスタートアップ企業は、組織の方向性を決めるのはトップの人間であり、IPは独自のものであり、雇用は計画的に行われ、機密保持は非常に重要であるという、かなりデフォルトな運営方法を使っています。 このアプローチは、過去数十年にわたって非常に優れた結果をもたらしてきました。
DAOの場合は、フラットな構造で完全な透明性を確保するという点で、当然ながらこれと大きく異なっています。 このモデルは、ビットコインやイーサリアムがDAOであるように、分散化が不可欠な状況では非常に有効であることが証明されていますが、他のタイプの組織にとって最適であるかどうかは不明です。
DAOが特定の市場で中央集権的なチームと競争し、そのモデルの相対的な強みと弱みがどこにあるのかを観察することは非常に興味深いことです。
11. DAOの未来
DAOの世界で最もエキサイティングなことはその可能性がまだ表面に現れていないということです。 新しい技術は、それがどのように、どこで、何のために使われるのかという点で、どうしても我々を驚かせてしまいますが、それでも、それが示す未来を想像してみることには価値があります。
ここではDAOの重要性、所有権や創造性の概念の変化、新しい組織の時代の可能性などについて触れていきます。。
11.1 DAOの重要性
富の格差の拡大は私たちの社会が直面している最大の逆風の一つであり、COVID-19の余波はこの問題をさらに悪化させました。 これは道徳的な問題だけではなく、経済的な問題でもあります。
持続可能な富を築くためには、労働力や賃金ではなく、資産の所有や資本へのアクセスが最適なソリューションであるという厳しい現実があります。 歴史的に見ても、資本を持っている人は労働力を提供した人に比べて不均衡に利益を得ていました。
繰り返しになりますが、もしあなたが裕福になり、経済的な自由を手に入れたいのであれば、資産を所有する必要があります。資本>労働なのです。
Web3には様々な特徴がありますが、その中心的な柱のひとつは、これまで述べてきたようにこの所有権の概念です。 所有権の新たな考え方によって資本をより広く普及させることで、何百万人もの人々を従来の賃金労働から所有へと導く可能性を秘めているのです。
通貨の下落を背景に、世界がそれを必要としているまさにその時に、クリプトが広く投資可能な資産クラスになりつつあるという印象を強めています。
そしてDAOはこの動きの中で重要な役割を果たしています。 DAOはそれ自体が富を創造する機会となるだけでなく、エコシステムに参加する人々の教育やスキルアップにおいても主導的な役割を果たすと考えられます。
11.2 創造性
多くの人が知っているように、自動化やAI、ロボットの進化によって現在の仕事の多くが置き換えられてしまうのではないかという不安があらゆる階層の市民の間で高まっています。しかも、その不安はあながち間違ってはいません。
しかし、Web3や関連するDAOの爆発的な普及により、これまで存在しなかった何百もの新しい産業、何千もの新しい組織、何百万もの新しい仕事が生まれるかもしれません。
中でも特に創造性が影響を受けるかもしれません。 単純な労働が自動化されていく中で、より創造性の高い才能が前面に出てくるはずです。 また、機械化された世界では、デジタルの世界であっても、人と人とのつながりが促進されるかもしれません。
DAOはこの2つのトレンドを見事に体現しています。 Creator DAOはアーティストにファンとのつながりを与え、多くの場合に世代を超えた富を生み出すことができるでしょう。 そして、その富の多くは、富の生成に貢献した人々と共有されることになります。
Micah Johnsonはこの可能性を実現した一例と言えるでしょう。 元MLB選手で、現在はアーティストとして活躍するジョンソンは、NFTをベースにしたキャラクター「Aku」の生みの親です。 彼の作品はアバターとして人気を博しているだけでなく、VISAのスポンサーにもなっています。 今後、「Akuverse」がどのように拡大していくのか、コミュニティが参加する真のDAOが誕生するのか、想像に難くありません。
12. 最後に:新たな組織構造に向けて
現時点では、すべての伝統的な資産は事実上の法的なものであり、資産保有者の権利は裁判所によって担保されます。
しかし、より多くのアセットがオンチェーンに移行するにつれ、スマートコントラクトやプログラムによるインセンティブが所有権を保証する方法として法制度に取って代わるでしょう。
同様に、DAOはこれらの資産を調整するための主要な方法として法人に取って代わるでしょう。 個人は会社を設立するのではなくDAOを設立してオンチェーンの資産を管理するようになります。
これまで述べてきたように、DAOは最初からグローバルであり、参加や貢献の許可がなく、アイデンティティ、雇用契約、就職面接、さらにはリアルタイムの報酬などの摩擦を最小限に抑えることができるという点で、従来の企業に対するパラダイムシフトとなります。 現在、このプロセスには多くの問題がありますが、時間の経過とともに解決されると信じています。
簡単に言えば、クリプトは財産権の保護を強化し、グローバルな「パーミッションレス」の金融システムを提供しており、誰もが今日の古臭い手段よりもはるかに効率的に資産を資本に変えることができます。
もちろんDAOがその並外れた期待に応えられるかどうかはまだわかりません。 この10年間は私たちが想像する以上に奇妙で、暗く、そして奇跡的なものでした。 次の10年はさらに大きな変化をもたらすかもしれません。
しかし、パワフルでポジティブな変化を信じるのは妥当なことだと思います。 先見性のある新しい分野に無料でオープンアクセスを提供すれば、多くの人の生活を向上させる方法を見つける人もいるでしょう。 そして、少数の人も多数の人も、会社ではなくDAO(インターネットを吸収した流動的で変化し続けるデジタル空間の一角)で働くことになるかもしれません。
13. DAOのリーディングリスト
多くの優れた思想家がこれまでにDAOについて書いてきました。 ここでは、私たちのお気に入りのリソースをいくつかご紹介します。
ーーーーー
ここまで長い記事を読んでいただきありがとうございました。
訳している自分もDAOの可能性にとてもワクワクしましたし、DAOに参加してみたいと思いました。
ここ1ヶ月くらいで来ているWeb3の波の理由もわかった気がします。今後ともDAOやDeFiの動向を勉強していきたいと思います。
今回翻訳させていただいた原文はThe Generalistというテックメディアが配信しているものです。ぜひ購読してみてください。