新型うつ病

 休職期間で時間が出来たので、映画を観たり本を読んだりして過ごしている。

 そもそもうつ病と診断されて回復に向かいつつあるなか読む本とは何だろうか?

 個人的なことを言わせてもらえれば、自分の精神状態が悪いときに明るくて楽しく、気持ちが前向きになるようなものは読みたくも観たくもなかった。もともと、陰鬱とした作品が好きということもあるが、とにかく今は暗くて厭なものを読んで沈みたいのだ。

 だからこそ、半ば自虐的にうつ病に関する本や精神科医によるエッセイなどを読んで過ごしていた。

 そんな折に新型うつ病という言葉を知った。

 不眠や生活習慣の乱れ(暴飲暴食や拒食、風呂に入らない、意気消沈して何もやる気が起きない等)といった従来のうつ病と違い、復調しているのにも関わらず職場復帰の時期が近づくと、体調が悪くなったり、休職を延長したがるような態度を言い表すそうだ。また、外出を問題としておらず、例えば旅行に出かけることも特徴的とのことだ。

 体調は良くなっている。だが、もっと休みたい。まさに今の自分にピッタリな言葉だ。自分の時間は停滞していても、世間の時間は淀みなく流れている。

 前回の診断の際、精神科医とのやり取りで復調していると伝えたところ「あと、どのくらい休みますか」という質問に対し、あと2ヶ月ほど休みたいですと答えると「えっ!?」と一瞬、意表を突かれていた。その後、ニヤけたような反応で「わかりました」と医師は答えた。

 うつ病は復調しているにも関わらず、まるで声高にズル休みを宣言するような物言いに、またこの手の患者か‥と思い起こさせる態度だったのかもしれない。

 


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