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カフェ色々~みるカフェ~

2025年11月15日に、日本で初めてのデフリンピックが開催予定です。デフリンピックは聴覚障がいを持つ人のための国際スポーツ大会で、オリンピック、スぺシャルオリンピック、パラリンピックとともに国際オリンピック委員会で認められた大会です。デフリンピックについては、詳しく書いたものがありますので、以下をご覧ください。

デフリンピックを2年後にひかえ、11月15日~26日まで期間限定でデジタル技術を活用して、言葉を見える化し、コミュニケーションをとることができる「みるカフェ」を東京都がオープンしました。

今回は、カフェへ訪問した際の体験と、聞こえない、聞こえにくい人も聞こえる人も通じ合える最新の機器などを紹介していきます。


1.みるカフェ


カフェへ訪問時は期間限定のこともあってか、行列ができていて、テーブルにつくまで、1時間ほどかかりました。

店内に入ると、デフリンピック競技の様子がスクリーンに写し出されていました。自転車競技の様子でしたが、迫力がありついつい見入ってしまいました。

店員の方々は、手話や「こえとら」というコミュニケーションアプリを使用してオーダーを取っていました。呼び出しは注文ボタンで、メニューに書かれた番号を指さしして伝えます。

店内は門 秀彦さんのアート展示もされていました。門さんは、ろう者のご両親をもつCODA(Children Of Deaf Adults)で、現在は手話アートと呼ばれる、手話をモチーフにした作品を展開されています。

みるカフェに飾られていた門さんの作品

2.最新のコミュニケーション機器


新しいコミュニケーション機器の体験コーナーもあり、ろう者の方々もたくさんみえていました。私も体験してみました。

(1)オンテナ


オンテナはクリップ式のデバイスで、髪や襟など自身が感じやすいところへ装着します。

側面のスイッチで切り替えができるようになっていて、①店内のBGMなど特定の音の振動を感じる②外部音を拾い、振動とともに、音を光で伝える、という2つの機能を持っていました。例えば車が近づいてきたとき、タイマーや警報などの音に反応し、即座に気づくことができます。

オンテナはアクセサリー型の装置で、髪の毛、耳たぶ、えり、そでなどに着けて使用します。2019年に製品化され、現在、日本の8割のろう学校で導入され、発話練習やリズム練習などで活用されているそうです。ろうや難聴の子どもたちが、タイミングを合わせて太鼓を演奏したり、ダンスを踊ることができるようになりました。

オンテナは、開発者の本田達也さんの大学時代の卒業研究から始まりました。その後、経済産業省所管の。情報処理推進機構主催の「未踏事業」に採択されアップデートが行われていきました。

本田さんが初めてろう者と出会ったのは、大学1年生の時。文化祭で道に迷っているろう者の方の道案内をし、その方から手話教室に誘われたことがきっかけだったそうです。その後手話通訳のボランティアや手話サークルの立ちあげなどの活動をする中で「無音の世界で生活している、ろうしゃとともに、音を感じられるようになりたい」と考え、その思いが開発につながりました。

開発にはろう者の方々に使ってもらい、意見をもらって作り直すという作業を繰り返したといいます。AIの活用については様々な議論がなされているところですが、このような活用はどんどん進めてほしいと心から感じます。

(2)Hapbeat

Hapbeatは、振動を体に伝えることで、音の姿を直感的に体感できるネックレス型デバイスです。音の波形に基づいた繊細な振動を表現することができること、小型でもパワフルな振動を表現可能なこと、ネックレス型で装着が簡単にできることが特長です。こちらは東工大初のベンチャー事業だそうです。

体験では、まず数種類の映像から1つ選択します。私は花火を選びました。試してみると、音にあわせ、振動とリズムを首にかけたコードから感じることができ、映像のみの場合より、より臨場感を感じました。映画を見る場合も、様々な音が振動で伝わることで、物語の世界に、より没入することができ、また迫力を感じることができるだろうと思いました。

(3)KOTOBAL

こちらはろう者、聞こえにくい高齢者だけえなく、外国籍の人々とのコミュニケーションにも役立つ機器です。透明ディスプレイ上に、リアルタイムに字幕を表示するシステムで、字幕と透明ディスプレイ越しに相手の表情やしぐさを見ながら会話することができるようになりました。AI機械翻訳により、31言語に対応が可能のため、外国籍の人々との会話にも適用できる優れものです。

最近では、在留外国人の人たちには、災害などの緊急時に、やさしい日本語が広く活用されることが期待されています。KOTOBALでは「やさしい日本語AI音声翻訳サービス」を導入し、自治体など行政向けに、さらに支援を広げています。

また、KOTOBALはタブレットやスマートホンでの音声筆談、機械翻訳としても利用可能です。

これらの機器の開発プロセスを知り、障がいをもつ当事者と、研究者、開発者が共に課題を解決する機会を持ち、コミュニケーションをとることの重要性を教えられた気がします。今後の開発に期待が膨らみます。

※参考文献
落合陽一、菅野祐介、本田達也、遠藤謙、島影圭佑、設楽明寿著,
XDiversityという可能性の挑戦,講談社,2023

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