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ナッジで伝わるプレゼンに⑲:インプット過多になっていない?

プレゼンの会場で、発表者が直前までスライド作成する姿をよく見かけます。かなり悲壮感あふれる形相です。ふと、その姿と18歳の自分が重なりました。

18歳の私

地方の公立高校では、受験対策としてインプット至上主義の勉強法が推奨されていました。「教科書を隅から隅まで頭に入れておけば、どんな問題が出されても大丈夫」。高校の先生はそう力説し、私もその言葉を信じていました。1校目の入試当日、校門前で予備校が配っていた「傾向と対策」には、「例年同様、教科書レベルの問題は少なく、過去問と模試を繰り返し解くことが前提」と書かれていました。
過去問を全く解いていなかった私は、集中力や時間をどう配分するかがわからず、1時間目の英語で早くも疲弊してしまいました。アウトプットしてこなかったため、これまで苦労して詰め込んだ知識が、出題内容と全くフィットしていないのです。試験中も、空回りした受験勉強をくよくよと思い出し、問題が頭に入ってきません。
私は帰り道、これから受験する大学の赤本を買い揃え、ホテルで解きまくりました。(赤本を解いた大学は、4校受かりました)

プレゼンの話に戻ります。会場でギリギリまでスライドを作成している発表者は、アウトプット不足であり、実際に本番ではどうしてもプレゼンが洗練されていない可能性が高いです。そして、発表者の表情には、「やり残し感」が見受けられます。

アウトプット軽視にならないためには

私は、重要なプレゼンの場合、発表内容が決まるとすぐに当日の状況を具体的にイメージします。人の心理には「インプットは今すぐやらないといけないけれど、アウトプットは当日までに何とかなるだろう」という二面性(双曲割引性)があります。これに抗うのは、ゴールを具体的にイメージし、そこから逆算したスケジュールを先に決めておかない限り、無理です(特に私の場合)。

【ゴールのイメージ】
「100人が私の20分間の発表を聞く。2,000分間の時間が割かれる。そして、満場のスターティングオベーションで、終わった後は名刺交換の行列ができ、SNSで私のハッシュタグが付いた投稿が急増する」

このようにイメージすると、万全の準備でのぞむ気持ちが高まります。モチベーションが上がったところで、スケジュールを立てます。
「一発で全員に伝えるには、予行演習は最低600分必要かな。自分での練習は録画も入れて30分/回×10回、協力者を募っての予行演習は40分/回×10回。では、本番2週間前には、スライドをざっくり完成させ、アウトプットを始める必要があるかな」…このようなイメージです。
私のスタイルは、スライドのスタートとゴールをしっかり固め、スライドの中盤は予行演習でフィードバックを受けながら考えるというものです。これは、いろんな道筋を試すことで、ベストなプレゼンを提供できると信じているからです。
プレゼンの目的は「相手に伝わること」で、目的達成へのベストな答えは、自分よりも相手の方が知っています。指摘を受ける態勢を整えて、早めに予行演習を始めた方が、目的が達成できます。

スライドづくりに時間がかかり、予行演習のスケジュールをたてられない時は、大学受験のことを思い出します。あの絶望感は、二度と味わいたくないです。何より、絶望感を抱いたままのプレゼンを聞かせるのは、参加者に申し訳ないです。私は満場のスターティングオベーションで、参加者と一緒に最高の時間を過ごしたいのです。

スライド作成の所要時間を計測すると、合計20時間くらいはかかっているものです。もし、プレゼン本番で後悔することが続くようなら、インプットとアウトプットの配分を変えてみるのもよいかもしれません。
1時間かけて、スライドのアニメーションを凝ったものにしても、相手はそれを見て「フーン」と感じるだけかもしれません。
でも、1時間かけて予行演習すると、必ず相手の心に響くものに近づいていきます。

今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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