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続・子ども図書館


前回に引き続き、番外編の第2回目、東京都内の子ども図書館をご紹介していきます。今回はそれぞれ個性をもった、小さな図書館2館です。

1.三鷹市星と森と絵本の家

ホームページを見たときに、まず、和風の外観に目を奪われました。こちらの建物は大正時代に建設された、国立天文台旧1号官舎を復元、再築したものだそうです。「星と森と絵本の家」、名前には以下の意味が込められているそうです。

星→国立天文台の知的資源の活用や天文学者等の協力
森→天文台の森の豊かな自然の中にあるという環境
絵本→子どもと絵本の活動に集う多彩な人々との協働
家→大正時代の感謝を保存活用した建物の魅力

こちらは、国立天文台の敷地の中に位置しています。正門を入り、緑に囲まれた通りをしばらくいくと、建物が見えてきました。併設されている管理棟が入り口になっており、一歩足を踏み入れると、受付の方から声をかけられました。来館者は木製の葉っぱを一枚もらい、そばにたてかけられた、大きな木のオブジェにかけるしくみで、子どものみならず、大人もほっこりする手続きになっています。

 読書スペースにいたるまでの廊下には、その日は地元の絵本作家の方が描かれた原画が展示されていました。その先の庁舎の入り口から靴を脱いで中に入ります。大正時代の建物ですから、畳の部屋がそのままの形で残され、各部屋はふすまで仕切られていました。なんとも落ち着く空間です。

 こちらの図書館の特徴は、本の分類にもあると思います。もり、しょくぶつ、どうぶつ、ひと、くらし、ほし、ちきゅうなどのテーマで本が分けられています。特にほしに関しては国立天文台の天文学者の協力があるそうで、宇宙に関心のある子には特におすすめです。蔵書数は2,800冊だそうです。

こじんまりとした図書館ですが、奥には小さな子どもたちが遊べるスペースもありました。緑豊かな、静かな落ち着ける空間のなかでのんびりすごすのに良さそうです。

2.東京子ども図書館

こちらは、中野区にある、子どもの本と読書を専門とする私立の図書館です。4つの家庭文庫からその歴史は始まりました。

1955年、1956年に当時、家庭の主婦だった土屋茂子さんが開いた2つの土屋文庫、1958年に児童文学の作者、翻訳家だった石井桃子さんが自宅に開いた「かつら文庫」、そして1967年に児童図書館員を目指し、日本、そしてアメリカで学びを深めた、松岡涼子さんが開いた松の実文庫、こちらが母体となり、1974年に設立されたそうです。

家庭文庫とは、まさに個人が家庭と本を地域の子どもたちに貸し出したり、お話を聞かせたりする活動です。子どもたちへの思い、熱意があってこそ、実ったものだといえるでしょう。 これらの草の根の取り組みが、やがて公共図書館に児童室が設置されるきっかけとなったのだそうです。

こちらの図書館は幼児さんから中高生まで、選りすぐられた本を提供するほかに、様々な取り組みが行われています。子どもたちのために絵本を読む「おはなしのじかん」、親子で楽しめる「わらべうたの会」、ベテランスタッフがむかし遊びや工作を子どもたちと楽しむ「おばあさんのいす」など、小規模だからこそできるふれあいを大切にしているのだな、と感じます。

私が訪れたときは、図書館スタッフのかたが、来訪した子どもたちに個別で本を読んであげていました。お話を語り、聞かせることは子どもたちを楽しく読書に導くことができる。この図書館の大事にしている信念なのだそうです。

このほかにも在日日系ブラジル人の子どもたちへの読書支援、子どもと本の世界で働きたい大人の人材育成、児童図書館員のための研修プログラムなど、本を通じた様々な活動をされています。

図書館の理念の中の、以下の言葉が心に残りましたので、最後にご紹介します。

「ことばは、愛情のしるしであり、あらゆる精神活動の土台です。想像力は、人間を置かれた場所から、より広い世界へはばたかせる翼です。そして、本は、このふたつの力を育てるもっとも強力な手段です。」

スタッフの方が気軽に声をかけてくださいます。おすすめの本を聞いてみたり、子ども図書館の歴史についての貴重なお話など聞けるかもしれません。


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