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聴覚障がいは、見えにくい障がいと言われる

9月23日は「手話言語の国際デー」でした。手話言語の国際デーは、2017年に国連総会で決議されました。手話言語が音声言語と対等であることを認め、ろう者の人権が完全に保障されるよう、意識高める手段を講じることが求められています。


1.聴覚障害について

聴覚障がいとは、音が聞こえない、または聞こえにくい状態のことを言います。生まれつき、病気、事故などで生じる場合や、加齢による場合などがあります。聴覚障がいになると、会話が分かりにくい、情報が得にくい、コミュニケーションが取りにくいといった不便さが生じますが、個人により、その状況は様々です。

 生まれた時から、また乳幼児期など、音声言語獲得期以前に重い聴覚障がいになった方は、ろう者、音声言語獲得期以後に重い聴覚障がいになった方は中途失聴者と呼ばれます。中途失聴は話すことに不自由はないが、聞くことに困難がある場合が多いです。軽・中度の聴覚障がいで補聴器など使って会話ができる方を難聴者と呼ぶことがあります。

2.聞こえをサポートする機器について

私は、職場である福祉施設で聴覚障害のある方と会話をする際、筆談か読唇で行っていました。コロナ禍では、マスクをつけていたので、読唇を行う際は、マスクをずらすのですが、周囲への気遣いも必要で不便を感じたことも多かったです。口の見えるマスクなどもでていましたが、聞き手である私たちは、かすかな話し手の声もあわせて聞くことで、より理解ができるので、マスクで音がさえぎられてしまうのも、とても困ったのを覚えています。

令和4年5月に、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が公布・施行されました。障害を持つ人があらゆる分野の活動に参加するため、情報の取得利用と円滑な意思疎通が極めて重要とされ、障害の内容に応じて、住む地域にかかわらず、情報通信技術を含む手段を選択できるようにし、情報バリアフリー社会の実現することが求められています。今回は聞こえをサポートする機器についてご紹介していきます。

1)補聴器

聞こえをサポートするグッズは様々ありますが、一番知られているのは、補聴器だと思います。今は耳掛け式のものもデザインが素敵なものが出まわっています。また、外から見えにくい耳穴式のものや、音声をデジタル信号化するデジタル補聴器もあります。デジタル補聴器は騒がしい中でも会話が比較的、聞き取りやすいと言われています。

2)デジタルワイヤレス補聴援助システム


話し手のワイヤレスマイクロホンから、音声がデジタル無線方式で、聞き手の受信機に送信されるデジタルワイヤレス補聴援助システム「ロジャー」。こちらは学校、職場、レストランやイベント会場など話し手が遠方にいる場合でも、よりクリアに聞き取ることができます。

3)対話支援機器


対話支援機器は話し手がマイクから入力した音声の解像度をアップさせ、クリアな音声へと変換させて聞き手に届けるシステムになっています。病院、介護施設、受付窓口など様々な場所で利用されています。

4)便利なアプリ


スマホやタブレットで筆談が可能な「UD手書き」は書く、消す、戻すの基本機能を備えていて、とても便利です。

音声認識アプリも様々出ています。こちらは、少人数での会話では、すぐに文字で見ることができますが、大勢での会話では誤認識が増えてしまうため、使い分けが必要となります。

5)人工内耳について


人工内耳は、障がいがある内耳にかわって、音を電気信号に変え、脳に伝える医療機器です。耳の奥の内耳に電極(インプラント)をうめこみ、聴神経を刺激することで音を聞き取る仕組みになっています。

ただし、この手術は、すべての聴覚に障がいを持つ方に適用されるわけではなく、補聴器による効果が十分でない方に限られています。

子どもの場合、出生時に行われる聴力検査の結果、人工内耳が適していると判断されれば、1歳から手術を受けることができます。

さらに、子ども、大人のケース両方において、手術後は人工内耳の調整のため、リハビリが必要ともいわれています。

国内での人工内耳手術はこの約10年の間に2倍以上に増加しており、とくに7歳未満の小児と60歳以上の高齢者の増加が顕著だそうです。

3.利用できる障がい福祉制度・サービス、相談先など

1)障害者総合支援法による支援


①自立支援給付
自立支援給付は介護給付、訓練等給付に大きく分かれています。これらのサービスを利用するためには、各自治体の障害福祉担当課などで申請を行い、障害支援区分の認定を受けることが必要になります。調査と主治医の意見書などから決定が下りたら、計画を作成する相談支援専門員と契約をし、面談を通じて利用するサービスの内容や頻度などを話し合っていきます。サービス等利用計画案は各自治体に提出され、利用の決定が下りたら、サービス提供事業者と実際に契約を結ぶという流れになっています。

障がいを持つ子どものためのサービスは内容が異なります(後で掲載する全国社会福祉協議会が発行する「障害福祉サービスの利用について」をご覧ください)。また介護保険のサービスを利用する場合は、自治体の高齢福祉の担当課、介護支援専門員(ケアマネージャー)が相談先となります。

利用にあたっての費用は所得に応じて決まりますが、上限額が設けられています。

*介護給付
ホームヘルプサービス、訪問介護、同行援護、短期入所(ショートステイ)、施設入所支援など

*訓練等給付
自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援、共同生活援助(グループホーム)など

②地域生活支援事業
こちらは、地域の実情に応じて事業内容が異なります。一般的な内容としては、相談支援、成年後見制度利用支援、日常生活用具の給付・貸与、移動支援。その他、地域活動支援センター、福祉ホームの利用などがありますが、詳細は自治体(市町村・都道府県)の障害福祉担当課などでご確認ください。

③自立支援医療
自立支援医療は、心身の障がいの軽減、治療のための医療費の公費負担制度です。医療保険を適用し、自己負担額の一部、または全額が自立支援医療によってカバーされます。自己負担額は所得によって異なり、こちらも患者負担が重くならないよう、上限額が定められています。以下に当てはまる場合、対象となります。

・精神保健福祉法で定められた疾患を持ち、精神科へ通院が必要な人(精神科デイケアを含む)
・身体障害者手帳の交付を受けた人、または18歳未満の児童で、障がいの除去、軽減のための手術等の治療を受ける人。※対象になる障がいの範囲など詳細は自治体の障害福祉担当課等でお尋ねください。

※全国社会福祉協議会「障害福祉サービスの利用について」 https://shakyo.or.jp/download/shougai_pamph/date.pdf

2)身体障害者福祉法による支援


①身体障害者手帳
*手帳の取得
身体障害者福祉法に基づいて、都道府県、指定都市、中核市が交付するもので、手帳を持つ方への福祉サービスを受けることができます。障害者総合支援法のサービスを受けることもできます。

申請は市町村の障害福祉担当課が窓口となります。指定医師の診断書・意見書などをもって申請後、各都道府県での審査を経て等級の認定などがなされます。

*手帳の取得後、受けられるサービス
手帳の等級や自治体によっても利用できるサービスが異なります。また、所得制限がある場合もあります。お住まいの自治体のホームページや手引きなどで確認するか、詳細は障害福祉担当課などでご確認ください。

(税制の優遇)
・所得税・住民税・相続税の障害者控除
・自動車税・自動車取得税の減免

(公共交通機関・公共料金の割引)
・JR・JAL・ANA、バス会社、タクシーなどの割引

(手当)
・特別障害者手当(障がいが重度で常時介護が必要な20歳以上の方が対象、所得制限あり)
・障害児福祉手当(20歳未満で常時介護が必要な子どもが対象。本人・扶養義務者の所得制限あり)
※その他自治体による手当の制度を設けているところがあります

(年金)
・障害基礎年金(20歳以上65歳未満の障害者手帳1級、2級の方が対象になります)

(医療)
・心身障害者医療費助成制度(障害者手帳1級、2級の方が対象。医療保険の自己負担分から、一部負担金を差し引いた額が助成されます)

(補装具・生活用具)
・補聴器や人工内耳購入費が助成されます。所得に応じて自己負担額が異なります。
・生活用具の購入費が助成され、1割の自己負担になります。所得制限があります。

(移動・コミュニケーション支援)
・手話通訳・要約筆記者の派遣
・補助犬の給付

3)その他のサービス


*電話リレーサービス
総務省による公共インフラサービスとして、2021年にスタートしました。聴覚や発話に困難のある人と聞こえる人をオペレーターが手話で通訳を、電話でつなぐサービスです。24時間、365日利用が可能で、急病や警察への緊急通報などでも利用が可能です。

専用のアプリをインストールし、相手先の番号を入力して発信ボタンを押すと、電話リレーサービスにつながり、手話か文字での通訳を依頼できます。
(総務省)

*社会福祉法人聴力障害者情報文化センター
(相談・グループケア)
生活、気持ち、聞こえについてのこと等、来所、FAX、メール、電話などで相談ができます。専門機関の紹介や必要に応じて同行支援も提供しています。

また、聞こえと心の問題をあわせ持つ方々のための「心のグループワーク」、「家族教室」への参加も可能です。

(文化講座・映画情報)
その他、聞こえない仲間と共に楽しむ、絵画、英語、ヨガなどの文化講座も開催しています。

日本語字幕付き映画の上映館についての最新情報も見ることができます

次回はデフリンピックについて、取り上げてみたいと思います。

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