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メロンクリームソーダ・ブラッド

ブルーブラッドという言葉がある。
意味は「貴族、上流階級」。これは、被支配階級の人々と比べて彼らが外に出て日焼けをする機会が少なかったために、日焼けしていない透き通った肌から青い血管が透けて見えていたことに由来する……らしい。
数年前に発売され爆発的にヒットしたアドベンチャーゲーム『Detroit: Become Human』に登場したアンドロイドの血液、燃料の名前としてもこのブルーブラッドという語が採用された。ゲーマーからすれば、こちらの意味の方がよく通じるかもしれない。貴い生まれを意味する語を、作中において虐げられ労働力として搾取される立場にあるアンドロイドにまつわる語として用いたのは、皮肉のかそれともゲームを進めていった先でのアンドロイドたちの行く末を示したものなのか、あるいは偶然か。

なんにせよ、このブルーブラッドという語は要するに、用いる主体から見て「我々(あるいは彼ら)とは異なるもの」であるという区別をするために生まれた語だろう。
赤い血潮の流れる我々と違って、連中には青い血が流れている、という敬遠。あるいはその逆に、下賤な者どもと違って、我々には青い血が流れているのだ、という自尊。そういった用いられ方をしてきたはずだ。


これに倣って、私も自分の血の色を何かに例えてみようじゃないか。
例えばそう、メロンクリームソーダ・ブラッドというのはどうだろう。以前の記事にも書いたように、メロンクリームソーダは私の好きな飲み物の一つだ。
わざとらしい甘さにわざとらしい緑色、適度な炭酸に安い価格。栄養補給を怠りがちな私にとって、メロンクリームソーダは最も容易でかつ最も心地よい糖分補給源だ。
全身に疲れを感じているときなどに飲むと、あたかも飲んだそばから血液に変わっていくような、全身に緑色の糖分が染みわたっていくような錯覚を覚えることもある。
故にメロンクリームソーダ・ブラッドというわけだ。ちょうど貴族と同じように日焼けをする機会も少ないし(貴族が外に出ないのは生まれや執務によって、私が外に出ないのは貧困と性格によってのものであるため、似ているようで全然似ていないのだが)、血管も透けて見える。手首などを見てみると、なるほど確かに青い筋が浮かんで見える。このままメロンクリームソーダを飲み続けていたら、これがわざとらしい緑色に変わる日も来るかもしれない。
そんなはずはないが、想像してみるとやや愉快である。

記事を書いていて表現に困ったりしたとき、いつもの悪癖が出る。顔の出来物や頭皮をバリバリと掻き毟るアレだ。
今日もそれをやってしまった。過度に引っ掻いた出来物から血が滲むのを指で拭う。赤い。やっぱり、そんなはずはないか。

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