むーちゃんのこと③

むーちゃん年中の秋。そろそろ運動会の練習期間になるので走る練習をしようと思い、二人で公園に向かった。
「むーちゃん、こうやって腕をふるとめっちゃ早く走れるよ!やってみて?」
と、私がまず腕をふって見せた。
「こう?!」
… ん?なんか振り方変じゃない?
確かに腕を動かしてるんだけどそれなんか太鼓を叩くときのやり方じゃない?
「違う違う、そうじゃなくて腕を曲げてこう後ろに引いて前に出すように…。」
「こう?!」
今度は腕をグルグル回しだす。
「それも違う、そうじゃなくてこうやって…」
「こう?!」
違う。何が違うってここでは上手く説明出来ないが(すみません)全然動きが違うのだ。ギクシャクしてる。腕をふる、という事が簡単に伝わると思ってたのに全然伝わらない。
え?なんで?どうしてこの動きがこんなに出来ないの?難しいのかな?私の伝え方が悪いのかな?むーちゃんってそもそもどうやって走ってたっけ?
「むーちゃんごめん、今言ったこと忘れてちょっと走ってみて?」
「うん、分かった。行くよ!」
走り出すむーちゃん。改めて見るとやはり腕はふらずに走っている。なるほど。
「分かったむーちゃん、ありがとう。じゃあさ今度はこうやって腕だけふってみて… そうそう!じゃあそのまま走ってみて!よーいどん!」
…。
やっぱり腕をぎこちなくふり、脚もなんだか力が入ってしまい、ついには左の腕と左の脚、右の腕と右の脚が同じに出てしまいさっぱり訳が分からなくなってしまったのだ。私は数をチラッと教えたとき(むーちゃんの事②)の事がよぎった。教えてる事が違えどあの時と同じ感覚だった。ここで伝わらない、つまずくくとは思っていなかった。え…ここで?という感じ。自分の中で、「普通ならここは理解出来るだろう」という予想を軽々と今回も超えていく。私も段々どう教えて良いか分からない。なかなか要領を得ないむーちゃんに対してまたどんどんイライラしていく。むーちゃんがちゃんと私の話を聞いてないせいなのかも知れない。だってこんな誰でも出来る事が出来ないなんておかしいよ。
「むーちゃんちゃんとやってみ?!よく見てよ!」
むーちゃんは健気にまたやってるみる。だけどだけどやっぱりおかしい。
「もうやりたくない…」ついにむーちゃんは泣き出してしまった…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?