見出し画像

学生時代の憧れは、

中学生になってから数ヶ月、いつだったか正確には覚えていないけれど、一年生の最後の頃だったような気がする。
私は違うクラスのある男の子のことが大好きだった。
そのクラスには、部活仲間もいたので立ち寄る理由もありよく顔を出していた。
初めは部活仲間が好きで好きで仕様がなかったので、彼には目もくれず。
その部活仲間から軽く話を聞く程度だった彼。かっこいいって噂のひと。
直接見てもピンと来なかったので、特になんとも思っていなかった。

ある時唐突にLINEの友達追加通知が届き、名前を確認すると噂の彼だった。
他愛のない話が幾分か続いた後、いつの間にか彼は私の中で気になる存在になっていた。
まあ中学生の恋愛なので、たいして好きになるのに理由はいらなかったんだろうと思う。
直接会って話すわけでもなし、LINE上で意味の無い会話を続けているだけなのに「好きな人」になっていた。


2.3年生では同じクラスだったのに、1度も直接話す機会がなかった。
実は2年生になったばかりくらいの頃に、LINEで彼に好意を伝えた。いわゆる告白というやつ。
なぜだかずっと返事をもらえないまま時間が過ぎ去り、私が限界を迎え返事を催促し、やんわりと振られた。
私の人生史上最初で最後の告白で、玉砕。
当たり前だがこの状況で直接話すなんて無理だったので、結果として3年間、彼とは文字でしか会話をしたことがないままで終わった。


時を経て、成人式の日。
私が大学2年生の頃。
高校、大学と離れて疎遠になった彼から一通の連絡が。
同窓会にこないか、との誘い。
話したい人もいないしと思い、同窓会はお断りした。
せめて写真だけでも撮らない?といわれたので、それは快諾した。

それまでも誕生日やら、なにやらでちょこちょこ気まぐれにやり取りはしていたのだが。
「ああ、久しぶりに会うんだな。どういう気持ちになるんだろう。」
そう思いながら成人式に向かった。

会場には、朧気ながらに記憶に残っている顔の同級生がわらわらといた。
その大群をかきわけて、彼を探した。
見つけた、けれど、彼の周りには沢山の同級生たちが。
それを見た瞬間気が引けた、というかかなりへっぴり腰になってしまった。
「ごめん。見つけたけど、話しかけられそうにないや。また今度。」
そうメッセージを送って、足早に帰ってしまった。

そこからまたしばらく時は流れた。

去年の夏。
社会人になって初めてのお盆に帰省した。
大学の頃から付き合っていた人と別れて、色んな人に会ってみたくなっていた時期だった。
ふと、彼に連絡をしてみた。
「久しぶり。今実家に帰省してるんだけど、そっちも帰ってきてる?」

すぐに返事が来たのだけれど、帰省中に会えそうな日程はなく、別の機会となった。

9月に東京いくけど、会う?

彼が申し出てくれたから、9月に飲みに行くことになったのである。

会う前に少し電話もしたのだけれど、甘やかな声で私を探っているのがわかる。
どんな話をしたら喜ぶのか、中学校の頃どう思っていたのか、とか。

実際に会う日になって彼を目の前にした時、やっぱりかっこいいと思った。
やばい、と思った。
興味が湧き始める。
中学生の頃憧れた彼は、どういう風に成長したんだろう。

その日は飲んで一緒に過ごしたけれど、なんにも起こらなかった。その日は。


10月末に私の出張があり、彼のもとを訪れた。
彼の家に泊まりに行ってしまった。
あまりにも男の顔をする彼の姿が見たすぎて。
そして、正月にも地元で会って彼と夜を過ごしてしまった。

ああ素敵。やっと見たかったものが見れた。
でも、なんだかキラキラしていたものが消えてしまったような。
学生時代の頃に感じていた憧れは、遠くどこかに行ってしまった。

あんなにかっこよかった彼も、憧れていた恋愛も、近くで見るとなんだか違っていた。

楽しかった。で終わってもいい気がした。
ずっと一緒にいたい人ではなくて、都合のいいときに会える人になってしまったんだと思う。

彼の言葉一つ一つに、私に対する愛の欠如を感じる。
私が憧れた彼は、もう存在しないんだな。
ただの妄想だったんだ。

学生時代に憧れた彼は。
学生時代に憧れた恋は。
あんなに綺麗だったのに、無くなってしまったのね。
私が壊したのよ、自分でね。


これから先、何があるかは分からないけれど。
それはまだ、私も知らない物語。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?