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FTX Part1:天才サム・バンクマン・フリードの数奇な人生

今回はテック企業の分析記事を中心に配信しているニュースレター「The Generalist」から2年でデカコーンとなった暗号資産取引所FTXの分析記事3部作からPart 1をお届けします。

クリプトに少しでも興味のある人なら1度くらいは聞いたことがあるであろうFTX。その創設者が29歳の若き天才サム・バンクマン・フリードです。

Visual Capitalistが出す40歳以下の億万長者ランキングでもCoinbaseのブライアン・アームストロングよりも上位かつリストの中の唯一の20代としてランクインしています。

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同社は2019年に設立されたにも関わらず10月には評価額が$25Bに達しており、その勢いは止まるところを知りません。

今回はそんな異次元の成長を見せるFTXの創業者サム・バンクマン・フリードについて掘り下げています。

原文はこちら。

著者は「The Generalist」の創業者Mario Gabrieleさんです。

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それでは、以下本編です。

※今回の記事は1万字程度です。
※本記事は著者の許可を得た上で翻訳をしています。

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FTXは次の10年で最も影響力のある企業の1つになるでしょう。この暗号通貨取引所は約2年でなんと180億ドルもの評価額となり大きな注目を集めています。

これは非常に速いスピード、バランスのとれた攻撃性、製品の革新性、そして独自の文化によって達成されています。ここから3本の記事に渡って、舵取りをするFTXの天才CEO、その会社、そしてその未来を解き明かしていきます。

今回はPart 1です。次はPart 2Part 3 (英語・近日翻訳記事公開予定) をお読みください。

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トレーダーの仕事はリスクを理解することです。

この点においてサム・バンクマン・フリードは何かコツを得ているような気がします。彼はクオンツ・ヘッジファンドのJane Streetでキャリアをスタートし、その後驚異的なスタートアップを立ち上げました。それがFTXです。

サム・バンクマン・フリードは3年足らずの間にこの暗号通貨取引所を180億ドルの評価額にまで引き上げ、Binanceと肩を並べるほどの急成長を実現しました。(訳者注:2021年10月には評価額は250億ドルに到達。)

強力な競合企業がひしめき合い、ハッカーや詐欺師が跋扈し、規制当局に睨まれているこの業界でこのような業績を上げるのは並大抵のことではありません。ここまで来るためにサム・バンクマン・フリードは、スピードを上げながらリスクとそれのバランスを取らなければなりませんでした。彼はリスクを理解し、管理しなければならなかったのです。

もちろんFTXは確実なものではありません。クリプトほどの危険性と変化の速度を持つ分野は他にほとんどありません。

しかし、今のところ同社には適切なリーダーがいるようです。危険性を知りながらも、積極的にガスを噴射するCEOサム・バンクマン・フリードはその不眠不休の精神と特異性から、自らが運営する暗号資産取引所に相応しい人物であったのでしょう。

今回はFTX三部作のPart 1として、彼の出自と彼の心の中について説明していきます。

本記事内ではFTXのCEOサム・バンクマン・フリードをSBFと略して呼称します。

1. SBFの歴史

 1. 1 オリジン

サム・バンクマン・フリード(SBF)は、1992年3月6日、カリフォルニア州サンタクララ郡で生まれ、スタンフォード大学の法学部教授であるバーバラ・フリードとジョセフ・バンクマンの2人の息子のうちの1人として恵まれた環境の中で育ちました。このことは、後に述べるように彼のその先の考え方に多大な影響を与えることになります。

2010年、SBFは物理学を学ぶためにMITに入学しました。本人曰く「数学オタク」として入学したそうです。最初の2、3年はアカデミックな仕事に就き、数学の教授になろうと考えていました。しかし研究にはあまり興味がないことに気づき視野を広げました。自分の能力や努力に見合うものを探したのです。

自分が世の中に最も良い影響を与えるにはどうしたらいいか、ということはなんとなくわかっていました。私は長い間功利主義に傾倒してきましたが、最近になって「効果的利他主義」にも興味を持ち始めました。これは世界に影響を与える方法を考え物事を数値化し最も効率的な方法を見つけようとする運動です。

そこで世界にインパクトを与えるにはどうしたらいいかを考え、物事を数値化し、最も効率的な方法は何かを考えました。人と話をすると基本的には「自分が良いと思う慈善団体や組織で働くと良い。ただ君(SBF)の長所と短所によってはもしかしたら直接慈善団体で働くよりも多くの寄付をすることができるかもしれない」と言われました。この考えについて思考してみるとかなり説得力のある主張に思えたのです。

SBFは給料を稼いで慈善活動に充てることがインパクトを与える最善の道だと確信し、大学3年生の夏にJane Street Capitalでインターンをし始めました。ただJane Street Capitalでインターンをしていた友人の中で楽しく働いていた人は少数でした。

1999年に設立されたJane Streetは、世界最大級の規模と高い評価を誇るクオンツ・トレーディング会社です。その評判と規模は今も変わらず、2020年には17兆ドルの証券取引を行っています。

2014年にSBFが卒業した後は夏休みを利用してフルタイムの仕事に就きました。これはとても良いことでした。SBFは「オタクの集団」に囲まれて、鋭いトレードのアイデアを見つけ出し、実行することに喜びを感じていました。SBFは後にアジアの暗号市場で目を引くような仕事をする前に、少しエキゾチックな雰囲気を醸し出す海外のETFに注目しました。

Jane Streetは素晴らしい職場だったと語る彼ですが、3年半が過ぎた頃若き金融マンは自分で何かを築き上げる時が来たと考えました。彼は当時の理由をこう語っています。

自分の人生でやってみたいことがたくさんあるんです。何が正解かはわからない。でも、そのうちの1つくらいはすごくうまくいくかもしれない。

 1.2 Alameda

どんなに楽観的に考えていたとしても、SBFでさえ自分の成功の規模とスピードに驚いたに違いありません。2017年にJane Streetを去った後、彼はみんなの見えていない機会について考えていました。その年の年末に市場を席巻したクリプトブームに興味を持ち、新たなエコシステムに目を向けました。

市場を研究し始めると、SBFのトレーディングの本能がオーバードライブし始めます。

この市場には流動性を必要とする非効率なシステムの特徴がよく現れています。基本的には突然の巨大な需要、急激な成長、大量の取引量、多くの個人ユーザー、そしてプラットフォームを構築する時間があまりないことです。流動性を確保する時間もありません。
なので非常に大きなボリュームと価格差が生じる可能性が高いものだと感じました。

SBFが米国とアジアの暗号市場の間に裁定取引の機会があることを理解し、その関心は確信に変わりました。

裁定取引
異なる市場間における同一あるいは同種の商品の価格差を利用して、無リスクあるいは最小のリスクで利益を確定する取引

韓国では需要の違いから、ビットコインなどの通貨が非常に高い価格で取引されていました。この「キムチプレミアム」と呼ばれる価格は50%に達することもあり、大きなチャンスだと考えられていました。アメリカの取引所で5,000ドルで買ったビットコインを、韓国ですぐに7,500ドルで売ることができるというわけです。

この非効率性に目をつけそれを利用しようとした企業がある一方で、SBFはその限界をいち早く認識していました。

韓国のウォンは持ち出し制限がある通貨であるためチャンスの大きさも無限ではありません。確かに儲けることはできますが、何億もの資金を繰り返し投入することは不可能でした。彼はもっと大きなものを探し始めます。

そこでSBFは、目立たないものの日本の市場が韓国の市場と似たような特徴を持っていることに気づきました。ビットコインの総購入額が多く、国内の取引所では10〜15%のプレミアムがついていました

また、日本円が持ち出し制限のある通貨ではないため、リアルマネーでの取引が可能であることも大きな特徴でした。

しかしそれは簡単なことではなく、彼は「複雑な仲介者のネットワークを必要とし、マネーロンダリングのように見えた 」とも語っています。

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SBFは、米国でビットコインを購入し日本で販売することで「1日に10%」の利益を得られるチャンスがあると考え、ついに動き始めます。

SBFは元GoogleのエンジニアでMITの卒業生であるゲイリー・ワンと、バークレー校でコンピュータサイエンスを学んだばかりで高校時代の知り合いであるニシャド・シンとともに、定量的な取引を行うAlameda Researchを設立するための資金を調達しました。これは彼の野望であり、クリプトのためのJane Streetだったのです。

日本の裁定取引による収益はSBFが想像していた通り異常なほどでした。最盛期には1億ドルに達したファンドを持つAlamedaはその資金をビットコイン市場に投入・再配置し、毎日10%つまり2,000万ドルを稼いでいました。

しかしSBFはそれだけでは満足しませんでした。Alamedaを設立してから約1年後、彼と彼のチームはさらに大きなチャンスを検討し始めました。それは暗号通貨取引所の構築です。

SBFはクリプト業界は技術的な水準が低いと感じていました。アラメダを運営する中で、SBFは未発達なクリプト業界にどれだけ改善の余地があるかを実感しました。

実際、Coinbaseなどが当時宣伝していたにもかかわらず、特に複雑な証券に興味がある人にとって、真の機関投資家レベルの取引はまだ先のことでした。

例えばBitMEXはデリバティブ取引を提供していましたが、他の多くの取引所と同様に停止やその他のパフォーマンス問題が発生しがちでした。SBFはAlamedaのチームが実際に経験を積むことで自分たちのようなプロの投資家のための取引所を作ることができると考えました。

 1.3 FTX

2018年末、SBF、ワン、シンの3人は、"トレーダーによる、トレーダーのための"暗号通貨取引所であるFTXの開発に着手しました。

しかし問題がありました。米国は暗号デリバティブ取引所を構築するには敵対的な環境だったのです。

米国の規制当局は新興の資産クラスに懐疑的で、特に投機的な投資には敵意を持っていました。例えばSECは2018年初めにICOブームを(それなりに)鎮圧し、その年のうちに取引所を注視していることを警告していました。

チームが攻撃計画を策定する中でSBFはある決断を下します。

FTXはアンティグア・バーブーダで法人化し、比較的暗号化しやすい香港に本社を置くことにしたのです。FTXはアンティグア・バーブーダで法人化し、香港に本社を置くことになりました。

しかしそれによって開発が遅れることはなかったようです。2019年5月、FTXは正式に取引を開始しました。以来2年間で180億ドル規模のビジネスに成長し、世界で最も人気のある取引所の1つとなったのです。

その多くは商品そのものや企業戦略によるものですが、SBFの役割は決して小さくはありません。FTXとは何か、そしてFTXが何になるのかを理解するためには、創業者の経歴を知るだけでなく、彼の真の姿を把握する必要があります。 

2. SBFを理解する

 2.1 プロファイリングの前に…

プロファイルを作成することは何か不謹慎なことのように思えます。書き手は息を切らして刺激的なフレーズを書き込んだり、過去のインタビューをすべて盗み聞きしたりして、対象者を執拗に観察する必要があるだけでなく、ときには深い理解と交差するかもしれない詮索心を招くことになります。短い会話からどれだけのことが学べるのでしょうか?また初対面の人との会話ではどの程度の探究心が必要なのでしょうか?また、人生の堆積物からどのような洞察を得ることができるでしょうか?古いツイート、CNBCのセクション、長いポッドキャストなどに価値はあるのでしょうか?

目的は手段を部分的にしか正当化しません。

結局のところ、ほとんどの場合対象者も観察しているのです。たとえあなたが彼らと直接会話していなくても、あなたは彼らと同じように会話していたかもしれません。結局のところあなたのような人がいたのです。その注目を意識して、現代の経営者は議論の方向性を確立された物語のおなじみのマンネリ化に向けずにはいられないのです。観察者の仕事が肖像画を描くことだとすれば、被験者の仕事はその手を導くことです。

サム・バンクマン・フリードを研究する上で私はこのことを特に心配しています。これは彼を悪く言っているわけではありません。彼は非常に親しみやすく、フレンドリーな経営者で、ツイッターでチャットしてから数分で電話の約束をしました。彼は時間と情報を惜しみなく提供してくれました。しかし彼を取り上げた記事はどれも、「彼は若くて大金持ちだ!」「彼の部屋でお手玉をして寝ている!」「世界を大切にしている!」といったことを繰り返しています。

これらはすべて真実でしょう。そして私たちは予想通りそれらについて話すことになります。しかし、このようなSBFについての説明の下に(そしてそれを超えて)、広大なヒンターランドの感覚があるのです。知的にも感情的にも深い人生を歩んできた人で、おそらく親しい人でさえもそれに触れることは難しいのです。

私は精一杯盗撮者を演じてきました。しかし、私には決定的な説明もSBFの精神を解き明かす魔法のような秘密もありません。ただどんなに不完全なミッションであっても、理解しようとする試みは行ってきました。今回は、特に彼の性格を表していると思われる4つの特徴を調べたいと思います。 

1. カオスな善良さと倫理観の一致
2. 処理速度が速い
3. 既成概念への疑念
4. 稀有な視点の切り替え能力

以下ではこれらの特性の長所とそのトレードオフを考えてみたいと思います。

 2.2 カオスな善良さと倫理観の一致

リーグ・オブ・レジェンドのようなファンタジーゲームに興味を持っていることから、SBFは人生のどこかでダンジョンズ&ドラゴンズに手を出したことがあるのではないかと思います。まだロールプレイングゲームに夢中になったことがない人のために説明すると、RPGは基本的に、自分のキャラクターを作り、他のパーティーと一緒にクエストを遂行するというものです。

キャラクターを作成する際には、人間やエルフなどの種族、ローグやウィザードなどの職業、そしてアラインメントを選択することになります。この最後のアラインメントの決定では、自分のキャラクターの道徳観や倫理観を、「法と混沌」と「悪と善」の2つの軸で決めることになります。選択肢は次のようなものです。

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キャプテン・アメリカのようなキャラクターは、典型的なLawful Good alignmentのキャラクターです。彼はルールを守り、博愛主義的な欲望に突き動かされています。対照的に、ジョーカーのような人物は混沌とした悪の例です。彼はただ世界が燃えるのを見たいのです。

SBFはこの地球上で最もDhaotic Goodな創業者かもしれません。SBFは少なくとも一面では利他主義に駆られていることは明らかです。しかし彼のFTXの経営方針から境界線の範囲内で速くプレイすることを望んでいることが見てとれます。

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彼の両軸でのポジショニングを、まず”良いこと”から紐解いていきましょう。

前述のように、SBFは富裕層になる以前から利他主義に真摯に取り組んできました。Alamedaを設立する前、彼はThe Centre for Effective Altruismで数ヶ月間ディレクターを務めました。現在FTXは純報酬の1%を慈善団体に寄付することを約束しており、その額はこれまでに1,000万ドルを超えています。

SBFは、ピーター・シンガーや初期の功利主義者であるジェレミ・ベンサムの研究に興味を持っています。菜食主義者になるというSBFの決断は、道徳に対する功利主義の分析的アプローチと呼応しています。

私たちが30分かけて食べるために、6〜8週間も拷問される鶏肉。これでは意味がありません。

SBFの倫理観は、単に抽象的で彼が活動している世界から切り離されたものではありません。SBFはSushi Swapの暫定的なリーダーとしての役割を積極的に果たすことで、暗号のエコシステムに対する義務感も示しています。この分散型取引所の生みの親であるシェフ・ノミがトークンを携えてプロジェクトから逃げ出したとき、SBFは権力の空白に入り込み、船を安定させました。

このことについて彼に尋ねたところ、彼は「必要な時に必要なことをした」と言いました。また彼はこう付け加えます。

ノミの件でコミュニティが大変なことになっていました。私はそのお手伝いをしていただけです。自立できるようにするためにね。このチームが成し遂げたことに私はとても興奮しています。

彼の善意の行動を前にするとSBFの動機を過大評価してしまいそうになります。実際に多くのメディアは、彼の物語を資本主義の枠組みの中での救世主のように扱っています。

しかし、それはFTXの現実を無視しています。高い使命感を持つことは助けになりますが、純粋な興味に駆られなければ長時間の労働と絶え間ないストレスを維持することは困難です。SBFが道徳的な意識を持っていることは賞賛に値しますが、WeWorkやGoopの創業者のような無意味な商売人が好むような崇高な装飾を彼の会社に背負わせる必要はありません。FTXはビジネスであり、ビジネスマンによって運営されているのです。

SBFの「良いものを選ぶ」の2つ目は、もちろん「カオスを好む」ことです。これは、個人レベルと組織レベルの両方に現れています。

SBFは無秩序な状態を好むようです。彼と話した日、彼は私が16回目のミーティングだと言いました。

1. メディアインタビュー
2. メディアインタビュー
3. ベンチャー投資先候補との打ち合わせ
4. FTX Payパートナー候補との打ち合わせ
5. 投資銀行とのキャッチボール
6. ライセンス問題についての社内会議
7. 規制関連の社内会議
8. NFT製品の候補についての社内ミーティング
9. 新規事業のパートナー候補との面談
10. 他国の規制問題について弁護士と議論
11. 規制問題に関する社内報告会
12. 買収を検討している企業とのキャッチボール
13. 法務・コンプライアンスに関する社内会議
14. FTX Payを強化するためのベンチャー投資候補との話し合い
15. スポーツフランチャイズとのFTX推奨の話し合い
16. The Generalistのインタビュー

このように法務面での話し合いが4回、面談が3回、投資評価が2回、買収候補が1回、その他様々な案件がありました。

SBFはこういった入り乱れた仕事が好きなのだそうです。これは彼の天性の才能と、ストイックな仕事ぶりのおかげでしょう。

睡眠時間は2時間程度で、オフィスのあちこちに置かれたビーンバッグチェアに座っているのがSBFの特徴のひとつです。彼の投資家の一人は、「彼は24時間体制で私のメールに返信してくれる」と語っています。

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このようなライフスタイルの耐久性はさておき、SBFのカオスへの嗜好は、彼が事業を展開する市場に特に適していると感じます。Alamedaとの日本の暗号通貨アービトラージを実行したときに示したように、彼は物事が不安定になったときに最高の力を発揮します。

世界がバランスを取り戻そうとし、その過程で混乱しているときを彼は逃しません。混乱した状況を見極めそこに道筋をつけ、素早く行動する才能があるのです。

SBFは私生活をギリギリのところで過ごすことに満足しているように会社を経営する際にも同じことをしたいと考えているようです。彼は「人生の大半は余白の中で生きている」と語っています。おそらくSBFは、ビジネスチャンスもその周辺にあると考えているのでしょう。

FTXの設立当初から、彼は自分の目標を達成するために物議を醸すことも厭いません。

この記事を書くにあたり、AlamedaとFTXの初期を知る人に話を聞いたところ、2つの組織の関係が明らかに利益相反であることを指摘されました。FTXの取引所はそのCEOが設立したマーケットメーカーを優遇するのではないか。他のトレーダーは、自分たちが公平な扱いを受けていることをどうやって確認できるでしょうか?

実際にはそうではなかったかもしれません。私が話を聞いた人は、FTXにとってAlamedaが当初新しい市場に流動性を提供するためにいかに重要であったかを語っていました。しかしAlamedaが何か見返りを得ていたかどうかはあまり明らかではありません。

その関係者は、FTXが強いトラフィックを集めているのはこのような競争の激しい市場を引用しているからだと述べています。これはAlamedaが他社と同じ土俵で勝負して損をした(実質的にFTXを補助した)のか、それともAlamedaが何らかの利益を得たのか、という2つの状況を示唆しています。

いずれも違法ではありませんがかなり難しい問題です。
ただこれまでのところそのリスクに見合うだけの成果を上げています。SBFは両組織を新たなピークへと導きました。時間が経つにつれ、AlamedaとFTXは独立性を増し、潜在的な利益相反が減少しているように見えます。

しかし許容範囲の限界を超えて活動しようとする姿勢は、SBFの方向性とたとえ波乱万丈であっても勝ちたいという願望を物語っていると言えるでしょう。

そうは言っても、混沌とした "いいとこ取り "には、もちろん欠点もあります。

SBFの運動量はその場では必要かもしれませんが持続可能とは思えません。睡眠不足の状態を維持できるのは異常な人間のみです。SBFはその一人なのでしょうか?旧友や家族が一番よく知っているでしょう。この問題の報道はFTXからのみ行われているようなので、彼は少数の不眠症患者ではないと思われます。(編集部:SBFはこの記事の後、「実は15年ほど前から不眠症だった」と話している。彼は睡眠との関係を「やや複雑」と表現しています。) 

マッチョな投資家たちは、創業者にこのような厄介な身体的制限を乗り越えろと主張しますが、生物学的な要求は特に私たちを追いつめてしまいがちです。世代を超えたビジネスを構築するというストレスは、燃え尽き症候群の可能性をさらに高めるものです。

またそれよりもここで怖いのは、SBFが成功したいという思いから、会社を現実の、あるいは認識されている何らかの境界線を越えてしまうことです。例えばある暗号投資家にFTXの規制リスクについて尋ねたところ、「いつかは罰則を受けることになるのではないか?おそらくね。」と答え、それが会社の軌道にほとんど影響を与えないだろうと考えているとも述べました。

経営者は誰でも失敗する可能性がありますが、SBFが自分のビジネスのリスクを認識していることは明らかです。そのた、本当に致命的な失態をイメージすることは難しくなっています。混沌としていますがSBFは本当に計算高い人です。

 2.3 脅威の処理速度

SBFがこれだけのインプットをこなせるのは、彼の処理能力が優れているからでしょう。1日に16件もの会議をこなしているのはもはや彼の脳がそれを必要としているからではないかと思えてきます。私たちはその日の気分に合わせて2、3のプロジェクトに関心を持つのが相場ですが、SBFは1ダース以上のプロジェクトに関心を持っているようです。

現在彼は3つの組織のトップです。

Alameda、FTX、そしてFTXから独立した分散型取引所であるSerumです。最近はAlamedaでの活動が減っているとのことだが、それにしても管理するコンテキストスイッチの数は膨大です。もちろん、SushiSwapでの活動も含みますから尚更でしょう。

SBFは彼のこの分野での能力について語り、そのトレードオフも明確にしています。今年2月のツイートでは、彼の心の動きを少し紹介しています。

私の理解ではコンピュータのメモリには2つのタイプがあります。RAMとハードドライブです。
RAMはアクセスが速く、高価で、小さい。
ハードドライブは遅く、安く、そして大きい。
私が今使っているコンピュータには、64GBのRAMと500GBのディスクスペースがあります。
また、RAMはコンピュータを再起動するたびに空になりますが、ハードディスクは持続し、状態を保存することができます。
いずれにしても、この方法は私がどのように物事を覚えているかを考えるのに有効な方法でしょう。
私は大量のRAMと、比較的小さなハードドライブを持っていると思います。

トレードオフはSBFが彼の計算では「比較的小さなハードドライブ」を持っているということではありません。

実際、それが明らかになるのは、このスレッドの後半になってからです。SBFは、オンライン対戦ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」をよくプレイする理由を説明する中で、こう記しています。

睡眠と仕事のトレードオフを日常的に行っている人が想像する以上に私はたくさんの遊びをしています。
なぜか?
答えは1つで、 LoLの最も普遍的なことはプレイした人が皆プレイしなければよかったと言うことです。
...
そしてそれがまさに答えなのかもしれません。そうじゃないかもしれないけど。
...
本当に疲れているときに、なぜか本能的にLoLを開いてしまうことがあるのです。肉体的に疲れていて、寝ることもある。もちろん精神的に疲れているときもあるんです。 頭の中がグルグル回っていて、RAMには大事なものがいっぱい入っているんです。
なぜなら私はディスクスペースをあまり持っていないし、あまり信用していないからだ。 私は自分の人生をRAMの中で生きています。
でもそれを空にしたくてもできないのです。
良い意味でも悪い意味でも、私のアクティブなメモリにとって十分価値のある考えはそこから離れることはありません。
多くの人にとって、短期記憶はすぐに忘れてしまうことのためのものです。
しかし、私は覚えておくべきこと、やっておくべきこと、考えておくべきことを頭の中にいっぱい詰め込んでいるので、それらの考えはしばらくの間、残ります。
時には永遠に。
なぜならRAMからハードドライブに移行すると、ほとんど消えてしまうからです。 私が記憶している限り、世界は生き続けるのです。
とにかく、頭の中がいっぱいになりすぎたり、厳しいことや疲れることでいっぱいになってしまうことがあります。 それを落ち着かせたい。
ビーンバッグの上に横になってみても、何の役にも立ちませんでした。 私の心はまだ回転しています。
そのループする思考にしがみついている。
私は再び不眠症になって目を覚ます
...
そして、League of Legendsを開いてみる。
そして、何も考えずにゲームに入り、ドラフトして、始める
......
他のことを考える余裕はない。
そうして私の心は、責任ではなくラストヒットにこだわるという、新しい、全く異なる思考のループに移行します。
そして、古い思考のループ(疲れるもの)は、私のアクティブな意識から追い出され、一人で回転するようになります。 
時間が経ちそれが戻ってくる。 数分後にはスーパーミニオンが我々のネクサスを制圧し、私の心はリーグの考えを捨て、古い考えを歓迎するでしょう。
しかし、私は30分間の心の平穏を手に入れ、一般的に睡眠中に行われることを行う時間を手に入れました。
心を休め、休息させるための時間です。
LoLをプレイする時間は自分の考えを処理し、整理し、納得する時間です。 少なくとも、少しの間は。
そして、仕事に戻るのです。

ソーシャルメディアのドーパミンの餌から離れて、別の文脈で読むと非常に美しい文章になります。SBFはCEOであると同時に優れた詩人でもあり、息子のアレンジに芸術を見出すのでしょう。

しかし、処理速度に関しては、SBFには超自然的な能力があるものの、それが疲労の一因となっている可能性があることは明らかです。繰り返しになりますが、FTXの創業者の負担を軽減するために、投資家やリーダーが十分なリソースを確保することが必要です。

 2.4 既成概念への疑念

私の好きな言葉のひとつに、マキアヴェリの『君主論』からの引用があります。

自分自身が賢くない王子は、賢明な助言を受けることができない...良い助言は、それを求める王子の抜け目なさにかかっている。

SBFはこの考え方を体現しています。すべての意見が、どこかの師から聞いたものではなく、ゼロから構築されたものであることが感じられます。

例えば、"転ばぬ先の杖 "という言葉に納得がいかないという話もありました。

そうなんですか?

SBFの問いかけに、「その哲学やアドバイスで、あなたは世の中に価値を与えていますか?」と反論していました。

これはちょっとした逸話ですが、SBFの考え方や問題解決の方法を例示しています。彼は従来の常識に健全な懐疑心を持ち、第一原理から考案します。これは、FTXの投資家の一人であるマルチコイン・キャピタルのカイル・サマニが強調した特徴でもあります。

サマニはSBFがこの点で優れており、"第一次の正しさ "にこだわっていることを何度も強調していました。その中でサマニは、SBFがSerumをイーサリアムではなくSolanaで構築することを検討したときの会話を思い出していました。。

SBFはSamaniとSolanaの創業者であるAnatoly Yakovenkoとのわずか30分の電話で、新しいシステムのニーズを考え最適なスループットや許容できるレイテンシーなどの要素を分析しました。そして最終的に彼は決断を下し、SerumはSolanaを使いました。

偉大な起業家のほとんどは第一原理から考えることを好む傾向があります。イノベーションを起こすには、固定的に考えられている問題を見て、異なる要素を混ぜ合わせることが必要な場合が多いのです。このアプローチにトレードオフがあるとすればそれはスピードです。しかしSBFはそれを問題にしていないようです。

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サム・バンクマン・フリードの研究をして私は感銘を受けました。投資家、クリプトの専門家、そして彼自身へのインタビューを通して、私は彼が特別な経営者であり、並外れた人間であるという感覚に襲われました。

ある関係者は、まったく真面目な話として、「サムは私がこれまでに会った中で最も有能な人間です。そして、それは可能な限り広く理解されるべきだ」と語っています。

SBFは、オープンであると同時に謎めいており、実用的であると同時に知的でもあり、倫理的な原則を守ると同時にオペレーション上の柔軟性も備えているという、この分野では理想的ともいえる珍しい特性を持っています。他の誰とも異なり、彼は混沌とした状況の中でも落ち着くことができ、刻々と変化するリスクの形を計算して調整することができます。

FTXで彼は自分の大聖堂を見つけたのです。最速で成長している暗号化取引所は驚くほど創造的であり、驚くほど大胆です。

だからといって論争を巻き起こしていないわけではありません。

そこで後編ではこの会社の成功と弱点を探ります。ただ今はこの会社にふさわしい支配者がいることを確信しています。

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ここまでお読みいただきありがとうございました。

今回はFTX3部作のPart 1をお届けしました。Part 2とPart 3は近日中に翻訳を行う予定です。

僕のTwitterでは主にフィンテックの情報について毎日更新をしています。今回の記事が気に入った方はぜひフォローしてくださると嬉しいです。

また、僕のnoteでは他にも海外の急成長スタートアップを中心に記事を書いたり、翻訳をしています。以下におすすめの記事を並べておきますので、気になる方はぜひご覧ください。











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