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第0話 始まりの章

私はケン。幼い頃から軍用機が大好きで、それが転じて戦史に興味を持ち、学生の時に『失敗の本質』(中公文庫)なる本と出会い人生が変わる。戦史の科学的分析を知り、さらには知識創造理論(経営学者野中郁次郎先生が提唱した組織が継続・発展的に知識を作り出す方法論)に心揺さぶられたのだ。
 仕事は知識創造理論や軍事を基盤とするノウハウを活用したコンサルティングをしている。しかし、これらの理論は少々分かりにくく、何かと敬遠されやすい。どうしたものか。
 あるとき、埼玉に知識創造理論と軍事理論を分かりやすく語り、親しみやすく絵解きをするお方が住んでいると聞いた。お会いしたい!きっと悩みも解消するに違いない!ワラをもすがる思いで門戸を叩いた。

そのお方、三原光明(みはらこうめい)と言う。いやはや、なんというお名前。あの名高いパリピ・・・じゃなかった、諸葛孔明と同じ呼び名ではないか。早速訪ねていくと光明氏はこころよく私の訪問を受け入れてくださったのだ・・・。

・・・これは迷えるコンサルタントのケンと知識創造理論を愛し探求し続けているKOMEIとの対話の記録である。

ケン:はじめまして光明先生!ケンと言います。よろしくお願いします。
KOMEI:はじめましてケンさん。さっそくだけど、その先生ってのはやめませんか。私は知識創造理論の研究者かもしれませんが先生じゃないです。KOMEI(こうめい)でいいです。
ケン:う~ん、分かりました。では、KOMEIさんと呼ばせてもらいます。早速ですが、プロフィールを教えてもらえますか?
KOMEI:私は埼玉カーストAランクに位置する戸田市に住んでいます。徳島県出身の65歳。
ケン:あのー、その「埼玉カースト」って、たしか映画『翔んで埼玉』に出てくる…。
KOMEI:ハハハ、そうそう。まあ、たまたまいい物件があったからエイヤー!で不動産買って住んでるだけなんですが。ほんと住みやすくいい街ですよ。
ケン:防衛大学校の出身ですよね。
KOMEI: そうです。野中郁次郎先生がちょうど防大にいた時にタイミングよく野中ゼミに入ることができ、それが今にも続く深いご縁になってます。
ケン:実際、退役後は横浜市危機管理室緊急対策課長歴任後、5年間一橋大学野中研究室で一緒に研究されていましたよね。
KOMEI:実は現在も研究を続けていて、来年野中先生と共著を出版するべく奮闘中です。


野中郁次郎先生

ケン:それはすごいですね。差しさわりない範囲でどんな本になるのか教えてください。
KOMEI:ハイ。では、今後少しずつこの場でお話しさせていただきます。
ケン:ぜひぜひ、宜しくお願いします。
KOMEI:さて、防大を卒業してからは36年間陸上自衛隊にいて、第一線で様々な部隊運用の経験をさせてもらいました。小隊 (30~40人程度)長、中隊 (100〜200人程度)長、連隊 (1000人前後) 長、旅団 (3~4000人) 幕僚長と言う感じですね。
ケン:うわぁぁぁ。めちゃくちゃ幅が広いですね。
KOMEI:おかげで、いろいろなレベルでの作戦立案・指揮というものが体験できました。そのため、戦史を読んでも一兵卒から将軍までの考えや思いを具体的に想像・理解しイメージして描くことができるようになったんです。

市街地戦闘

ケン:まさに軍師ですね。
KOMEI:それに、本当にいろいろな教育の機会を与えてもらいました。
陸上自衛隊の指揮幕僚課程(CGS)※1を約2年受け、さらに高級幹部課程の統合幕僚学校※2の時には、卒業後イギリス・スウェーデン・ノルウェーの統合の状況を現地で研究させていただきました。その後アメリカアジア太平洋安全保障研究センター(APCSS)カレッジ※3にも留学できました。9.11直後の世界で、安全保障の本質や異文化を学ぶ尊い経験でした。
※1上級指揮官・幕僚の育成を行うための教育課程
※2高級幕僚業務・統合運用・安全保障学などを研究する機関
※3ホノルルにあるアメリカ国防総省の研究・研修機関

ケン:素晴らしいご経歴ですね。特にKOMEIさんが期待されていたからと言うこともあると思いますが、自衛隊は人的投資に時間と費用を惜しまない組織なんだなぁと思います。
KOMEI:期待されていたかどうかはわかりませんが、確かに教育熱心な組織であると思います。その他細かいものを上げていくと、パラシュート降下を学ぶ空挺基本降下課程といった体力を使う教育から英語課程といった徹底して語学を鍛える課程までさまざまな場所で勉強させてもらいました。
一方で、防衛大学校の訓練教官統合幕僚学校の教官など教える側に立つ機会もありました。方面総監部の教育課長、陸幕教育訓練部訓練班先任を経験し、訓練の企画・運用・構想に関わりました。そのほか、少年工科学校※4および高等工科学校※5の副校長や新しい工科学校を作るための企画室長も兼任して新しい高校を立ち上げるという貴重な経験をさせてもらいました。
※4 正式名称陸上自衛隊少年工科学校。陸上自衛隊生徒の教育を行い卒業後は高卒資格と3等陸曹の資格が与えられた。
※5 2010年3月に陸上自衛隊高等工科学校に改編。

ケン:あっ!あの『ゴーマニズム宣言Special 国防論』(小林よしのり:小学館)のP186~189に載ってたあれですね!

高等工科学校生徒

KOMEI:そうそう。ちょうど工科学校最後の卒業生を送り出したころのインタビューがのってます。
ケン:あの「生徒物語」と言う架空の工科学校生徒を主人公にしたマンガをお書きになったころでもありますね。絵がお上手でビックリしました。
KOMEI:あれれ、よくご存知ですね。
ケン:KOMEIさんの名前で検索したら、ネットで第3話までダウンロードできました。(リンク:生徒物語  第1話  第2話  第3話 )
KOMEI:実は自衛隊在籍時に描いたマンガはあれが初めてではなくて、
『野外令』と言う自衛隊の教範・・・部隊運用の教科書みたいなものなんですが、これをマンガにしたのが始まりです。
分かりやすいとかなり評判でした。
ケン:うぉっ!それ読んでみたいです!
KOMEI: 残念ながら、これは部外の人は読めないものなんですよ。

講義イメージ

ケン:え~っ!(ガックシ↓) しかし、本当にマンガと言うか絵がお上手ですよね。
KOMEI:私が漫画を描くのは、漫画の威力を実感しているからです。米国留学したときは、特に、漫画の絶大な破壊力を意図的に使わせていただきました。これについても機会があったらお話ししましょう。小さい頃からマンガ好きだったこともあり、実は防大の卒業論文にもマンガは書いているんですけどね。ハハハ、ビックリする人もいるかもしれないけど問題なく卒業できましたよ。自衛隊と言う所は意外と柔軟性が高い組織ですからね。それに、卒論の指導教官が野中郁次郎先生だったことが大きかった。それが、今度、出版する本にもつながっています。漫画を描くという行為が私の中の人生の意義にまで繋がっています。この辺りは、別の機会にお話ししましょう。
ケン:自衛隊は画一的で硬直化した旧軍の二の轍は踏まない、だからこその柔軟性と言うことなんでしょうか?
KOMEI:そこは一言では言いきれないことが多いから、これからいろいろ話しながら解き明かしていくってことでどうでしょう?
ケン:ハイッ!と~っても楽しみです。
KOMEI:リテラシーと言う意味では、まだまだ日本では一般に軍事の知識は浸透していないのが現状だと思います。今後はウクライナの状況安全保障・自衛隊に関する時事解説などを通して、多くの方に分かりやすく解説を交えながらご説明していきたいと思います。。
ケン:では早速ですが、次回は日本の報道ではなかなか伝わりにくいウクライナの状況を中心にお話を聞きたいです!
KOMEI:うん、よしよし。それじゃあそろそろ夜も更けてきたから残りは次回にいたしましょうか。
ケン:はい、有り難うございました。おやすみなさい。
KOMEI:おやすみ~。

KOMEI

【ケンからひと言】
本当に謙虚な方で、その姿勢は真摯であり紳士である。今回は触れなかったが、実はかなりのマンガ・アニメファンでもある(!)。わたしが鑑賞した主だった作品のほとんどをご存じだった。(アトムから水星の魔女まで)今後それらの話しも出てくるであろう。ご期待を。
それと多くのみなさんにKOMEIさんが語ったノウハウを現場で活用していただきたいとの思いから、蛇足ながらコンサルタント視点の解説を追記させていただくことがあるかもしれない。参考にして頂ければ幸甚である。それではまた次回。

ケン


※本ページ掲載のイラストは全て三原光明氏の著作となります。自衛隊任官当時に描かれた著作物以外の著作権は三原光明氏に帰属しますのでご注意ください。

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