あのカップルは今、夫婦となり笑い話にしていてほしい
決して恩恵にはあずかっていないが、バブル期真っ只中の1989年。
高校2年のとき、決して一軍ではなく、ましてや不良でもない、同じクラスのむさくるしいニキビ面の男たちで横浜博覧会へ赴いたことがある。
数あるパビリオンのうち何か所かは巡ったのだろうけど、まったく記憶がないくらいの人生での出来事。
そんななかで強烈に覚えているのは、観覧車での光景だ。
世界最大と謳われた観覧車だけあり、ゴンドラも大きく8人乗り。
もちろん人気で大行列ができていたため、必ず8人ずつで乗せられていた。
6人組のわれわれと一緒に乗るのはおのずと2人組となり、不幸にもペアになったのは20代とおぼしき男女。
地上100mから見る横浜の夜景はたしかに綺麗だったし、彼らは2人の世界に耽りたかったと思う。
しかし彼女なしの男6人、ただ夜景を見るのはあまりにも退屈で、彼らに気づかい静かに座っているはずもなかった。
おもむろに誰かが「これこうしたら外れて落ちたりしないかな?」とか言いながらゴンドラを激しく揺らし始めた。
さながら絶叫マシンにしてやる、くらいの勢いで。
楽しいはずの約15分にわたる空中散歩の間、2人は寄り添ったまま終始無言を貫いていた。
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その後、彼らがどんな人生を送っているのかは知る由もないが、3%くらいの確率で、笑い話として記憶に残ってくれていればいいなと思う。
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